2014年8月27日水曜日

声

あなたの声を思い返すだけで
どれほど歩けたかわからない

なんてことはないのです
暗闇の道でも雨の道でも

私はあなたの声を確かに聞いた
どれほど歩いて行けるかわからない

私が絶えてしまっても
歩みが止まることはないでしょう



2014年8月22日金曜日

貨物列車

僕はどこに行きたいんだろうな
僕はどこに行くんだろうな
心をかくして行きつくところは
息も出来ない心ないとこ
大人になって嘘ばかりうまくなって
素直でいられるのはひとりでいるとき
長く生きていたけれど
悲しみが荷物になって歩いてゆくのもおっくうだ
そもそもどこに行くかもわからない
貨物列車が深夜の空を走ってゆく
その貨物列車に乗せてください
僕をその貨物列車に乗せてください


2014年8月16日土曜日

蝉

今、夏、夜
道端の木々から
街灯の中から
とどく鳴き声は
どれもいつかきいた
それとは違う

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

力尽きた蝉は
羽をばたつかせ
地を這いながらも鳴く
足を折り曲げて
そして
空を抱いていく

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

2014年8月14日木曜日

壱

足元が揺れている
存在を揺るがすように揺れている
鳴きつづける蝉のいる夏は
無限の生殖活動への渇望
ひげを生やした権力者たちが
地球儀の上でマージャンをしている
キャンパスに描かれた風景を探して
どくろの生い茂る森をゆく
自発的に動き出した機械に動かされて
すべてが潰されて消えてゆく
砂漠のど真ん中で店を広げて
七色の宝石を売る
月の光がひしめき合うように
それらを照らしている

零

寝苦しい夜が続いて
夜明けの来るのを見届けて眠りにつく
明日が来ることを
うまく信じられないくらいに
世界は急激に変化して
ひとつの部屋の中に
情報が溢れすぎて息ができない

たどり着きたかった場所が
ほんとうに望んでいる場所でないことに気が付いて
子供のころ欲しかった玩具を手にした時に
欲しかったという形容詞が抜けて
どうでもいいように思え
うまく大切にできなかった

目に触れる世界が
おおよそ自分とはかけ離れたところで成り立って行き
そのメビウスの輪のから
放り出された小惑星が
輝きもせず漂っては砕けてゆく

向日葵はいつだって
太陽を向いている
近すぎてはみていることができない
遠すぎてはわかることができない
永遠はすでに抱えている

みつけようとするな!
打ち抜け!
打ち抜いた
「零」
に
酔え


心臓

私を開いておやすみを告ぐ 私を開いてありがとと告ぐ どうしてこうも堅固に鎖を巻いて どうしてこうも扉をとざしている ああ、あと何万遍抱きしめたなら 私はその声を聞けるだろうか