2009年10月23日金曜日

深夜バス

息苦しさを捨てて
月のない夜空の下を走るバス
恋人に抱きしめられて
自由に満たされた女の顔を
行きかう車の光が時おり照らし
やがて季節のように消えた

2009年10月15日木曜日

それはどこからきたかわからない
六月の空が太陽に溶け出した夕暮れ
草の指を揺らす風が予感を運び
窓を開けた私の体へ入り込んだ

やがて血が騒ぎ
大地の香りを夢みた
少年時代の憧れが立ち上がる

母のひざ掛けに包まれ
故郷を後にした私は
雨の降るレンガの町並みを
砂漠をどこまでも歩いた

それは友人に宛てた手紙のように
見知らぬ人の顔の中に
愛する人の顔を見つけることと思い知る

浜辺に打ち寄せる波が
繰り返し繰り返し私に
何者であるかを問いかけ
私は呼吸をするたび答えようとする

新しい詩が生まれるたびに世界は
新しい解釈を与えられ
私はすすんでその中へ流れ込む

そしてわずかな灯が点灯する

2009年10月10日土曜日

喪失

たとえば
何が失われたことすら
気づかない

たとえば
あったことすら
失われる

次は何だ!

2009年10月9日金曜日

グランドゼロ


平和を感じたくて
たくさんの日本人が押し寄せて
かなしいね、よくないねって
大切にしようねって
読み上げられる
犠牲者の名の中で
しきりとカメラを空に向けた
Peace だね hopeだねって

むっときたのは
そこに自分がとけこめなくて
やってることは一緒だから

おなかが減ったね 
あきてきたねって

まじめにやれなかった

2009年10月7日水曜日

麻薬犬の憂鬱


でたよ
こいつ
ひでえにおい

麻薬じゃないけど
ぶち込みたい

人だまして
踏みにじって
笑ってやがる

ひでえにおい

息するたびにしんから
とまらなくあふれる

こいつ
ひでえにおい

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす