こころとからだ

こころはなれて
からだもとめ
からだはなれて
こころもとめる

ああ　さよなら

まくら

電車でとなりのひとが
いつしかいねむり
僕の肩はまくら

バスでとなりのひとが
いつしかいねむり
僕の肩はまくら

ガタガタ
ブーブー
うとうと
すやすや

もう春です

僕もいつしかいねむり
となりのきみの肩はまくら

詩のあるところ

近づいたときに
生まれる詩を

はなれて思い出して
記すような詩でなく

そばにいるという
ひとつの愛の詩を

そのぬくもりの中に
みつけたい

カサブランカ

退職する老いた恩師に
体にぴったりカサブランカ

蒸しかえる教室
汗拭くハンカチが止まり
カサブランカが
小さく静かに長く揺れている

逢うこと

あなたが好きで
どうしようもなく
ただ逢いたいだけなのに
映画やお茶や
そんな口実ほんとは嫌だ

晴れたからでいいし
雨降りだからでいいし

いつがいいなんてもの
どうでもよくて
月曜が休みだとか
週末に給料が入るからだとか
そんな口実ほんとは嫌だ

生きているこの瞬間
あなたに逢いたい

いつだって何を差し置いても
あなたに逢いたい

あなたに逢うこと以外
大切なことなど何もないのだから

にわか雨

昨晩降り出したにわか雨
庭の小池に星空浮かべ
新しい朝にほほ笑む

タバコと海

タバコの煙で
消えていった男のすきまを
うめようとしたってだめ

臭いが服と心に
しみついて
どこまでも追いかけてくる

そう

海にでも行くのね
潮風にあたって
少しひりひりするほうが
タバコの煙よりずっといい

詩

ある朝ぽっかり
詩がやってきて
そして去った。