2016年7月15日金曜日

醒めたくない夢を見た

その人の名を口にすると
その日の夜夢に見てしまう
会わなくなって久しいが
先日その人の名を口にして
夢に現れた
鮮やかな浴衣を着て
私をみてやさしく微笑むのだ
なれない下駄に足元が
よろめいて
私はその人の身体を受け止めた
ああ、なんといういい香りがする
ああ、なんという華奢な肩
その人はしばらくじっとして
夜空を見上げていた
私も夜空をみあげて
その人の名をよんだ

居間のソファーはしんとして
観ている途中だった映画は終わりまで行って
メニュー画面に戻っていた

そんなこと
ほんとうの時間は
そういうふうに流れて
私は幻をみた
どういうわけかいい香りだけしていた

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季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす