2016年3月29日火曜日

夜明け前

夜が訪ねて
静けさの広がる間に
耳をすませば
心の声が聞こえてくる

騒がしい世界も
今ならもう眠っている

言葉を交わす
言葉に触れて
心に届く

生きとし生けるものよ
闇夜に歌うのだ
朝を待って
朝をたたえる
歌を謳うのだ

忘れてしまった
人の名を僕は
木々の影の中に見つける

ありふれた時の流れの中に
こうして
くさびを投げ込んでは
いつでも帰ってこられるようにと
願うのだ

いつ尽きるかわからない
命の灯を
突然の雷や雨の埋めつくす街の中でも
確かに輝かせ燃やすのだ

終わりを知らない
あふれる限り続けるだけだ

ああ、君は今眠りの中か
どんな夢をみているのだ

僕は君の髪をなぜる
いい香りがする
いい寝息が聞こえる

生きているということに
泣き出しそうなくらい
震えている

僕は地下から水を汲んでは
君に飲ませる

終わりのわからないままに
僕はこうして君と過ごしている

木を植える
花を咲かせる

この紙の上に
かすかではかない心を
文字の器に注そいで現すのだ

花束のように
君に届ける
言葉を贈る

夜の明けるまでには

2016年3月9日水曜日

深夜-夜明け

輝きをかいでむせかえる春

闇夜に浮かぶ物の怪はあいつだ

息を殺して抜けるトンネル

身をかがめて突き抜けるパラレル

互いに狩られるすんでのところで戯れる

それぞれの季節の詩に疼きを憶えながら

やがて太陽の血が流れ世界が新たに染まる

汚れた部屋

畳をかえたばかりの
青い匂いがまだ部屋にある

落ちている毛や埃
僕から出た老廃物がつもる

掃いても、吸っても、つまでんも
僕がいるだけで老廃物がつもる

しんしんと

僕は汚して生きる

卵の部屋

ここは卵の中だ
ここで孵って
地を歩き
空を行く

ここは卵の中だ
入り込んでくるのは
必要な栄養素

窓から眺めて
イマジン
山を登るのを
海を泳ぐのを

ここは卵の中だ
吸い込んで 包まれながら
破る

絶える前に
破る

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を