2017年10月29日日曜日

眠りと目覚めとに
ひかりとかげとに
記憶と夢想とに
永遠と刹那とに

あぁ、ミューズ


2017年10月25日水曜日

日々が失われていく
あれほど心に誓った願いや想いも
塗り替えられてゆく日々に埋もれて
掘り返さなければ見つけられない
手のひらを空に向けて
あの日から流れてくる雲の端を
掴もうとする
握られた拳を
そのまま胸に打ちつける
何度も何度も
動け動けと
祈りににて

2017年8月15日火曜日

たそかれ

浜辺から見える
水平線の漁火に
焚き木の火が混ざる

いつの日かのカモメのように
あなたは潮風の中でそれを見つめていた

ざわめいた波があなたをさらおうとしていた
雲の切れ間から黄昏があなたをさらおうとしていた

とても静かなの

と、あなたはささやいた

2017年7月16日日曜日

それでさそしたらさ

約束を果たしながら虹の足元を探しているんです
見上げて流れて行く雲が笑っているんです
何もないところに指で筋をつけて遊ぶんです
おまじないみたいに合図を送って呼んでるんです
浜辺に打ち寄せる波は忘れたい言葉を流すのによくて
海を渡ってどこかの浜辺にいる誰かの口に移って飛び出してくるんです
見えないけれど優しく生命のある言葉がミルフィーユみたいに
積み重なってさ
積み重なってさ
それでさそれでさ
そしたらさそしたらさ

2017年6月25日日曜日

さざ波

週末のギャラリー
人の海
いい薫りがする
ああ、君

「美しいですね」
「ああ、ほんとに」
ああ、君
ああ、さざ波

2017年4月15日土曜日

2017年3月31日金曜日

飛行機雲

君の街の空には飛行機雲があるんだね
夕陽がトマトみたいに赤い
君はそこを歩くんだね
君はここに暮らしているんだね

そこで僕は駆け出した
急いではいたんだけど
そういうことでなくて
飛行機雲を追いかけるように
僕はかけだしたんだ

2017年3月29日水曜日

電灯を消して天井がどのくらいか見えるかなな夜に

電灯を消して天井がどのくらいか見えるかなな夜に
だんだんと夜が明けてくるのを待つのです

温もりから窓を開けますと
物干しざおにかかかる 空っぽの洗濯ばさみに
陽光がほされて足をぶらぶらしてるんです

石鹸とビオラがつつきあって露をはねる
冷蔵庫の中で昼寝する茄子と大根をひっぱりだして味噌で煮る
吹きかえる湯気にシンドバットの蜃気楼
オアシスに浮かぶ花びらを手のひらですくうんです

いつだって日々を閉じ込めて薫りがする
そう、哀しい記憶ほどいい薫りがする
だからもう泣かないでください それでよかったのですから
アパートの白壁がね ギリシアのミコノス島みたいに見えるんです

いつだって少したってから青春は訪ねてくる

2017年3月22日水曜日

はなればなれに世界はありまして

はなればなれに
世界はありまして

みぎて よるのき
わらう かぜ うしろ
雨のしじま 卓上ランプ
ふりこ時計 ボボン 一輪挿し
コーヒー 古本 とりおき
キャバレーの娘
スケッチしたての赤ちょうちん
すりガラス越し

はなればなれに
世界はありまして
詩はなかった

でも君が来て
世界は詩になった

君を知るまで
詩はなかった

2017年3月20日月曜日

指先

あの夏の楽しかった波打ち際で
水面から燕が飛び出して
秋を迎えに行ったね

明けがたの別れ際で
少し話があるんだって
嘘だっていいから
飛び跳ねた風船をみつけたらよかったね

指先がいつも明日のスイッチを押して
コンベアーに乗っかって
螺旋階段のすみを見つめているんだ

そこの交差点を曲がれば
目的地はすぐ
そこで待っていれば
来るんだ

そのときは知らなかったんだよ
そうそれは未来のことだからね
そのさきも知ることはないんだね
そうそれは起こらなかったことだからね

そう指先
指先が
描かなかったね


そうやって生きます

生きている僕は
生きます
食べます
息をします
歩きます
働きます
唄います
笑います
泣きます
話します
見ます
聞きます
嗅ぎます
触ります
寝ます
そうやって生きます

ときどき
生きることは
怖いから
生きることは
苦しいから
生きることは
悲しいから
優しい人と過ごします
そうやって生きます

2017年3月17日金曜日

湊にて

港街の
青い海の

白い漁船が
真昼の太陽に照らされて
揺れている

身体を縁取り
墨汁のような影が
地面に染みる

娘が聖域の中で
光を捧げて影になる
娘をさらいに風が吹く

唖の娘は糸を垂らして
ここへ、ここへと
往き来しながら合図する

湊の
青い海の

永遠が落下する

2017年2月5日日曜日

あしたがくる

ふらりといって
ふわりとのんで
あしたがくる

ふたりでいって
やきにくやけて
あしたがくる

ことばがひらひら
きぶんがふわふわ
あしたがくる

おんでもおふでも
さんでもむーんでも

さよならのじこくがきて
さようならのときがきて
それで
あしたがくる

2017年2月2日木曜日

2017年1月22日日曜日

座りてハラハラを眺め



遊歩道にあるベンチに座る

シダの屋根の隙間から青空がのぞいた

隣に1人の老人が座り

シンセイを吸った

吸い終わると去った




スーツケースを持った青年が座った

スーツケースに身を預けるようにして

臥して座った

冷たい北風が吹き抜け

私の吸ったタバコの煙が青年に流れていった

青年はひとつ咳をすると

立ち上がって去っていった




どこかでみかけた顔が通り過ぎて

声をかけようとしたが、

イヤホンを耳にしていたので

私の声は届かなかった

知らない顔だ




煙が空に浮かんで行き

雲を作って桜になった

ハラハラと、散る

ハラハラと、ハラハラと。

2017年1月18日水曜日

いろはにほへと

ひと駅先のあなたの店
今日も寄れずじまい

居待月がツンとした空に
のぞいていた

文字や絵文字の
おはようとおやすみ
やりとりしていた
満ち欠けの間に

ハードディスクの中の笑顔
アイホンの中の愛してる
全部ディデイトして

たあいない
たよりない
あいまいな

いろはにほへと と
ちりぬるを を


2017年1月13日金曜日

抽象画

5年くらい前、高円寺のライブハウスの控室に抽象画のいい絵があって、欲しいなと言ったら、マスターが描いた人を紹介してくれた。「絵を売るのは初めてなので」というので彼の滞っていた携帯代と引き換えた。それから全く会っていなくて、昨晩、昨年、酒飲んで階段から落ちて死んだって話聞いた。

2017年1月9日月曜日

厨房にて

トマト、レタス、キュウリ、パプリカ。
水菜、アボカド、ブロッコリー。
インゲン、カイワレ、スモークサーモン。
ワカメ、タコ、ツナ、ローストポーク。
セロリ、ギュウニク、マスタード。
ダイコン、クルトン、タマゴ、チーズ、ホウレンソウ。
ナス、ジャコ、ピーマン、ウインナー。

テリーヌ

庭先に梅が咲いていた
金柑がたわわになって地面に落ちていた

苺をほおばり
笑い声が響く

夕陽は今日も水平線を染めて
はしゃぎ疲れた子供が自分の世界で眠る

でんでん太鼓のやわらかな音が
夜のしじまに溶けてゆく

そんなある日の一日のテリーヌ




2017年1月7日土曜日

私は亀でよかった
星に見守られて暮らす
私は亀でよかった

2017年1月5日木曜日

念には



言いそびれました
やりそびれました
書きそびれました


一念3千という言葉があって
一念の刹那の中には
3千もの様相が絡み合って出来てるそうな


言いそびれました
やりそびれました
書きそびれました


服、かわいかった
声、心地よかった
今、美しかった


正しさじゃなくて
正直さを
念にはいれて


そびれた慈しみを
せめてこの
念にはいれて

2017年1月3日火曜日

公園

アパート前の公園
正月から賑やかに親子が遊ぶ

遊具の丘の上から滑りおり
木漏れ陽注ぐ木々の隙間を走る

いつだかの雨の日
オレンジの傘をさして君があるいた

いつだかの冬の日
霧の中を君があるいた

陽は落ちて
時は流れて

公園は憶えているのだろうか
木々は憶えているのだろうか

通り過ぎた親子を
通り過ぎた僕らを

悪い奴と暮らす

少し悪い奴と暮らすんだ
毎日がめちゃくちやで面白いから

少しワイルドな奴と暮らすんだ
住むところがジャングルだから

飛び跳ねてすべりこんで
ひっぱたいてよじ登ぼる

黒い奴、茶色い奴、
ぱっかりはらを割って暮らそう

あけすけにはしゃいで
適当にしつらえて

少し悪い奴と暮らすんだ

2017年1月1日日曜日

朝の生まれたわけ

朝の生まれたわけ
朝の生まれたわけを
誰か知っているかい
朝の生まれたわけを
そんなものがあるならば
教えて

この世界を構築するすべてのことは
意思?
のもとにあるの?
なぜ、僕は意思?を持つの?
行きたい
会いたい
話したい

朝の生まれたわけが
もし、ないならば
私のこの目覚めるたびに
沸き起こる意思は
どこから

時の集積の
末端の先端の

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす