2012年11月30日金曜日

虹の生まれたところ

虹の生まれたときは
あなたといたとき
虹の生まれたところは
あなたといたところ
また会えばそこから
虹が空にかかる

2012年11月29日木曜日

闇の川

川へ行かないと
子供が言った
いいものがあると
子供が言った
いいものが何かわからなかったが
私は子供についていった

川へ行くまで
七つの道を曲がり
七つの山を越えて
七つの森を抜けた

川のほとりには
小屋が一つ立ち
灯火が揺れて
水面に写りこんでいた

川の底から気泡が
湧いては消え湧いては消え
川のへりに黄金のザリガニが
浮かんでは沈み浮かんでいた
私はたやすくそれを捕まえると
重い重い金塊となった

子供は私が次々に捕る様子をみていた
私は夢中になって捕るころ
あたりは川と同じように
暗闇に包まれ子供も小屋もなく
金塊の重みだけがわかった

私は動けなくなり
暗闇の中
息だけがまあるい気泡となって
上へ上へと昇っていくのだった

2012年11月28日水曜日

ラーメンの詩〜冬〜

北風吹く日には
ラーメン食べよう

曇り空の下
メガネ曇らせて
髪かきあげて
湯気立ち昇るスープから
縮れ麺も登らせて

北風吹く日には
ラーメン食べよう

醤油味噌塩豚骨魚介
好みの味に
胡椒ニンニク支那竹チャーシュー豆板醤
好みでいれて
親子兄弟友達恋人あるいは思い出
好みの相手と並んですする

北風吹く日には
ラーメン食べよう

身体も心もポカポカさ

北風吹く日には
ラーメン食べよう

2012年11月27日火曜日

次郎さんに


ペットボトルで、銀の頭を叩いて
フラフラと夢心地
自由な次郎さん

生き生きと命、この世に溶かして
フワフワあの世にお散歩
自由な次郎さん

ごきげんよう

ー30年経過ー

うひょひゃひょひょ
うひょひゃひょひょ

どこかの小屋で似た笑い声
お尻フリフリあらわれた
自由な次郎さん

BE HAPPY!

2012年11月26日月曜日

望遠鏡

伸ばして
覗いて
望遠鏡の先の

遠いところ
丸く切り分けられて
心に届く
すこし迫って
心に届く



2012年11月25日日曜日

春雷


その火が落ちるならば
心に巣食う狼は
訝しさと共に燃え
ひと筋の狼煙となり
新しい季節の印として
空を描くひとつの
景色となりましょう

春雷、それは
ひとつの言葉で
私の心に棲みはじめた
名も知らぬあなたそのもの
空を見上げるたび
避雷針のように
その音を探している


2012年11月24日土曜日

諍い


会うたびに苦しさが増すのは
僕のせい?君のせい?
出会わなければよかったなんて
古い歌の歌詞みたいなセリフ
苦笑いしながらつぶやいた

出会った時がいちばんで
別れた時が次に綺麗だった
戻れなくなりそうで
お互い距離ばかりを気にしてた

別れ話が出来ただけ
お互いに成長したわねって
涙流して笑ってた
知らないから惹かれていた
いなくなって恋と気付いた

出会った時がいちばんで
別れた時が次に綺麗だった
戻れない思い出の中では
諍いすら慈しくなっていく

2012年11月23日金曜日

あいうえお

あいうえお
かきくかこ
さしすせそ
たちつてと
なにぬねの
はひふへほ
まみむめも
やゆよ
らりるれろ
わをん

同じ価値の言葉たち
入れ替えてしみつけて
どうしたらお金になる

同じ価値の言葉たち
つないでつないで
どうしたら愛あらわせる

2012年11月22日木曜日

たくましくねむる

にえくりかえる
はらわたひきずりだして
さんまいおろし
しお こしょう
ゆがいて いためて
ねかせて はっこう

にえくりかえる
はらわたひきずりだして
みじんぎり
つりばりにつけて
とうきょうわんに
ぽとりとたらす

にえくりかえる
はらわたひきずりだして
きゅうきゅうしゃではこばれて
まともな はらわた
まっしろな まわたつめて
うかんでく きえていく

にえくりかえる
はらわたは
たくましく ねむる

2012年11月21日水曜日

I氏の隣人

戦争をして多くの人が死んだというのに戦争に負けた悔しさを晴らすために用意周到に理屈を考えてまたやろうとしている負けた時の屈辱を解消するために苦労もいとわず寝る時間を惜しんで必死に必死に自分の屈辱を解消しようとしている死んだ友の死んだ親の死んだ恋人の屈辱を晴らそうとしている誰か教えてあげて下さいもう永遠に屈辱からは逃れられないのだと誰か教えてあげてください人の命は短く自分のやろうとしたことを自分が終わりまでみていられるわけではないということを誰か教えてあげてください再び戦争を起こして屈辱を相手に与えることがどれほど虚しいことなのかを誰か教えてあげてください核武装というものはもう滅ぶためにしかあり得ないのだということを誰か教えてあげてくださいあるものは使用されてしまうということを

2012年11月20日火曜日

みゅーず

わかっています
まきついてくる
あなたがいるのは
あなたがふれるとき
わたしはたちどまり
めにみえるすべてのことに
ちゅういをふりむけましょう
あなたがふれるとき
わたしはたたずみ
うけとれるすべてのことに
ちゅういをむけましょう
おおみゅーず
あなたにふれるには
おおみゅーず
まつしかないのでしょうか
おおみゅーず
わたしにふれる
おおみゅーず

2012年11月19日月曜日

泥をすする

泥をすする
枯れぬため

泥をすする
満たすため

泥をすする
焼けぬため

泥をすする
泥をすする

もうこの味は忘れられぬ

2012年11月18日日曜日

描かれる部屋

その部屋の壁に色を塗る
それは青 それは赤 それは黄色
そしてそれはすべての色
あなたは壁に色を塗っている

私は入り込む 私とともに
一枚ある絵とともに

白を塗り込めたカンバスに
わずかながらの月に似た青 赤 黄色
そしてそれはすべての色

描かれ続ける壁 
動き続ける壁 
そしてあなた

その一角に絵を立てかける
符合するように 絵を

そして私は絵を離れて
あなたに触れる

2012年11月15日木曜日

冬空の下

冬空の下
独り歩く
落ち葉踏みしめて

どこまで独り
生れたときは独り
死ぬ時も独り
今も独り

誰もが独り歩いた路
誰もが独り歩く路

木は独り伸びて
空は独り移り
風は独り流れている
路は独り続き導いている

冬空の下
距離を変えながら
独り独りゆく

2012年11月14日水曜日

失恋カーペット

形がすき
色がすき
音がすき
薫りがすき
味がすき
触った感じがすき
過ごす時がすき
過ごす所がすき
それを言えない
自分が嫌い

2012年11月13日火曜日

赤い羽根

政治家が赤い羽根をしている
私は募金をしている人だと
誇らしく主張している
値段も書けばいい
100円したとか
100万円したとか
100万円募金した政治家の羽根は
金で出来てますと
マスコミでアピールして
夜、宴会の席で
女将に自慢したらいい
何で募金が必要なんだ
何でボランティアが必要なんだ
羽根をつけて浮くような
真似はしてくれるな
何で赤い羽根は始まったか
戦争があったからだ
羽根をつけて飛んで逃げるような
真似はしてくれるな

2012年11月12日月曜日

私はテロリスト

春には春の
夏には夏の
秋には秋の
冬には冬の
種を懐にしのばせて
いいところ
だれにも知られない
だれにも触れられない
いいところみつけては
蒔いてしまうんだ
街を秘密の花園にして
大切な人にだけ
教えてあげるんだ
私はテロリスト

2012年11月11日日曜日

グッドバイ

グッドバイ
意味:いい別れ

グッドバイ
意味:素敵な別れ

グッドバイ
意味:お互いのしあわせを願いつつ もう会うことがない人に向けて言う言葉

グッドバイ
意味グッドバイ

2012年11月10日土曜日

もてあまる


ああ、誰も私の詩を聴く人はいないのだ

無人の空に私は詩を読む
無人の地に私は詩を読む

ああ、私の詩がいつか誰かに届くのか

無人の空に私は詩を読む
無人の地に私は詩を読む

ああ、もてあまる詩を

無人の空に私は詩を読む
無人の地に私は詩を読む

2012年11月9日金曜日

似たようなありがとう

花をくれる人よありがとう
手紙をくれる人よありがとう
詩を聞いてくれる人よありがとう
電話をくれる人よありがとう
教えてくれる人よありがとう
あいさつをくれる人よありがとう
そばにいてくれる人よありがとう

陽水に似たような歌あったな
思い出したけどいいよね
同じ気持ち
ほほえんでくれる人よありがとう
まじわってくれる人よありがとう

2012年11月8日木曜日

零の洞窟

灯篭が紋様あぶりだし
貝のはりつく小舟が無限の門をくぐる
樹木が澪の道しるべ
闇夜の淵へ打ち寄せる月光り
湖の底の泥ざわめき
雁の行きかう林檎の森
黄金色の木がはえる
狩人たちは蝙蝠を追い
零の洞窟へとはいりこむ
音もなく門はとじた

2012年11月7日水曜日

ハラペコたち



はぐくまれる いのちのはじめ
季節といっしょに進んでいく
ひと月 ふた月 とつき10日

黒い影は 母の体を
取り込みながら つくられていく
ひと月 ふた月 とつき10日

母はいつでもハラペコ
君が生まれてハラペッタンコ
ひと月 ふた月 とつき10日

2012年11月6日火曜日

さいわい

誰もがそうであるように
苦しく悩める時に
教えてくれる人があり
そうだ、そんなんだよと
こころ動かれる言葉がある
生きていることは
さいわい
人と交われることは
さいわい

2012年11月5日月曜日

うたうよ




















おとのもと
ながれ髪にさして
うたうよ こころ

だれにも にてない
だれにも ふれる こころ

うたうよ こころで
うたうよ ここで

うたうよ こころ
うたうよ こころで

2012年11月4日日曜日

野外にて

太陽が
背中を焼いて
左ほほをあたため
遠近法の
夕焼けが
そだちゆく
実を染める
押し出される
影が昨日に触れる

2012年11月2日金曜日

はこぶね


白いカンバスに好きな色だけぬる
白い紙の上に好きな言葉だけかく
6号の聖域
A4の聖域
好きな人の肌に触れるように
好きな人に耳うちするように
筆と
ペンを
人差し指
中指
親指で
はさんで
はこぶ
一触れ 一触れ
一文字 一文字
はこぶ
はさんで
はこぶ

2012年11月1日木曜日

中央線


車両に乗り込み
動き出す街を眺める
太陽の下 屋根がつづく
雲へ向かうビル群
地球に生える
赤 青 緑
黒 白 黄

私をのせた車輛が
通り抜けてゆく

私をのせた車輛が
街を描いていく

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす