2012年9月30日日曜日

ごぎゅごぎゅぎゅう

ごぎゅごぎゅぎゅ
ごぎゅごぎゅぎゅう

嵐が来た
道の真ん中に立って
メガネが吹き飛び
帽子が吹き飛び
看板や街灯吹き飛び
頭上に落ち即死するほど
吹き荒れている

ごぎゅごぎゅぎゅ
ごぎゅごぎゅぎゅう

予定は吹き飛び
報われぬ恋も吹き飛び
昨日のまずい詩も吹き飛び
見知らぬ女を抱いて
札束も性欲もテッシュも吹き飛び
地球は軌道をはずれて
太陽系からもれていく

ごぎゅごぎゅぎゅ
ごぎゅごぎゅぎゅう

妄想は吹き飛び
迷いも吹き飛び
愛や詩情がちぎれ飛んで
吹き荒れる嵐と共に消える
マイルスのペットが鳴いて
離れていく満月が覗き
すべてが揺れている

ごぎゅごぎゅぎゅ
ごぎゅごぎゅぎゅぎゅう...







2012年9月29日土曜日

九月のソネット

緑の箱庭に投げられた言葉
椅子に腰掛けた履きなれないパンプス
小高い地点から眺める景色
時系列に並べられた円環

晴れた日のキャッチボール
港町の行き慣れない店
万華鏡を眺めるように鳥をみて
時間軸に記されていくリボン

はるかな地点よりしるし露わに
並行しながらまためぐる時を待つ

2012年9月28日金曜日

手紙書いた

手紙書いた
あて先なくて
気に入った絵はがきに
最近読んだ本のこと書いた
すき間なくなってきてから本当に書きたいこと
好きだってわかって

出したら 
もうあえないかも
わからないから
しばらく 手にしたまま
書きかえてる
いつまでも手にしたまま
書きかえてる
そばにいて 手渡せるときまで
書きかえてる


2012年9月27日木曜日

手紙

手紙をもらった
住所はなくて
新しく暮らす街のこと
心に灯る情熱のこと書いてあった
字を書き慣れたまっすぐな文字
横顔たて髪みてるみたい

返事をすれば
いつまた返ってくるか
わからないから
しばらく手にしたまま
返事考えてる
いつだって手にしたまま 
返事考えてる
そばにいて 話しかけるみたいに 
返事考えてる


2012年9月26日水曜日

2012年9月25日火曜日

愛をつむぐ

手をつなぐ
愛をつむぐ

たとえば井之頭公園
みんなジョギング
朝の木漏れ日
池のほとりで亀が
日向ぼっこ
雨上がり
ぬかるんだ道を
君と歩いた

そばにいれば

手をつなぐ
愛をつむぐ

2012年9月24日月曜日

ああ無常

アクセス気にしてあくせく
お金気にして頭に引き金
数字記して筋を忘れる
ああ無常

2012年9月22日土曜日

そのそんざい

わすれようとして
なげだすくらいなら
かかえてあるけ
おもくなりはじめて
いたくなりはじめて
くるしくなりはじめて
はじめてきづく
はじめていきづく

2012年9月21日金曜日

この聖域を

誰がこわしました
誰がすてました
誰がつくりました
誰がしあげました

この聖域を

鈴虫が鳴いて
カラスが飛んで
蟻がなにも言わず歩いている

誰がこわしました
誰がすてました
誰がつくりました
誰がしあげました

この聖域を

針の振れる
この聖域を

2012年9月20日木曜日

女みたいに

みんなはいなくても
知ったような顔して
女をひけらかしたわ
だまってはいられないから
いつまでも痛みうずくから

女みたいにふるまって
女みたいにあいした
自分の中の少女をこわしたかった

新しい服を買ったの
ウサギみたいにふわふわの
羽毛につつまれるように
息もできないくらい
去っていく行く夏を追いかけた

女みたいにふるまって
女みたいにあいした
自分の中の少女をぬぎすてて

女みたいにふるまって
自分の中の少女をこわしたかった
女みたいにあいした
自分の中の少女をぬぎすてて




2012年9月19日水曜日

夜の海

何度か死のうと思いました
人を信じることができなかった時
思い描いた未来が崩れて行く時
疲れてしまった時
正しさと誤りがよくわからなくなった時
愛と信じたものが
もろくはかないと知った時
何度も何度も繰り返す
打ち寄せる黒い波
向かい合うたび
まだ私はそこにはいないのだと
また私はそちら側にはいないのだと
夜の海に
私はその一部を投げ出して
私はその一部を流し込んで
深くなる闇を
まだそちら側にはいないのだと
いつまでも
眺めている

2012年9月18日火曜日

くしゃみ

たとえばあくびをするように
伝えられるものがあるのかと
そばにいるその時を
言葉で区切るのが怖かった

春咲く花が花粉をとばして
たとえばくしゃみをするように
君に触れて愛があふれて
言葉がなるのをまっている



2012年9月17日月曜日

通り雨


突如雨が降る
駆け出す人々
雨漏れ陽が輝く
蒸し返る街を
なだめるように
降り続く

突如左耳の
聴覚が失わた
血の巡る音が
咀嚼音が
脳に反響する
降り続いている

通り雨のような
心地よい音だけ
おお、ミューズ
突如あらわれる
あなたの声だけ
聞いていたい

2012年9月16日日曜日

誰もが覗き込んで
澄み渡る空を
切り取る

誰もが恐れて
澄み渡る空を
教えている

誰もがうつむいて
澄み渡る空を
探している

端末をはなて
松明を掲げよ

無限の幻想から出て
有限の手触りに奮えよ

澄み渡る空の
風に流れる雲となれ

2012年9月15日土曜日

秋雷

鳴いたあと
空に根を張る
秋雷のように
泣いたあと
我等もまた
生に根を張る
雷(いかづち)であれ

2012年9月14日金曜日

秋の夜の公園

月明かりに照らされて
雲が音も無く流れて
コオロギは穏やかになき
秋風が公園を散歩している

2012年9月13日木曜日

換気扇

回り続ける換気扇
  ぶーうーうー
  ぶーうーうー

耳鳴りをすいこんで
どこかの場所へ
言葉をすいこんで
どこかの時間へ

  ぶーうーうー
  ぶーうーうー

耳鳴りがあらわれて
どこかの場所から
言葉があらわれて
どこかの時間から

  ぶーうーうー
  ぶーうーうー

それは
たとえば
灰色の街と
たとえば
光の街の
境界線

  ぶーうーうー
  ぶーうーうー
  

2012年9月12日水曜日

静止画

静止画の
林を透けて
シルエットが浮かぶ

梢の薫が
イメージを抜けて
鼻腔にただよう

うずくまる鳥が
呼吸のたび
ふくらむ

湿りを帯びた
暁の羽に
ふれる

2012年9月11日火曜日

紙の上

輪の木漏れ陽が
紙の上を流れていく
光もまた
風に流されてゆく

2012年9月10日月曜日

ありつづける

山のふもとに
朱のとりで
人の立ち入らぬよう
たたずむ

見回るとんぼが
すすきを抜けて
秋空をゆく

ありつづける
ありはじめたら
ありつづける

意味がわからなくても
ありはじめたら
溶けだすまで
ありつづける

2012年9月9日日曜日

がまの穂

海の見える高台にも
土砂が押し寄せて
家が傷つき汚れた

人ががまの穂のように
包み込んでいる

玄関

居間
おかって
階段
子供部屋
ベタンダ

海がみえる

変わらぬ風が
どこまでも吹いている




2012年9月8日土曜日

かえろう

かえろう
かえろう
山にかえろう

かえろう
かえろう

河にかえろう

かえろう
かえろう

空にかえろう

かえろう
かえろう

おうちにかえろう

かえろう
かえろう

おうちにかえそう

2012年9月7日金曜日

60

60字にみたない
あなたのことばが
わたしの60兆の細胞にふれる

2012年9月6日木曜日

またひとり

またひとり
またひとり

あらわれて

またひとり
またひとり

さっていく

すすむたび

またひとり
またひとり

2012年9月5日水曜日

2012年9月4日火曜日

雫の部屋で

宇宙をふちどる
細い針金
裸体を覆い
エロースを生み
光源を遮り
叙情をかぐわす

女は木目の隙間より
覗き込み
月面に映る
白くひそめく
少女のアンティックの
影とすれ違う

2012年9月3日月曜日

小径

永遠へ向かう恐怖
無限を捉えようとする虚しさ
生を無性にもとめて
ただ たそがれる

でもまだ
でもまた

ヒリヒリとした小径をゆく
歓喜に似た叫び
叫びに似た歓喜が
打ち捨てられていく

2012年9月2日日曜日

その雨は止むでしょう

その雨は止むでしょう
その風は止むでしょう
軒先で待ちましょう
木の傍らで待ちましょう
止んだなら行きましょう
あなたの元へ行きましょう
道すがらの七色を
花束にして捧げましょう
あなたに会いたくて生きています
あなたに会えて今日も生きています

2012年9月1日土曜日

外で月見上げるとき
蚊が私の頬に止まる
蚊は私の頬を刺して
しばしとどまり
やがて飛び去り
私の頬に跡を残した
私の頬へふれたのは
あなたではなかったか
痒みこそばしく
月明かりにつつまれる



季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす