2012年11月29日木曜日

闇の川

川へ行かないと
子供が言った
いいものがあると
子供が言った
いいものが何かわからなかったが
私は子供についていった

川へ行くまで
七つの道を曲がり
七つの山を越えて
七つの森を抜けた

川のほとりには
小屋が一つ立ち
灯火が揺れて
水面に写りこんでいた

川の底から気泡が
湧いては消え湧いては消え
川のへりに黄金のザリガニが
浮かんでは沈み浮かんでいた
私はたやすくそれを捕まえると
重い重い金塊となった

子供は私が次々に捕る様子をみていた
私は夢中になって捕るころ
あたりは川と同じように
暗闇に包まれ子供も小屋もなく
金塊の重みだけがわかった

私は動けなくなり
暗闇の中
息だけがまあるい気泡となって
上へ上へと昇っていくのだった

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季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす