2020年11月23日月曜日

 人と会うことが嬉しくて犬のように尻尾ふって漏らす

君の腰の暖かさは同じ36.5度のグラスよりもシャープ

自宅前の神社の木々がいつの間にか生い茂り

夏は過ぎ去り赤や黄色の葉になりそして風に散っていく

今年は詩人が天国にたくさん行って

向こうで好きなだけ抱き合っているんだろうな

国も肌の色も関係なくそんな理想郷を昔から夢見て

限られた命の中で果たせないままに景色に溶けた人々と


ふんだんに盛り込まれた命の種を祈りの中で芽吹かせていく

痛みを覚えるこの肉体を精神を言葉のフォルムに落とし込んで

新しい種を許されないことを夜から朝にかけて

月の光しか知ることない孤独の中で開いていく


置き去りにされた電話BOXから希望の人に電話をかけて

泣きじゃくるのは恥ずかしいことじゃない

朽ち果てていく自分を慈しいと強く思えるのはあなたとまた会えたから


私たちには続きがある

正しさと偽りによりも湧き上がる感情を放つ

空を詩で埋めつくしてバベルを築くにはまだ

優しさがたりないかもね握手をしよう拍手をしよう

この世界と君のほおに触れながら

ミリオン通り

花屋スナックレストラン
鰻屋郵便局ランドリー
いい匂いがしています

喫茶酒場雑貨屋整体院
蕎麦屋バル茶屋薬屋
食べて整えてプチテラスでひと休み

クリーニング店居酒屋公文
仲町の家弁財天の氷川神社
子どもらのはしゃぐ声が聞こえます

リビングショップバーガーショップ和菓子屋
大通り大きな空がひらけて電車が行き交います
左に進んで劇場cafeギャラリーBUoY

あぁ、この風、いつかの風と同じ気配
夏でしたか、秋でしたか、
あなたとでしたか、君とでしたか、
劇場に向かうこの通りを歩いたのは

2020年11月10日火曜日

君の喜ぶ声が雨の降りはじめみたいにやさしくびびいて

夏だったか秋のはじまりだったかポストに届いた

どこで買ったかわからないお土産みたいに

好きな人を描いた丘や浜辺を持ち歩いている



きみのこと

 きみのくちびるの

もとめるまま

はなしたらいいよ

すきなこと

きらいなこと

きみのくちびるの

もとめるまま

はなしたらいいよ

どんなだった

こどものころ

どんなだった

はつこいは

どんなだい

きみのいる季節は


2020年11月8日日曜日

ある朝のこと

昨夜の夢の続きが

現実世界の朝日に溶けて

砕かれた虹のかけらになる

錯乱した水際の白鳥たちが

終わりの季節を知って

飛び立ってゆく

塗り固められた

煉瓦造り、緑の大河へかかる

橋の上を

打ち震えた哀しみ通りぎた

ああ、

今、また

通り過ぎた

2020年11月7日土曜日

幻の夏

黄色い車に乗って君を迎えにいく

浜辺で行われるステージまで

折りたたみの手紙にぎっしりと文字があって

早く読みなよと急かしてくる

泳いだ後の帰り道

腕が触れてもう少し近くにいたいなと

僕たちは思った

言葉を君が先に捕まえて

僕は君を引き寄せた

幻の夏が永遠に近く現れた


季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす