2013年1月31日木曜日

彼岸

そして言葉自体がこうして偽りだす
どこに中心があるのかなど
誰にもわかりはしない
思うに任せて形成されるそれらの断片が
ただ風のようにあるいは波のように
押し寄せている
私たちにわかるのはその鱗粉
その羽ばたきの速度を知る由もない
誰しもがたずさえている秘密は
暴かれる以前に現れている
その接点を誰もがたたずみ
見つけようとしている
この空に

2013年1月30日水曜日

私の世界

目覚めるたび私はこの世界と恋に落ちる
眠りにつくたび私はこの世界の面影に抱かれる
やがてこの世界は私となり
やがて私はこの世界となる


2013年1月29日火曜日

2013年1月25日金曜日

コラージュ

女の太腿と太腿の間に
かぐわしい磁場
海峡の渦潮
膨張する重力の黙示録
近づけは離れがたく
境界線の向こうには
偶然のコラージュコラージュ

2013年1月24日木曜日

恋煩い

ことばが君の名前にしかならない
線が君の髪の輝きにしかならない

2013年1月22日火曜日

私の血はいつから赤いか

ブランコから落ちて
頭から流れたのは
私の幼いころ

赤く、赤く、赤く
空にむき出され
日が暮れた

私の中にも血が
流れているのだと思った
私の中から血が流れて


職人の店

あまりしゃべらない
マスターが客より食材に気を使って
ぼんやりと客は電球や手さばきをみている
そんな職人の店はその店にいるだけで
楽しくてしびれる
僕はいくつか知っているしびれる職人の店

2013年1月18日金曜日

なぜにこうも美しいものに逢う
かなしいほど美しいものに逢う
なぜにこうも美はかなしいのか

2013年1月17日木曜日

2013年1月16日水曜日

雪の日に

毎日や、その瞬間瞬間が分岐の連続で、たとえば電車を乗り過ごしたことで、出来なかったことがあるかわりに、会うはずのなかった人に会うのこともある。
「すべてが万事塞翁が馬」という言葉があるが、今日できなかったことはもっとよい形で出来るのかもしれない。
そう、今日は珍しく雪が降ったのだから。

2013年1月15日火曜日

こともの

気持ちだけでは埋まらないことがある
気持ちがないと始まらないことがある

象は死期が近づくと群れを離れるという
象は死期が近づくと森の奥へ行くという
森の奥には象の墓場があるという
象は違う世界へ行く境界線を知っている
象は自分がそこへ行くべき時も知っている
人はやみくもに恐れるがほんとうは
死の膨らみに気が付いているはず
その時期にも気が付いているはず

2013年1月12日土曜日

さらってくれ

電車で居眠り
気が付けば成田付近
スーツケースを持った人々
旅立ち、旅がえり
輝く小川に憧れ 風立つ田園をくぐりぬけた
磨かれた玉の魂
ああ、さらってくれ
僕を君の空にさらってくれ

2013年1月11日金曜日

さきだつもの

先立つものがないとなにも出来ない
たぶんそれは金より、気持ち
なによりいのち
自分のではなく先にたった人達の
無限のいのち
そこにわれら
これからの人たちに
先立ちたっている
確かな存在

2013年1月10日木曜日

寝そべりながら

駅に向かって歩いてた
考え事して歩いてた
少し迷って初めての街

白い建物は美術館
迷いついでに入り込んで
みつけた絵葉書

林で犬と寝そべる
浜辺で家族と寝そべる
草むらで友達と寝そべる

君へ手紙を書くよ
地球に寝そべりながら
地球に寝そべりながら読んでくれ



2013年1月9日水曜日

ボタン

ほつれたボタンのシャツ
ほおっておいて年が越えた
明けたら新しいボタンが付いていた
母が何も言わずつけてくれていた

2013年1月8日火曜日

名前

あるとき見知らぬ街に来て
見知らぬ路地裏を歩いたのだ
見知らぬ女が通り過ぎて
見知らぬ声が聞こえて
女は振り向いたのだ
たぶんそれはその土地の言葉
たぶんそれはその女の名前

2013年1月7日月曜日

レーテルモルフォ

世界一美しい蝶は微粒子の波の示すひとつの事象
事象に優劣はなく現れている
人は意味を作ろうとして
美しさに戸惑う
レーテルモルフォはただ舞っている

2013年1月6日日曜日

誰も知らない

別れの季節
それは突然訪れる
出会いの季節
それは突然訪れる
積もる砂がいつ山となるのか
誰も知らない
朽ちる果物がいつ汚物となるか
誰も知らない
誰も何も見ていない
物事はただ積もる
誰もしらない
誰も見ていない
ただそれは現れる
突然という名を装って

2013年1月5日土曜日

今日も綺麗だよ

今日も綺麗だよ
見つめていると
眩しくて涙がでるよ
会える時間はわずかで
直に触れることも
気づいてもらうことすら
出来ないけれど
今日も会えて嬉しい
夜の訪れの前に
あなたの照らす街が
あなたの照らす花が
あなたの照らす人が
あなたの照らす命が
眠りにつく前に
ありがとう
今日も綺麗だよ

2013年1月4日金曜日

目を閉じていても

目を閉じていても
わかります
そちらですね
わかります

目を閉じていても
わかります
絹のような
あなたの指先

わたしに含んで
あなたを含んで
ここで息をする

目を閉じていても
わかります
溢れて行くのが
つたうのが

2013年1月3日木曜日

灯をともして
初夏の夜をゆく蛍
やわらかな光
それは痛烈な
愛の叫び

2013年1月2日水曜日

壁をよじ登る

人生常に壁
乗り越えても乗り越えても
さらに高い壁が現れる
その高さに壁に感嘆する
おお、、おお、、、

震えながらよじ登る
おびえながらよじ登る
あの空に
とけこみたいのだ、、

2013年1月1日火曜日

元旦に禁煙を想って

健康推進法の制定に伴い
煙草ひと箱の値段が上がった
煙草を吸う人は
値段が上がったから煙草を吸うのをやめた
のではなく
安い価格でタールとニコチンの高い煙草に切り替えた
金を持っていない奴はますますヘビーになっていく

健康推進法の制定に伴い
医療機関で禁煙治療が始まった
愛で煙草をやめられないの?
一日2箱×ひと月分で治療が受けられます
煙草の代わりに毎月医者に金を払う
煙草はビョーキだ
金も持ってない奴はますますヘビーになっていく




雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を