2016年12月30日金曜日

沈黙

手のひらからこおぼれ落ちた風が
季節を巡りふいている

いつかみた影がまた壁に
落ちて揺れている

私の向き合えるものはひとつだとして
私の見える景色はひとつだとして

平行にながれてゆく地平線に
私は飛べる

陽光が立ち上ってゆくところへ
私は飛べる


2016年12月21日水曜日

横顔

なにも映ってなかったよ
暗がりだったから
お酒飲んでたから
綺麗に思えた横顔
映ってなかったよ

ぼんやりと笑っているのがわかる
僕も笑っていたよね
ずっと前から知っていたけど
あの夜がいちばん綺麗に思えた

たぶん僕を見ているんじゃなくて
見知らぬ方を見ていたから
横顔、そう横顔だった
見知らぬ男をみてる
横顔が綺麗だったんだ

なにも映ってなかったよ
暗がりの中で笑いあったよね

2016年12月20日火曜日

きっとそうだ

ぼくたちはとなりあわせ
BARカウンターで、浜辺で、映画館で

なにを待っているかはわからないけど
ただぼんやりしてとなりあわせ

きっとそうだ、同じ気持ちなのは
一緒にいたいってこと、きっとそうだ

デパートに買い物にいって
ぼくたちはバラバラにものをみているね

朝、仕事場にいくときも
別々に出ていって、昼間をやり過ごす

きっとそうだ、同じ空を見上げて
なにを食べてるかなって、きっとそうだ

贈りたいと思ってる
手帳、ピアス、マフラーetc
えっと、あと、きっと空

きっとそうだ、同じ気持ちなのは
裸になれるってこと、きっとそうだ

きっとそうだ、となりあわせなのは
一緒にいたいってこと、きっとそうだ

2016年11月8日火曜日

やさしい女

やさしい女があった
ご飯は食べていますか
寝ていますか
私が暮らしていることを思う
やさしい女があった

やさいい女があった
別れ際のホームで見えなくなるまで
見送る
みなの道案内を進んで買って出る
ほがらかな
やさしい女があった

やさしい女があった
人の苦しむの様を見て
自分のいたらなさを悔しがり
強くなりたいと願う
やさしい女があった

やさしい女があった
家族が集いご飯を食べるのを
微笑んでみまもり
友人の悩みを気のすむまで聞いて
気晴らしいに遊園地でもと誘う
やさしい女があった

やさしい女があった
よく笑い、くせ毛で、寒がりの
美しく、愛おしい
やさしい女があった

2016年11月5日土曜日

情景

ふれる さわる はじく
あたる すぎる 

窓辺

かがむ のびる ひねる
にぎる なぜる

湖畔

ふるえる さざめく
ながめる かかえる
のぼりおり

公園

まつ あるく こぐ
かぐ くわえる

夕暮れ

今日という日

今日がどういう日かって
それは光が注いでいたさ

今日がどういう日かって
それは風がふいてたさ

好きな人を思って皿を洗って
好きな人を思って床を磨いたさ

今日がどういう日かって
それは国会前で叫んださ

今日がどういう日かって
それは死んで生まれたさ

花を思って詩を書いて
海を思って歌を唄ったさ

今日がどうだったかって
それを決めるのは

今日がどういう日かって
素晴らしいよ、生きてる、愛してる
今日がどういう日かって
素晴らしいよ、生きてる、愛してる

素晴らしいよ、世界に生きてる
素晴らしいよ、君を愛してる

2016年11月4日金曜日

セリフ、例えば語られるべき言葉はどこにあるか

ヘリの飛ぶ音が聞こえる
私を通過していく存在と
私のなすべきこと、
眼前にあるもの

遊園地へ向かう途中の宇宙の道に差し込む日差し
生きていることを謳いあげる珈琲の苦み
近づいた神の君の髪の香りへ許された離脱と距離
巻きあがる神が誰を愛するというのか
ついえるまでつうじて湧き上がることをつづる

ヘリの飛ぶ音が聞こえる
上空3千メートルから何を探している
虚して心という宇宙に何を探している
音を探す、色を探す、美しい尻の丸み
柔い肌、白い指、甲高い声

イマージュとイマージュの間にある詩情
静物と生物の愛だ!にある詩情
あなたの、君の動くことで生まれる微熱
意味を超えたところの愛しているのは人間にあるところの微熱

肉体の朽ちる時、思考は停止する
燃え尽きた灰と炭とが詩篇となり残る

アンダーグランド

アンダーグランドはすでに失われ
明日は遠く、思いもよらぬところで姿を変えて訪れる
あぁ、あぁ!と感嘆が積もれば
またフロンティアが生まれる

沈黙

時間は私の知らぬところで流れ
私の知るところは眼前の一輪の花
瞬く間に散りゆく一輪の花
私の知らぬところは変容し続けて
押し流される流れの前に私は沈黙している

2016年10月13日木曜日

途中のかけら

始まりは終わりだという
終わりは始まりだという
現れるのは途中の話
掬い取られるのは途中のかけら

ユリイカ

そもそもさ
分裂して出来上がってるわけだから
僕たちは

存在することは
規定するからわかれるけれども
愛することで近づいていく

2016年10月12日水曜日

夜明けから、また夜

夜明け
空はむらさき
あなたはわたし
わたしはあなた
雲について何か語ろうとした
柔らかい筆先のような雲について

おはようございます
洗濯物がはためくよ
ピアスは嫌いなの
ビオラって小さなパンジー
花言葉は想いで胸がいっぱい

だるまさんがころんだ
やわらなかユーモアがいるね

そして
何も起こらない夜に

2016年9月27日火曜日

地平線は
水平線は
果てしのない蜃気楼

あふれ出る向日葵に
明日を託している


2016年9月10日土曜日

2016年8月31日水曜日

夏について

見送る季節を
額縁の中に捕まえた

走り出す向日葵は
人の波の中へ

蝉しぐれが
川沿いの林道に降る

郵便配達人が木陰で
昼寝をしている

身体を揺らしながら
OPEN CLOSEの
ミラーボールを行き来する

さよなら林道
さよなら白猫

夏について




2016年7月15日金曜日

醒めたくない夢を見た

その人の名を口にすると
その日の夜夢に見てしまう
会わなくなって久しいが
先日その人の名を口にして
夢に現れた
鮮やかな浴衣を着て
私をみてやさしく微笑むのだ
なれない下駄に足元が
よろめいて
私はその人の身体を受け止めた
ああ、なんといういい香りがする
ああ、なんという華奢な肩
その人はしばらくじっとして
夜空を見上げていた
私も夜空をみあげて
その人の名をよんだ

居間のソファーはしんとして
観ている途中だった映画は終わりまで行って
メニュー画面に戻っていた

そんなこと
ほんとうの時間は
そういうふうに流れて
私は幻をみた
どういうわけかいい香りだけしていた

2016年6月25日土曜日

夜に

夜の樹
根元の根が
人の寝ているように見えた

夜の公園
街灯が葉を照らして
揺れていた

夜の遊具
昼間より騒がしく
沈黙していた

へそのような
広場の真ん中に立ち
数日前に吐き出した言葉を
思い出していた

風が走り抜けて
そこにいる
私だけが
いつまでも部外者のように
ハーモニーを乱していた

私は座り込んで
夜になろうとした

私は眠り込んで
夜になろうとした

2016年6月24日金曜日

無題

憎しみ


がない
のは
しらないから

がない
のは
わからないから

がない
のは
ふれないから

がない
のは
おなじだから

あると
うまれる

無条件の
美しい世界は


いきるということは
憎しみをかかえること

あるから
すべて
​あるから

2016年3月29日火曜日

夜明け前

夜が訪ねて
静けさの広がる間に
耳をすませば
心の声が聞こえてくる

騒がしい世界も
今ならもう眠っている

言葉を交わす
言葉に触れて
心に届く

生きとし生けるものよ
闇夜に歌うのだ
朝を待って
朝をたたえる
歌を謳うのだ

忘れてしまった
人の名を僕は
木々の影の中に見つける

ありふれた時の流れの中に
こうして
くさびを投げ込んでは
いつでも帰ってこられるようにと
願うのだ

いつ尽きるかわからない
命の灯を
突然の雷や雨の埋めつくす街の中でも
確かに輝かせ燃やすのだ

終わりを知らない
あふれる限り続けるだけだ

ああ、君は今眠りの中か
どんな夢をみているのだ

僕は君の髪をなぜる
いい香りがする
いい寝息が聞こえる

生きているということに
泣き出しそうなくらい
震えている

僕は地下から水を汲んでは
君に飲ませる

終わりのわからないままに
僕はこうして君と過ごしている

木を植える
花を咲かせる

この紙の上に
かすかではかない心を
文字の器に注そいで現すのだ

花束のように
君に届ける
言葉を贈る

夜の明けるまでには

2016年3月9日水曜日

深夜-夜明け

輝きをかいでむせかえる春

闇夜に浮かぶ物の怪はあいつだ

息を殺して抜けるトンネル

身をかがめて突き抜けるパラレル

互いに狩られるすんでのところで戯れる

それぞれの季節の詩に疼きを憶えながら

やがて太陽の血が流れ世界が新たに染まる

汚れた部屋

畳をかえたばかりの
青い匂いがまだ部屋にある

落ちている毛や埃
僕から出た老廃物がつもる

掃いても、吸っても、つまでんも
僕がいるだけで老廃物がつもる

しんしんと

僕は汚して生きる

卵の部屋

ここは卵の中だ
ここで孵って
地を歩き
空を行く

ここは卵の中だ
入り込んでくるのは
必要な栄養素

窓から眺めて
イマジン
山を登るのを
海を泳ぐのを

ここは卵の中だ
吸い込んで 包まれながら
破る

絶える前に
破る

2016年1月15日金曜日

ときわ時雨

落葉が散り散りにあいさつを交わす
おはよう おはよう

焔のあるうちは終わりを思いもしない

昨日がそうでした
何も映らないことを君は知っている

積み上げられたせせらぎに
僕は合図を待っている

生まれたときもそうだし
目覚めたときもそうだし
世界はすでにあり

知らずにつかんだとしても
ここで景色に吸い込まれてゆく

問題は僕が世界に
どう包括(つつまれ くるまれ)ているか
ということでどうやら
もれてはいないことがわかった

それを確かめることはできない
だから次へ進む

オー

アー

オー

一見どれも同じように見えますが、その存在というものは唯一無比のものなのです。一見どこにでもあるように見えますが、その存在はそこにしか存在しないものなのです。空から降る雨粒の軌道がどれも違うように。陽光がやはりそれぞれ照らす場所が違うように。

岩陰の葉の足跡に
竹林のささやきの中に
その部屋の壁に

それは青 それは赤 それは黄色
ときわいろ

もう来ることができない
とおり過ぎた木漏れ陽は聖域

それはそのものが
時間をかけて成っていくものだから

それはそのものが
僕と君の間に繰り返される時間の中で
それは成っていくものだから

もうすぐ夜が明けます

朝の太陽の中で僕は君に気付いた
確かにいることを

永遠を、未だ知らずに

2016年1月4日月曜日

永遠を、未だ知らずに

落葉が散り散りにあいさつを交わす
おはよう おはよう

昨日がそうでした
何も映らないことを君は知っている

積み上げられたせせらぎに
僕は合図を待っている

知らずにつかんだとしても
ここにいて吸い込まれてゆく

それを確かめることはできない
だから次へ進む

岩陰の葉の足跡に
竹林のささやきの中に

もう来ることができない
とおり過ぎた木漏れ日は聖域

朝の太陽の中で僕は君に気付いた
確かにいることを

永遠を、未だ知らずに



新しい人

あなたが吸う空気は
潮の薫りがするでしょうか

あるものたちが美しくあることを
どうか僕たちに教えてください

哀しみばかりでないことを
新しい人よ
どうか僕たちにおしえてください


アンカー

ことばから遠くはなれて
土をひろう

砕かれた骨が宙を舞って
春が来る

手紙が届く

知りたかったのは
愛の深さ

音楽だけが時の過ぎるのを
教えてくれる

またあの季節に僕らは
会えるだろうか

アンカーを打ち込む
また戻れるように
アンカーを打ち込む


どこへも行けずに

生きていることを忘れてしまうほど
人を愛して

太陽のひかりにただ焼かれて
月のひかりにただ溺れる

触れた肌の
息の吐き出されるのを
思い出しては
どこへも行けずに

社にて

女の眠る本屋の二階
カビの臭いのする布団
光の差し込むグラス
寒風の通る路地裏
車に乗って女を探して
目覚めるとそこにいた
溢れるくらいの冬の気配が
少し触れるだけでこぼれきそうで動けない
時折ひびくアラームと
夢とうつつの交わる振り子時計
老人の手の皺
仏のある園
はっきりとしたポイントは少し先のこと
許されてしまった恥ずかしさが
影をまとってのびてゆく
地下を流れる水脈と同じように
探し当てて井戸を作るのだ
枯れることはないと知っているのは誰か
酔狂の中で気が付いたこと
光が集められて
私を焼いた
ある冬の日、
美しい社での出来事
動いた 降りてくる 女 
梯子からー

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす