2012年6月19日火曜日

パン屋のある四つ角に立つ女

パン屋のある四つ角に
いつも立っている女がいる
「3000円でマッサージいかがですか」
と決まったセリフをいう

通り過ぎるたび
お金のないふりする
しばらく行ってふりかえると女は
新聞を広げている

ある酔いの深まった夜
その女の誘いにのってみた
ビルの一角の個室に通され
3000円を払った

違う女が現れ
半裸にされ
馬乗りになり
指で私の体を押し始めた

期待していた現実を引き入れるには
5倍の現金が必要だった
持ち合わせはなかった
私は店の便所で吐いた

パン屋のある四つ角に
いつもの女は立っている
しばらくの間、通り過ぎても
女は何も言わなかった

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季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす