2016年11月8日火曜日

やさしい女

やさしい女があった
ご飯は食べていますか
寝ていますか
私が暮らしていることを思う
やさしい女があった

やさいい女があった
別れ際のホームで見えなくなるまで
見送る
みなの道案内を進んで買って出る
ほがらかな
やさしい女があった

やさしい女があった
人の苦しむの様を見て
自分のいたらなさを悔しがり
強くなりたいと願う
やさしい女があった

やさしい女があった
家族が集いご飯を食べるのを
微笑んでみまもり
友人の悩みを気のすむまで聞いて
気晴らしいに遊園地でもと誘う
やさしい女があった

やさしい女があった
よく笑い、くせ毛で、寒がりの
美しく、愛おしい
やさしい女があった

2016年11月5日土曜日

情景

ふれる さわる はじく
あたる すぎる 

窓辺

かがむ のびる ひねる
にぎる なぜる

湖畔

ふるえる さざめく
ながめる かかえる
のぼりおり

公園

まつ あるく こぐ
かぐ くわえる

夕暮れ

今日という日

今日がどういう日かって
それは光が注いでいたさ

今日がどういう日かって
それは風がふいてたさ

好きな人を思って皿を洗って
好きな人を思って床を磨いたさ

今日がどういう日かって
それは国会前で叫んださ

今日がどういう日かって
それは死んで生まれたさ

花を思って詩を書いて
海を思って歌を唄ったさ

今日がどうだったかって
それを決めるのは

今日がどういう日かって
素晴らしいよ、生きてる、愛してる
今日がどういう日かって
素晴らしいよ、生きてる、愛してる

素晴らしいよ、世界に生きてる
素晴らしいよ、君を愛してる

2016年11月4日金曜日

セリフ、例えば語られるべき言葉はどこにあるか

ヘリの飛ぶ音が聞こえる
私を通過していく存在と
私のなすべきこと、
眼前にあるもの

遊園地へ向かう途中の宇宙の道に差し込む日差し
生きていることを謳いあげる珈琲の苦み
近づいた神の君の髪の香りへ許された離脱と距離
巻きあがる神が誰を愛するというのか
ついえるまでつうじて湧き上がることをつづる

ヘリの飛ぶ音が聞こえる
上空3千メートルから何を探している
虚して心という宇宙に何を探している
音を探す、色を探す、美しい尻の丸み
柔い肌、白い指、甲高い声

イマージュとイマージュの間にある詩情
静物と生物の愛だ!にある詩情
あなたの、君の動くことで生まれる微熱
意味を超えたところの愛しているのは人間にあるところの微熱

肉体の朽ちる時、思考は停止する
燃え尽きた灰と炭とが詩篇となり残る

アンダーグランド

アンダーグランドはすでに失われ
明日は遠く、思いもよらぬところで姿を変えて訪れる
あぁ、あぁ!と感嘆が積もれば
またフロンティアが生まれる

沈黙

時間は私の知らぬところで流れ
私の知るところは眼前の一輪の花
瞬く間に散りゆく一輪の花
私の知らぬところは変容し続けて
押し流される流れの前に私は沈黙している

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす