2014年7月23日水曜日

夢の住人

夢の住人達は
少し浮いたように歩いていて
くしゃみもするし
歯磨きもするけれど
名前が薄れ始めて
夢の部品になっていくのです

部分がほんとうに思え始めると
触れていても届かない
絵画の中の河のように
飛沫まで生き生きとしているのに
合図があるまで流れてゆくのです

僕も少しだけ仲間入りをして
ぼくは僕としてふるまうのだけど
虹のかかるその間だけは
モノリスに閉じ込められたように
どこへも向かうことは出来なかったのです

今も忘れてしまっているだけなのかもしれないと
合図を思い出そうとしているのです



2014年7月22日火曜日

雨が降ると天気予報で聞いた
傘を持って出かけた
でも、雨はぼくが屋根の下にいる間に降って
だから、ぼくは濡れた路上の上を傘を持って歩いた

ビルの間から木漏れ日みたいに陽が差して
ぼくの世界はまっ白になったんだ

それで、ぼくは持っていた傘を開いて
歩いたんだ
そんな必要はなかったけれど
それでも、ぼくは雨も降らないのに傘をさして
歩いたんだ

2014年7月17日木曜日

磁場

どこかへ向かう途中で
乗り過ごして
来る予定ではないところへ
来てしまった
自分を取り巻く景色は
人であろうと音であろうと
つかまった手すりであろうと
どこか全部が
つくりもののように感じて
美しい夕焼けは
誰かが描いたようで
会話の節々が
やはり細かく整えられているように
思えるのだ
私はその水路に流れていくのだけれど
そういった自分に
気の付かないままやりすごして
おくほうが
良いのかもしれない
行く先は見えても
ましてわかっても
いないのだけど
広いところに出るのかもしれないと
思っている
それは私のなかにある
命というものが
こすれることで生まれた
磁場が
なにかに引き付けられた
結果に過ぎないと
わかっているから

2014年7月16日水曜日

言葉が増えすぎた世界で

言葉が
増えすぎた世界で
僕らは誰かを
わかろうとして
立つ場所を失う

言葉が
増えすぎた世界で
僕らは何かを
想おうとして
手を止めてしまう

物語は続いて
言葉は今も増えている

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を