2010年3月21日日曜日

バクの会へ

私が私を嫌いだった頃
それでも受け入れてくれる場所がありました
私が私を少し好きになった頃
それでも変わらぬ場所がありました
小さなそろばん塾から
プレハブ建屋
飲み屋の一角
建物は変わっても
変わらぬ場所がありました

私が私を大切にし始めて
私が私以外の誰かを大切にし始めて
私がその場所へ行かない時間が多くなって
私がいい気になって遊びほうけてほったらかして
私がいい気になってつまずいたとき
それでも"今は元気なの?"と
言葉をくれる場所がありました

私もみんなも髪が薄くなったり白くなったり
話がかみ合わなくなって笑ってるだけになったりでも
全然いたってかまわない
そんなあたたかな場所がありました
私を見つめてくれたあたたかな場所がありました

私も誰かのそんな場所となれたなら
そうすれば なくなっても
失われはしないのです

22年間ありがとうございました

2010年3月20日土曜日

白き灯台
白き波
白き空
白き砂

どこまでも
青き海

暖かき陽と
心慰める潮風
松ぼっくり
記憶の泡波

君の名は海
あの日あった
君の名は海

2010年3月19日金曜日

牛舎利

深夜営業の牛丼屋へ入る
母と同い年くらいのおばちゃんが
目を真っ赤に腫らして配膳している
丑三つ刻

ああ、母さんもう寝てください
僕が働きますから
ああ、母さん頭を下げないでください
僕が謝りますから

僕は砂利をほおばった

2010年3月11日木曜日

ゆりかご

そのゆりかごは
常に動いて突然我等の前に浮上する
善きことも
悪しきことも
美しきことも
醜きことも
それらは想いの振動で変化し流れる

自由があるというのなら
それは
その想像の自由さ
その想像にいのちを与えるのは
沈黙

長き沈黙より生じるものを
詩人は言葉で
絵描きは絵で
音楽家は音で
捉える

ゆりかごがある

2010年3月4日木曜日

スケート

スケート靴紐うまく結べなかったら
誰かに手伝ってもらえばいい

いろんな紐うまく結べなかったら
手伝ってもらえばいい
君を見守る人と

一人では結べない紐もあります
転ぶことも少なくなります
起き上がるのも早くなります

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を