2019年10月13日日曜日

鳥たち

嵐を逃れて白い鳥がうちへ来て
七色の鳥も訪ねてきて
ずっと空だった鳥カゴに羽ばたきを聞いた
それは懐かしいあいさつのようで

2019年9月5日木曜日

2019・8・18

君のいた景色をなつかしく
まぶたが思い出して
涙のこぼれるのに
溶け出して

手のひらから
ぬくもりが消えて
触れるものすべてに
流れ出してゆく

風が波を立てて
波がまた風を起こして
見つめることで
時がまた過ぎ去ってゆく

整頓された四脚の椅子に
ステンドグラスからの陽が差して
ぼんやりとした蜻蛉たちが
秋の空に印をつける

あの暑い日の幻が
黒い階段から降りてきて
ドレスを纏った少女を
さらって行った

水びたしの三角コーンが
チェスを始めて
甘すぎるクッキーを
給仕

拒まれ去られていくことを
知らないものが
許されざるものとなる前に
美しき一輪の花を飾れ



2019年7月2日火曜日

クローバー


四つ葉のクローバー食べてるみたいだよ
とてつもなく可愛らしい君よ

2019年4月9日火曜日

それはいつか落としてしまった
私の手のようでありました
私は少しだけ近づいて今ある手を重ねてみました
波の音が聞こえた気がしました
飽き足らずに走り出した
少年を砂浜まで追いかけて見つけたのは
ひとつの貝殻
耳に当てると懐かしい季節の音がした
さよならのふりして
足元見れば
敷き詰められた桜の花びら
昨夜の雨が速度をあげて
春を遠ざける
列車の行き交う街並みの中で
私は今日も点滅している

2019年4月5日金曜日

夕暮れの道に黄色い風船の浮かぶ
それは昨日からの手紙
おかえり
風が吹くと花びらが舞い、
人々が眺めたりはしゃいだり
遠い日と思っていたのに
それは今日のことだったり
今ばかりが捕まえられず遠く遠く
わたしから引き剥がされていました

少し雨が降って
やがてやんで日が射したりしました
ひとり
よらず
ひとり

2019年3月2日土曜日

3月2日 夢の話

打ち合わせでレストランへ行く
そこには東南アジアの従業員たちがいた
その一人が私が映画を作っていることを知って
ひとつおすすめの映画を教えてくれた
象が二頭黄金の扉を開くと林になりそこへ男女二人が入っていく
林を抜けると桟橋が現れその桟橋には色とりどりの布が敷き詰められている
その布は桟橋の両岸から世界中の人がやむことなく投げ入れているもの
桟橋は長く続いていてその橋の先の島がありその島は美しい浜辺があった
映画はその全体の序盤だといった
その島には宝がありそこにいくと人生がだめになるというものだった
しかし、世界中の人が布を投げ入れるシーンは美しく私は見てみたいと思った
レストランを出るときに食べものをふるまい
私たちは車で店を後にした

2019年3月1日金曜日

通勤途中の民家の間に草が生えている
そこに陽光がさして私は足を止める
私はシャッターを切る

通勤途中の民家の間に枯れ草がある
それは半年前立ち止まり写真に収めたところ

半年の間私はその草たちに何も気にかけず通過した
残ったフィルムにはまぶしい草があった

2019年2月28日木曜日

無題

はがれたばかりの水平線が
銀色のカーテンに浮かんで
沈みかけたビー玉の転がる先にたなびく
蓄積された電子顕微鏡の隙間から
今朝また風の子たちがのぞいている
狂った歯車のねじが一つ外れて
見知らぬ土地へとダイブする
詰め込まれた弾薬はその役目を果たせず
麦畑に放置されたまま眠っている

2019年2月27日水曜日

無題

ぼんやりとした麻婆茄子
三つ編みの螺旋階段が空まで伸びて
雲が散る
たんぽぽは笑う
ヒマワリは泣く
ヒバリの群れが故郷を目指してはばたく
これら一切の事象が点灯して
街の中に消えていく
さようならサイレンス

雑詩

カフカは昼間の仕事のあと夕食を済ませて
朝日の昇るまで小説を書いたという
小説を書くことは新しい世界に光をあてていくこと
作り上げていくこと
詩は
いや、詩も
そうして書ければと思う
これは散文
これは小説
これは詩
どれでもいいなんでもいい、
始まりの言葉を見つけたい
今日の昼間2019年の2月26日の14時頃
私はなにかをみつけた気がしているのだが思い出せない
こうして書いているうちに思い出すかもしれない
なにかを見てうつしとるのではなく
心にうかぶことを掬う
それをつないでいくこと
仕事に向かう途中私は
その陽光、夕暮れのなかに
なにもかもをわすれてたたずんでいたかった
なにが私をせかすのか
なにが私を移動させようとするのか
そこにたたずんで風景と一緒に
ああ、そう風景と一緒にいたかったのに
私は去ってしまった
心に浮かぶ声を、
知っていたのに
知っていたのに!
行ってしまった、去ってしまった
再びそこへ立つことはない
悔恨
もっと風景と一緒に
もっと風景と一緒に
どこへいくよりもはるか遠くへいける
風景と一緒に

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす