2013年2月28日木曜日

心電図

心電図は体の中でうごめいている
心臓や血液なんかをよく分かるようにする

心の中で動いている
やりたいことや本当の気持ち
良く分かる心電図があれば

みたいけれどみていられるだろうか

2013年2月25日月曜日

手術の夢

私の頭蓋骨が半分切り取られ脳が露わになっている
医者たちがそれを見てヒソヒソと話している
私も同じようにのぞきこむと黒い塊が右脳と左脳の間にある
医者たちの相談をよそに私はそばにあったスプーンを脳にそっと入れる
脳がくすぐったい
プリンあるいは豆腐の一部を掬うように黒い塊を掬った
私は何だかうまそうだなと思いながら黒い塊を捨てた
医者らはまだ気が付いていない


2013年2月24日日曜日

2013年2月23日土曜日

焔がついているうちは
消えることを思いもしない
一筋の煙が立ち昇るとき
音もなく景色は過去へと還る


2013年2月21日木曜日

いのち

抱きかかえた
あなたの
子供の
体の
心の
生まれたばかりの
存在に
手が沈む

いつからだというのだろう
残された形跡が疑いを膨らませ
開いているのにはいることの出来ない扉のように
重石をつけつづけ忘れてしまわなくてはなったのは

その場所では記憶ばかりがたまり続け
わずかな風ぐらいでは消すことが出来ない
そこに身を置くことがそれらをかき鳴らす
指であり息であり止めることはできない

約束を果たすために未来をつくろうとしていた
離れることは抱き続けることとしりながら
偽りの仮面ばかりが増え続け
もとのことがなんなのかさえわからない
釣り糸がきれて深く深く河へ沈むように

見知らぬところで泉がわいている
時間をかけて洗い流す水をたたえた泉がわいている

2013年2月20日水曜日

行方不明

逃れようとして握りしめているものは何?
逃れようとしてとどまり続けているのは何処?

愛ならば
愛なとき
愛かも

見えているけれど届かない雲のように
見えているけれど果てしなく遠い恒星のように

愛ならば
愛なとき
愛かも

2013年2月19日火曜日

父親の空

父親がガンだと分かったのは昨年の秋だ
手術や治療を繰り返している

家庭を振り返らず母に愛想をつかされ
ひとり線路沿いのアパートに住んでいる
訪ねて行ったら散らかる部屋の中に
健康に関する本が山と積まれていた
部屋を片付けてジブリのCDをかけたら
「人間になった気分だよ」と蒸せた

飯を食べて駅までの道を歩いていると
父親は突然立ち止まった
父親は曇り空を見上げた
膀胱ガンだから尿意がわからずおむつをしてるのだ
思い出したようにカバンから携帯を取り出し
電話をかけるふりをした
「こうすれば怪しまれないだろ」
誰になにを怪しまれるのかわからなかったが
父親は笑っていたので私も笑った

詩にしていいかなと聞いたら
「書け、書け」というので私はこうして書いている
明日再び手術がある


夢の街

夢から覚めてはっきりとしたものが流れこんでくる前に
古ぼけたランプにもういちど火をつける
オイルの匂いが夢の色をとどめて
過ぎてしまった夜空を輝かせる

石灰で描かれたトラックを
一人の娘がかけていく
もう少しだけもう少しだけ
速く走れば失われた扉にもう一度会える

迫りくる嵐を誰もが知り
息をひそめて過ぎるのをまっている
切れかけた電球がバリバリと合図している
影が山にのびてやまびこに触れた

街は山に飲まれようとしている
山もまた闇に飲まれようとしている


2013年2月17日日曜日

砂漠

ひとつの灯は消えて
五つの水晶に影が落ちた
弾かれたままの黄金の雫が
五線の上を伝っていく
乗り遅れたバスのたてた煙が
咲き誇る花園を
蜃気楼の速度で遠ざけていく
砂漠の中央で倒れた兵士たちは
オアシスの夢を伸ばした指先の間にみる

2013年2月15日金曜日

口実

バレンタインでチョコをもらう。「早く開けて食べなよ」と言われる。包みを開けると「少しもらっていいかな」と言われる。「どうぞどうぞ」と私が言う。愛は口実なのだと思う。幸せそうに君はチョコを食べている。

2013年2月14日木曜日

Valentines Day


There are too many beautiful women all over the world, and it worries about the ability to finish responding to their love by only me.

2013年2月13日水曜日

深夜少しだけ雪の降った朝に

深夜少しだけ雪の降った朝に
なにを愛しているか分かることは
とても恐ろしいこと
それ以外なにも愛してはいないと
分かることなのだから
朝少しだけ残った雪が消えていくように

2013年2月12日火曜日

ウインドブルース

追い風 突風 南風
ビル風 そよ風 春一番

飛んでいくのは夢か希望か
飛んでくるのは煙のように付きまとう現実
自転車こいで今日もゆく

ウインドブルース
ウインドブルース

夕凪 木枯らし 桜まじ
台風 潮風 君の吐息

舞い上がるのは僕の心
上空三千メートル青い地球見下ろして
恋に恋して今日もゆく

ウインドブルース
ウインドブルース

2013年2月11日月曜日

いつか私は

いつか私は愛の詩を書きたいと願う
長く長く短く短く
儚く儚く強く強く
あなたへあなたへ
私へ私へ
未来へ未来へ
過去へ過去へ
いつか私は愛の詩を書きたいと願う

2013年2月7日木曜日

傘花

降りしきる雨が君を悲しませているのなら
私はその傘となりその悲しみをこの身に受けよう
照りつける日差しが君を悩ませているのなら
私はその傘となりその悩みをこの身に受けよう
広がる世界を阻むものが私という傘であるのなら
風に飛ばされてはるか彼方へ飛ばされよう
水平線しか見えない海原へポツリと落ちて
一輪の花となれば渡り鳥のとまる時もありましょう

今はすべての直前

このラインの先には
例えは海、例えば山、例えば君
見知らぬ景色と人々
今までの時間を置き去りにして
ラテン気分あるいはヨーロピアン
どこまでも行けるのさ

このトビラの先には
例えば空、例えば月、例えば君
新しい場所の生きてる世界
今までの色を塗りなおして
アジア気分あるいはウエスタン
何度でもくぐるのさ

今はいつでもすべての直前

どこまでも行けるのさ
何度でもくぐるのさ

今はいつでもすべての直前
自由に選べるすべての直前

2013年2月6日水曜日

浜辺の小石周辺

いつしかそういう日が来るのだろうか、誰もが待ちわびているのは、誰もが望むこと。微かで結びつくことなく生まれなかったもは浜辺に打ち寄せられたひとつの小石。ある夕暮れにぼんやりと海を眺めるものの視界はじめて入り込む。そこでしか現れないと知りながら一番美しいもののように握りしめるのだ。

2013年2月5日火曜日

春の薫り

春の訪れを知らせる風が草原より吹いて、飛ばされた帽子のに優しい花びらの模様をつける。長くなる光の時間に比例して短くなる影がかえって僕らの周遊軌道を近づけていく。わかるはずもなかった霧に包まれたその一筋の小径を今は目を閉じたままでも歩いてゆける。風の薫りをたよりに僕は歩いてゆける。

2013年2月3日日曜日

春のコード

一足早い春の香りの包まれる街では誰に話しかけてもやさしく答えてくれる。見上げた空には筋雲があり、それは強い風が何かを押し出そうとしている印。踏み間違えたコードを懐かしく笑うためには正しいコードを次の春のために探さなくてはならない。ゆるやかな河の流れの行方をみているのは誰?

ホームレスのおじさん

道端でくつろいでいるホームレスのおじさんを、ちらりと見たら、空を指さして「これが東京の空、灰色の空、『東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ』智恵子抄」と言った。私は答えて「高村光太郎!」というと白くはない歯をニカリと出して笑い、ダチョウ倶楽部のポーズを一緒に決めた。

キス

輝く唇の君とのキスはしあわせ
映画の中でも夢の中でも真似事でも

唇、奪われている時
心、奪っている時
君はミューズ

重ねるたび
輝きが世界にはじけて
夜の来るのが遅くなる

唇、奪われている時
心、奪っている時
君はミューズ

キスがほどけて
日が落ちて
世界が恋におちる

めまぐるしい一日

めまぐるしい1日、昼間のことがもう遠い思い出のように感じられ、どこかしっくりと受け取れる場所を探して歩くも、そこにはまた別の物語が用意されている。ないがしろにしたくはないけれどたぶん明日には忘れてしまう。停止、迂回、フィリピン、どんぐり、ボタン、契約、死、予定、建築、地球、偽り

2013年2月1日金曜日

罪の神話

曇りだした水晶の内部に
離れ続ける君が鮮明に浮かぶ
潜んだ私を私は殺さねばならない
美しさに触れて神話のように罪を重ねる

残骸


この冬の寒さを乗り越えられなかったものたちが
見つけてくれと主張しはじめ、私は灯りをかざして這いつくばった。
うるささはあるべきヒズミの中に放り込まれた後もまとわり付き
汚れた雨音の中に身を置くことでしか拭うことは出来なかった
それは、その断片を私自身も抱えていることを知ったから

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす