2014年10月31日金曜日

つかれた女

交差点で見かけた女は
会釈だけして足早に
横断歩道を渡っていった

自分の鞄の他に
靴やら服やらが入っているであろう
紙袋を抱えていた

スカートをはいていた
濃い口紅をしていた
時刻は午前零時

一度酒の席で会ったことのある女だ

誰かと関わることに
つかれた女が
会釈だけして足早に
横断歩道を渡っていった

その後ろ姿が
話しかけている気がしたのは
私もまた
つかれていた

2014年9月29日月曜日

ブラックホールが
宇宙を飲み込んでいるそうです

光があって世界を知れるのは
闇があるからです

悪意があるわけではなく
そういう性質なのです

深い闇があるからこそ
輝かしいのです

激しい喜びは
世界に穴を開けるのです

2014年9月12日金曜日

駅前広場


強い日差し
に照らされて倒れて動かない男
その横に喫煙所
男の存在がないように
喫煙所に出入りする人々

一人の青年が男を見る
しばらく立ち止まる
男を見る

そして喫煙所にいく
青年は煙草を吸う
吸い終わる
男の横を通って
男を見ることなく
立ち去る

青年は交番に立ち寄り
「広場に男の人が倒れています」
「ああ、ああしていつも休んでいるんだよ」
と警官は言った

青年は改札を抜けてどこかへ向かった
車窓から風船が飛んでゆくのが見えた
喫煙所からは煙が絶えることなく昇っている







2014年9月1日月曜日

夏の終わり

50センチくらいだったか
触れられる距離で君が何か話している
見つめるだけで言葉や時間が通り過ぎてゆくね
君が思いを馳せるところがどんなところなのか
先回りをしてつかまえたいよ
セミとコオロギが鳴きはじめる夏の終わりに
消えてゆく君のかけら言葉抱きしめた


2014年8月27日水曜日

あなたの声を思い返すだけで
どれほど歩けたかわからない

なんてことはないのです
暗闇の道でも雨の道でも

私はあなたの声を確かに聞いた
どれほど歩いて行けるかわからない

私が絶えてしまっても
歩みが止まることはないでしょう



2014年8月22日金曜日

貨物列車

僕はどこに行きたいんだろうな
僕はどこに行くんだろうな
心をかくして行きつくところは
息も出来ない心ないとこ
大人になって嘘ばかりうまくなって
素直でいられるのはひとりでいるとき
長く生きていたけれど
悲しみが荷物になって歩いてゆくのもおっくうだ
そもそもどこに行くかもわからない
貨物列車が深夜の空を走ってゆく
その貨物列車に乗せてください
僕をその貨物列車に乗せてください


2014年8月16日土曜日

今、夏、夜
道端の木々から
街灯の中から
とどく鳴き声は
どれもいつかきいた
それとは違う

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

力尽きた蝉は
羽をばたつかせ
地を這いながらも鳴く
足を折り曲げて
そして
空を抱いていく

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

2014年8月14日木曜日

足元が揺れている
存在を揺るがすように揺れている
鳴きつづける蝉のいる夏は
無限の生殖活動への渇望
ひげを生やした権力者たちが
地球儀の上でマージャンをしている
キャンパスに描かれた風景を探して
どくろの生い茂る森をゆく
自発的に動き出した機械に動かされて
すべてが潰されて消えてゆく
砂漠のど真ん中で店を広げて
七色の宝石を売る
月の光がひしめき合うように
それらを照らしている

寝苦しい夜が続いて
夜明けの来るのを見届けて眠りにつく
明日が来ることを
うまく信じられないくらいに
世界は急激に変化して
ひとつの部屋の中に
情報が溢れすぎて息ができない

たどり着きたかった場所が
ほんとうに望んでいる場所でないことに気が付いて
子供のころ欲しかった玩具を手にした時に
欲しかったという形容詞が抜けて
どうでもいいように思え
うまく大切にできなかった

目に触れる世界が
おおよそ自分とはかけ離れたところで成り立って行き
そのメビウスの輪のから
放り出された小惑星が
輝きもせず漂っては砕けてゆく

向日葵はいつだって
太陽を向いている
近すぎてはみていることができない
遠すぎてはわかることができない
永遠はすでに抱えている

みつけようとするな!
打ち抜け!
打ち抜いた
「零」

酔え


2014年7月23日水曜日

夢の住人

夢の住人達は
少し浮いたように歩いていて
くしゃみもするし
歯磨きもするけれど
名前が薄れ始めて
夢の部品になっていくのです

部分がほんとうに思え始めると
触れていても届かない
絵画の中の河のように
飛沫まで生き生きとしているのに
合図があるまで流れてゆくのです

僕も少しだけ仲間入りをして
ぼくは僕としてふるまうのだけど
虹のかかるその間だけは
モノリスに閉じ込められたように
どこへも向かうことは出来なかったのです

今も忘れてしまっているだけなのかもしれないと
合図を思い出そうとしているのです



2014年7月22日火曜日

雨が降ると天気予報で聞いた
傘を持って出かけた
でも、雨はぼくが屋根の下にいる間に降って
だから、ぼくは濡れた路上の上を傘を持って歩いた

ビルの間から木漏れ日みたいに陽が差して
ぼくの世界はまっ白になったんだ

それで、ぼくは持っていた傘を開いて
歩いたんだ
そんな必要はなかったけれど
それでも、ぼくは雨も降らないのに傘をさして
歩いたんだ

2014年7月17日木曜日

磁場

どこかへ向かう途中で
乗り過ごして
来る予定ではないところへ
来てしまった
自分を取り巻く景色は
人であろうと音であろうと
つかまった手すりであろうと
どこか全部が
つくりもののように感じて
美しい夕焼けは
誰かが描いたようで
会話の節々が
やはり細かく整えられているように
思えるのだ
私はその水路に流れていくのだけれど
そういった自分に
気の付かないままやりすごして
おくほうが
良いのかもしれない
行く先は見えても
ましてわかっても
いないのだけど
広いところに出るのかもしれないと
思っている
それは私のなかにある
命というものが
こすれることで生まれた
磁場が
なにかに引き付けられた
結果に過ぎないと
わかっているから

2014年7月16日水曜日

言葉が増えすぎた世界で

言葉が
増えすぎた世界で
僕らは誰かを
わかろうとして
立つ場所を失う

言葉が
増えすぎた世界で
僕らは何かを
想おうとして
手を止めてしまう

物語は続いて
言葉は今も増えている

2014年6月22日日曜日

夕立

着付けたばかりの
水玉のブラウスに
夕焼けが落ちて
ふくらむ胸がすける

三ブロック先の角を
右に曲がります

情熱という名の
毎日が
コインロッカーから
取り出されるのを待っている

水飲み場で
思い出した懐かしい風
つないだ手のひらから
吹き出した

木々がさわぎ出して
もうすぐ
夕立がくる

2014年6月21日土曜日

後だしじゃんけん

サッカーでも政治でも震災でも
起こった後になにかを言うのは
後だしじゃんけん
誰も負けたくないから
起こったことに何か言い出す
先回りして食い止める人たちは
イマジンを現そうとする人たちは
何も言わずに手を動かしている
何も言わずになにか手段がないか考えている
起こったことに心を痛めながらも
けして奪われはしない
後だしじゃんけんで
わめく人たちは
勝ったつもりで偉そうに
あきらめている

2014年6月17日火曜日

老いた父

老いた父が
癌が再発したら
延命はやめてくれと
いった
生きていることが
もう
そんなに楽しくないのかも
しれない
老いて独りで
満足に生活が出来なくなっている父
私もいつの日か
老いるだろう
生きていることが
そんなに楽しくない日も
来るだろう
私はせめてそれを
正直につづり
父を思い出そう
元気を出せと
うまく言えない

アフォガード

茶店で宮崎君が何か食べるものありますかと聞いた
シフォンケーキとアフォガードがありますと店員が答えた
アフォガードーってなんですかと宮崎君が聞いた
アイスとケーキに珈琲をかけて食べるデザート店員は言った
僕は最初アホガードと聞えてアホをガードする食べ物か
などど考えていた。
宮崎君はシフォンケーキとコーヒーを頼み
僕はオレンジジュースにからアフォガードに変えてみた
アフォガードを検索するとイタリア語で溺れるという意味だった
アイスが浸かって溺れることなのだ
コーヒーに溺れてぐずぐずになったシフォンケーキ
コーヒーに溺れてどろどろになったアイス
倦怠に溺れてぐだぐだになっていくライフ
自分を思った
口当たりが甘苦く
溺れる
自分を思った

2014年6月12日木曜日

レイヤー

銀の灰皿に吸い殻の林ができた
締め切りをとおに過ぎた
完成する予定だった一反の着物
作り上げてゆくこの精神に
栄養ドリンクを何本も流し込んで
指先よ動け動けとわめくが
立ち上がるのはいたいけな一物
触っては慰め涙を流し
回転する針のゆくえ
開けた窓から冷たい風
積み重なる数字
また朝になれば自転の遠心力で
はじき出された肉体に
生き生きとした不安が降り注ぐ
夜が明るすぎる
白々とした蛍光灯が奪っていく
呪うべきものはなにもない
むず痒くただれたこの部屋から
別のレイヤーに移行するため
砕く砕く砕く
濾す濾す濾す
砕く砕く砕く
濾す濾す濾す・・・

2014年6月10日火曜日

無敵艦隊

僕の命が尽きるまであとどれくらい
好きな人と過ごしたい
僕にしかできないことをしていきたい

この人を好きかもしれないと思うとき
これは僕にしかできないことと思うとき
この人を愛しているのかもしれないと思うとき
僕にしかできないことをしているとき

体中の無敵艦隊が出動する
どこへでもどこまででもいける
尽きぬ突き抜ける
無敵艦隊が出動する

2014年6月5日木曜日

朝焼けがどこまで届く

朝焼けがどこまで届く
忘れたいくらい
ぼんやりとした
よくわかんなかった夜
投げ飛ばしたよ

今夜、君といらんなかった
愛なんてことば吐き捨てた
うまく、うまく言えなった

終電乗り過ごして
いくあてなかった
ぴらぴか行き

キスしたらよかったですか
わかんなかったですけど
それでよかったです
いみなんてしらなくて
よかったです

ほんともわかんないから
君を愛せたから
なんにもないことで
君を愛せたから

君のやさしさが
眩しい

2014年5月31日土曜日

変態

見つめられているまなざしに
答えられずに時は過ぎゆき
朝陽の中に身をさらして
紫の空を見上げている
毛虫

意味を求めては砂漠を
ただ一人で行く
進んで行かなくては行けない
置いて行かなくてはならない
孤独に

胸を割いて白い幼体が露わになる
風は痛みをともない突き刺さり
流れ出す血のしぶきが肌を伝う
抱えられるものは何もない
命の他は

そうなってしまったのだ
望んだのは忘れてしまったほどの

現れてしまったまなざしが
見つめている
朝に

2014年5月29日木曜日

労働について

昔、朝まで飲んだ女
から連絡がきた
仕事の話だった
が、近状報告
になる、
結婚して子供生まれたのよ、かわいくてメロメロよ


あの朝にホテル代があれば
2人の顔を見ることが出来たのかもしれない


労働について

2014年5月18日日曜日

皺だらけのロックスター

皺だらけのロックスターは
少年を目指して今日も唄う
歩いてきた道の景色をもう一度みたくて
憧れの場所にたどり着きたくて

言いたくなかったこと
笑ってぶちまけてみたり
みたくはなかったこと
繋いでつくろって万華鏡

それでも愛だけは同じだったよ
唄うたびに消したいくらいだったけど
それでも愛だけは同じだったよ
かき鳴るギター、弦がはじけて、かすれ声

それでも愛だけは同じだったよ
それでも愛だけは同じだったよ

2014年5月17日土曜日

無題


・・・私はもうかなしいくらい
眠ることが出来ない

眠りにつく時の
夢とうつつの合間の桃源郷で
ひきょうものにはなりたくなくて
愛に至りたくて
その時わたしは
沈黙した・・・


2014年5月15日木曜日

2014年5月11日日曜日

ルール

あふれでる顔、顔、顔
どこに向かおうというのか
わかりもしないままに
大河のように進んで行く

あふれでる血、血、血
私の指先から落ちてゆく
赤黒いひとしずく
沼のように溜まってゆく

だれも触れられぬルールがある
が、そこに愛を見るとき
が、そこに生をみるとき
意味を変えて鎖を砕く
ことが変わる言葉がある



2014年5月10日土曜日

帽子 鏡 赤ちゃん

春先、新しく服を買う
服ばかり立派で薄っぺらい顔が
貧相に思えた

思いついて普段かぶらない
帽子を選んでみることにする

なじまず何度もをみては
とっかえひっかえ

心にイメージがないのだ
どの帽子にどの服か
選んでみて初めてわかるのだ

赤ちゃんが口の中に何でもいれて
確かめようとするのに似ている

口の中の方がものごとの本質というのは
よく確かめられるのかもしれない

帽子のツバ噛みついていたら
店の人に止められた


*この作品はタイトルの、その時目の前にあった
 三つの言葉から5分以内で即興で作ったものです。
 (清書の際多少整えています)
 朗読ではなくてまだ書きつけるのが精一杯です。実験として。


2014年5月9日金曜日

歩いているとき

歩いているとき
どこのみちでも
どこかを歩いてる
きみと歩いてる

歩いているとき
道端に白い花
どこかで見てる
きみも見ている

歩いているとき
足のうらは
ぽくぽくと笑う
きみも笑う

歩いているとき
教えてくれたから
あぁ、詩神【ミューズ】
きみと歩いてる

2014年5月7日水曜日

いのちふたつ

いのちふたつ
わたしのおなかに
もうひとついのち

きみがたべたいものなに?
きみがいきたいとこどこ?

わたしはわたしだけじゃないよ
わたしはきみといっしょ

いのちふたつ
わたしのおなかに
もうひとついのち

いろんなひといますよ
いろんなことありますよ

それでもね、もうすぐな
きみといっしょにくらしてく

いのちふたつ
わたしのおなかに
もうひとついのち




にわとり

にわとり鳴いて
卵うまれた
いい日だって
悪い日だって
朝が来れば
にわとりが鳴いて
卵がうまれる
それでいいだろ
そのために神様は
太陽と月を作ったんだろ
明るすぎると
女のあんよも
ハムみたいにみえちまう
太陽沈んで
月が昇ってはじめて
世界は美しく見える
昼間だけの世界なんてまっぴらさ
もぞもぞやって
にわとりがないて
卵がうまれる

どうだい、気にってくれるかい

おすすめは何かと彼女の両親に聞かれたよ
金はなし、仕事なし、年もとりすぎた
おすすめは彼女が俺を気に入ってるってことだけ
どうだい、新しいとうちゃん、かあちゃん
俺を気に入ってくれるかい

なにが出来るんだって就職試験で聞かれたよ
パワポは出来ない、MBAの資格もない、前の会社はクビだった
出来るのは這ってでも来るよ。ハッピーに毎日出勤するよ。
どうだい、新しいBOSS、フレンドたち
俺を気に入ってくれるかい
 

朝陽に泳ぐ

溶け込むために朝日に向かって泳ぐんだ
見知らぬ場所に生きてくこと決めて
吐きそうな、泣きそうなのこらえて笑うんだよ
どこが僕の生きる場所
どこが僕の居場所
わからないままに放り出された空の下
人混みの中で息継ぎしながら泳ぐんだ
溢れるものの中で息継ぎしながら泳ぐんだ

2014年5月4日日曜日

都会の狼

都会でいきてきた狼たちは
いつしかキバを落とした
やわらかいものしか食えない
キレイなものしか食えない

森にいたころ狼たちは
泥まみれの肉だって
かぶりついたのに今じゃ
スカスカのニクばかり

キバのない狼たちは
落としたキバを忘れて
味も臭いもしないニク
飢えて飢えてむさぼる

恐れ恐れ満ちたくて
飢えて飢えてむさぼる

弱い光

金を大量に稼ぐビジネスマンに囲まれると
どうしてこうも自分の喜びが
薄っぺらいものに思うのか

数字や数値に変換される世界では
誰かと景色をつくることは
悲しいくらい弱い光

Say Hello Love

遠い未来薫るだけ
君が触れる
季節が巡る

雲が胸に漂うだけ
君に触れる
針がとまる

Say Hello Love
Say Hello Love

昨日も 明日も すっとんで
君を見つめる今があるだけ

Say Hello Love
Say Hello Love

2014年4月28日月曜日

幻聴

永遠に記すことの出来る紙の上に
蝶が舞い降りてきて私を描けとせがむ
紫色の羽の中に赤い斑点
鱗粉の落ちる速度で海が開いてゆく
しぶきが水平線を隠して
呼吸の出来ない深海へと誘う
闇の岩場でしゃがみ込んだあなたが
こちらを見つめている
私は息をすることが出来ない
あなたの纏うカーテンが
境界線を作り上げて
その揺らぎがいつしか私を陸へと押しもどす
打ち上げられた水晶の砂浜に
ヒトデたちが眠っている
音も立てず太陽を吸い込んでは
新しい景色を吹き出してゆく
いつだったか信号待ちの瞬間に
白い綿毛を捕まえた
それは死にゆくものたちが残した貝殻
私は耳をあてて
それらのつぶやきを聴いた


2014年4月22日火曜日

まぼろし

空の果てを探して見上げた蜃気楼に
虹のこぼした水滴が流れて
つぶやかれたはずの言葉の足跡
雲の揺らす記憶の草原
漕ぎ出された二層ボートのきしみ
十字架のまなざしを受け止める月
バベルの窓から見下ろす町並みは
鳥すらも恐れて踏み込まぬ聖域
待っているものは巡る朝日のぬくみ
ひまわり畑の真ん中で少女が
空を指さしている
旗がゆれて
流星がはじけた
まどろみのなかでぼんやりと
触れることの出来る
幻をみた

2014年4月21日月曜日

戦争しよっか

ねえ、最近どうしてる?
そいうえばさ、今月誕生日だったよね
こっちの仕事もひと段落したし
どうかな、今週末いつものところで
戦争しよっか

付き合ってそろそろ3年になるね
お互いの両親も気にし始めてるし
あまり無駄使いしないで貯金も出来てきたし
どうかな、そろそろ僕ら
戦争しよっか

2014年4月17日木曜日

二つの山

朱い山と
蒼い山の
はざまに
静寂が芽吹く

白い恐れを
黒い雨が
包みこんで
立ち上がる

虹色の山々を
鳥や風は
悠然とその身に映して
星々に消える

望まれた山だけが
畏怖の中に震えている

2014年4月15日火曜日

北の桜

桜が咲いていたのは知っていたけれど
君を思い出して泣きそうだったから
出歩かずにうつむいて歩いた
それでも窓を開けると花びらが吹き込んで
甘えるみたいに舞っているんだ

まだ追いつけますか、せめて桜を
また君の来るのを待てますか、せめて春を

君と見た景色を追って北へ北へ
桜を追って北へ北へ

通り過ぎた歩道に桜雪

いつか見た景色を追って北へ
春を追って北へ北へ

積もる花びらばかりが桜色



2014年4月11日金曜日

死神

先日死神に会って危うく死にそうになったが
菩薩の加護によってなんとか生き延びた
死神の詩を書いたのだが紛失した
出てこなくてもかなわないが余計な詩を書いた

情景(下)

何も残したくないといった友人がいた
カメラを向けると嫌がるのだ
写真には映らなかったが
私はその友人を忘れない

何も残さなかったものが
置いていったものに憧れて
街は拡声器で喋り続けている

誰にも会いたくないと思うとき
私は会えないものに憧れている

ゆうぐれ

くちびるがぬれて
きみのいきのにおいがする
ふさいで
わたしをそそいでしまえば
どんなゆうぐれが
おとずれたというのか

夜光虫

鉛筆が尽きるまでに
どれだけ詩が書ける

この紙が尽きるまでに
どれだけ詩が書ける

この命が尽きるまでに
どれだけ詩が書ける

巡り、与えられた
命、紙、鉛筆

ひたすらにつづる以外に
何をするというのだろう

生涯をかけてやることが
なんなのかを問い続けて
みつけた一筋の糸

たぐりよせてその果てを
見ようとする

今地球の裏側は夜
今私のいるところは朝

誰に向けているのでもない
ただつづる

その先に海辺の香り
その先にレンガの町並み
その先に走り回った校舎の記憶

飲み干したコーヒカップに
夜光虫が浮いている


言葉の音

今日は釈迦の生まれた日
悟りを開いて歩き回り
森の菩提樹の元で涅槃にはいった

彼は何を伝えた
彼は何を残した

2千年もあとになって
私が思いを馳せること
彼は知るはずもない
私も誰か知らないものに
思いを馳せられることがあるだろうか

私はあなたにいう
こんにちは
私はあなたにいう
元気ですか

今年のことを少し話しましょう
今年の春は雨が多くて
桜の散るのが早かったです

消費税という生きていることに対する
義務が増えました

そちらはどうですか
詩なんか書いていられますか

もう 文字などというものは
いらないのかもしれませんね

でも いいものですよ
紙の上を走る言葉の音というのはー

ひとつの詩

1日に100も詩がいるかい?
1日に10も詩がいるかい?
1日に1つ詩がいるかい?
1年に1つ詩がいるかい?
10年に1つ詩がいるかい?
一生に1つ詩がいるかい?
始まりと終わりの間に詩がいるかい?

切り抜かなくても包まれている
ひとつの詩に

2014年4月10日木曜日

どこへいった

夕焼けと引き換えに
町にはビルが建ち
星空と引き換えに
夜の盛り場が出来る

どこへいった あの夕焼けは
どこへいった あの星空は

愛と引き換えに
金を手にして
しあわせと引き換えに
幻が増えてゆく

どこへいった あの愛は
どこへいった あのしあわせは

どこへいった
僕と引き換えに僕は

どこへいった
どこへいった・・・


2014年4月7日月曜日

お品書き

ごぼうと菜の花のおひたし
赤貝、ミル貝、平貝、刺し
マテ貝焼きの酒盗乗せ
ホタテのバター醤油焼き
サザエのつぼ焼き
卵焼き
カキフライ
白貝酒蒸し
ホタテと貝類の炊き込みご飯

2014年4月4日金曜日

タブロイドの夢

タブロイドの夢に預けられた
硬質インクの雨
焚き火の中で晒しあう
小人の群れが寝静まる
ふかし不可思議
ちぼちぼちぼちぼ
七色の帳(とばり)みたらし団子
尾ひれ求めて大西洋
内科ディスタンス
むさしのアレクサンダー


ドーナツ屋の娘

いつも気にしてふりかえる
ドーナツあげてる君みつけて
今日は一日晴れ
君を見つけて
輪っかのむこう
今日は一日晴れ

桃子

どこいるん
ここいるん
酒、飲どるよ
どこで飲んでるん

どこいくの
どこいきたいいん
お酒あるとこ
桃子おるとこ

じゃーきるよ
またね

どこいきたいん
お酒あるとこ
桃子おるとこ



遠く逃れて

キレイな詩ばかりはうたえない
キレイなことばかりで成り立っていないから

陽気な詩ばかりはうたえない
陽気なことばかりで成り立っていないから

生きていることすら煩わしく思える夜
私は遠くへ行きたい
煩うことすら忘れるくらい
私は私から遠くへ逃れて

2014年3月28日金曜日

メロンパン

メロンパンにはメロンがはいっていない
実存から遠く離れて
ひとりあるき

気配を主張しながら
入口と出口を
モザイクかけながらまかりとおる

浮世離れのメロンパン
コペパン、食パンの
たどり着かぬ極地極楽

カスミを食うという
仙人たちのいわば主食
メロンパン

メロンパンにはメロンが入っていない
キャメロン・ディアスにはたまに入る

ひとひら

わずかな季節に咲いては舞っていく桜の花のよに
色や形の意味が空に溶け出しても

君の前にいることが何も必要としなくても
共にあることのその喜びが
体とか心とか声、越えちゃえばいいね

コンクリの街でも、360度水平線の海の上でも
共にあることの喜びが
体とか心とか声、越えちゃえばいいね

ひとつでもひとひらでも
ひとつでもひとひらでも

2014年3月18日火曜日

詩情を掘り起こす



自分ではない他者の中に眠る詩情を掘り起こす、ということは自分で詩自体を書いているわけではないのだけれども、その他者の書いた詩にとても親密さを感じる。自分自身の事を書く詩から、自分の見える他者の事の詩に移り、そして他者の書く他者自身や、他者の書く他者へと詩の興味関心が巡っているのです。

ここで言うところの他者とは事物、事象も含まれます。

2014年3月15日土曜日

かなしみ

書き綴った詩をまとめた詩集を
欲しいと言ってくれる人あり
僕は500円で売った。

500円が生き活きと
電車賃やカレーパンに消えて
いったのだが

どうして僕はこんなにも
かなしいのだろう

2014年3月10日月曜日

2014年2月18日火曜日

2014年2月17日月曜日

青い雪

100年だか1000年だかに一度の大雪が降った
駐車場の車はこたつを頭からかぶったように丸い

朝になり雪の降るのをおさまるのをみて
近所の人々は腰まで積もる雪をかきかじめた
溶けだした雪の水がシャベルからぼたぼた落ちる
昨夜サラサラと降っていた雪がこんなにも重くなる

ふとシャベルの上の雪の青いのに気がつく
南極の氷は大気を含んでいるため酸素が圧縮され青い
と聞いたことがある

この雪は大気を含んでいるのか
降る時に含んだのか
積もりながら含まれたのか
何千年も上空で抱えていたのが降ったのか
それはわからない

普段使う言葉たちはサラサラと流れてゆくけれど
どこかで空気を含んだならば
この青い雪のように輝くものになるのだろうか
そして積もりゆけば
ひとつの重さを持つようになるのだろうか

やがて溶けてふたたび空へ帰ってしまうとしても
その重さや青さを
私や誰かの中にとどめるのだろうか

2014年2月8日土曜日

はじめてまして

それはいつのことだったでしょう。
はじめてことばをはなしたのは

それはいつのことだったでしょう。
はじめてどこかにいきたいとおもったのは

それはいつのことだったでしょう
はじめてだれかのそばにいたいとおもったのは

そはれはじめてあめがふったときのことを
もうおぼえていはいないようにわかりませんが

ことばをはなすときや
どこかにいきたいとおもうときや
だれかのそばにいたいとおもうとき
そのすべてがはじめてのようなきもちで
いることはできないけれど
せめてわすれないようにしたい
きょうというは
いまというしゅんかんは
はじめてのことなのだということを

ぼくにとっても
あなたにとっても
このせかいにとっても
はじめまして

2014年2月5日水曜日

ボタン雪

ボタン雪の降る夕暮れに
僕らは少し昔を懐かしむ
ドーナツの輪っかの先に
赤い頬の君が吐く白い息
降るボタン雪に街は紛れ
君の呼吸に喧騒は消える

2014年1月25日土曜日

夜の河

柱時計の告げる
詩の始まりから
巻き上げられるネジ
幾千もの振り子が
夕暮れを追いかけた
麦わら帽子の未来を約束していた

インクの匂いを忘れずにいることで
かつて咲き乱れた花々
(例えばパンジー)(あるいは向日葵)

凍える駅のホームでも
星々の中に持つことが出来る

私はその夜に流れる
ひとつの河を見た

2014年1月21日火曜日

冬の句

冬空の 雲の形は とどまらず

ペッタンコ 繁盛願い ウス囲む

初詣 五円の穴に 青写真


2014年1月15日水曜日

答え合わせ

宿題の答えを教えてあう子供ら
ここ、何?
2番、あってる?
そこ、まだしてない。
これ、何かな?
同じ答えが提出される
どうしてそうなったか
点数には入らない
誰かが答えを教えてくれる答えは
点数のつく答え
どうしていきたいか
誰も教えてはくれない
答え合わせはない

2014年1月10日金曜日

雲が来る

コンクリートの街に
灰色の雲が来る
冷たいケースの人々は
それに気付かない

人がもっと空を持っていた頃
めぐる季節を
待ちわびながら恐れもした

電子のはじく雷を
僕らはいつしか信じはじめて
せまりくる雲のにおいを
忘れた

2014年1月9日木曜日

Go for a swim if there

Raining the day before yesterday
I did not want to leave something out
Rainbow but have come up today
Wind is cold

You turned around
Do not even anywhere in the world
You are staring at me
When is such a great day?

During the Thousand and One Nights in the language of love
Lake which was able in the downpour
Where is such a great side?
Have you by my side

Do not even anywhere in the world
Go for a swim if there


おととい雨が降って
外になんか出たくなかったわ
今日は虹が出ているけれど
風が冷たいわ

あなたが振り向いて
世界のどこでもなく
私をみつめてる
そんな素晴らしい日はいつ?

愛の言葉で千夜のあいだ
土砂降りにして出来た湖
そんな素晴らしい辺はどこ?
私のそばにあなたがいる

世界のどこでもなく
そこになら泳ぎにいくわ


2014年1月3日金曜日

日常

朝起きたら詩を書きます
夢の続きの
コーヒーを飲んで朝食を食べます
お腹が減ってのどが渇いて

夢の続きが消え失せて
刺激を求めて散歩もしくは読書か映画
煙草を吸って風が吹いているのをたしかめて
思い出や邪な幻想にひたったりして
昼下がり詩を書きます

役割というものを習いましたから
夕方仕事に出かけて皿を洗ったり
いろんな人をもてなしたりします

余裕があるときは友達や
まったく知らなかったけど気になる人に会います

ご飯を食べながら計画を練ったりします
それをお気に入りの手帳に書き付けて
たまに詩になったりします

移動中、読書をして死んだ人達の
言いたかったことは何なのかなと思いをめぐらします
寝る前もそうします
あるいは好きな人のことを思います

すると夢にいろんなことが現れます
ぼんやりだったり、はっきりだったり
気がつくと朝になっています

2014年1月1日水曜日

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす