2013年6月30日日曜日

STAGE

動く人々と
見る人々と
その距離の中で
掘り返される
過去あるいは未来

優しい言葉が
届くのではなく
それぞれの記憶のなかで
掘り返される
黄色あるいはレッド・グリーン・・・

繰り返される
STAGEで
風はふき 猫がなき
虫は舞い 窓がゆれる

影が夜と昼の果てを
乗り越える時
観客はすでに別の
STAGEへ
まぎれ込んでいる

流れゆく海流の
その飛沫が空を映して
みつめているように
動くことの出来ない空もまた
その飛沫を包もうとしている

互いに憧れ
その親しみをささやくように

2013年6月28日金曜日

おのみちフルーツポンチ

君にとろけてメロン
はじらいみかん
ももももももも
トロピカルジュースはさんで
君とキラリン

いつだって初恋チェリー
はじけてパイン
ももももももも
トロピカルジュースはさんで
君とランデブー

おのみちフルーツぽぽぽぽポンチ

ももももももも
トロピカルジュース
ももももももも
トロピカルジュース
はさんで君とランデブー

2013年6月27日木曜日

呉線

車窓に広がる白壁の照り返しが
少女の肌を一層白く染めている

2013年6月19日水曜日

嵐の前

嵐の前の風のにおい。
木々がざわめいて。
生ぬるい空気がつつむ。
思春期に似て。

2013年6月16日日曜日

清澄白河庭園
『池ぽちゃ防止』の題
で一句


池ぽちゃで
亀と一緒に
甲羅干し

2013年6月14日金曜日

夏なのにね

どうしたって
青い色の空のした
キープしぎみの 君に
会いたいでしょ
ちょうど
雨なんか降って来たし
夏なのにね
ドレミファソラシ
どうしたって...

どうしたって
青い色の空のした
泣いていた君に
会いたいでしょ
ちょうど雨なんか
降って来たし
夏なのにね
ドレミファソラシ
どうしたって...
どうしたって...


詩:黒川武彦
曲:ヒロナリ

2013年6月8日土曜日

今夜どれだけの美しいものが

今夜どれだけの美しいものが
この世界に溢れているのだろう
だが私の目に映るものは
すべてがくすみ精彩を欠いている
それは私が見てしまったから
この世に現れる美しいものの頂き
流れる風、薫り、景色
そのなかに包まれてしまったから
それはすでに過ぎ去ってしまった
だからこそ美しく想い出される
ああ、君よ 許してくれ
程遠い言葉で 君を詩うのを
ああ、君よ 許してくれ
程遠い言葉で 君を閉じ込めるのを

2013年6月7日金曜日

魂によせ

手をひるがえしながら空を見上げるとき
はためく思いに紛れて雲が通り過ぎた
石柱の傍らで出会う
見知らぬ老女に名のあるように
響き続ける鐘の音の終わらぬうちに
気配は気がつかぬところで
より快適な世界へと変容し続けている
つながれて ながれている ものものたちが
音より 光より はやく
かつて傷つき泣き疲れ眠る夜に
一輪の花を手にして森の小道を歩き
ぜぜらぎの勧めるまま
景色の中で風と共に舞い始め
君の存在に感謝と祝福を捧げはじめる

2013年6月4日火曜日

グラス

並んだふたつのグラス
底にわずかに琥珀が光る
ひとつはやがて片づけられ
もうひとつには新たな時が注がれた

2013年6月3日月曜日

自然の社にて(じねんのやしろにて)


これは途中の話
誰かが気にして
誰かが通り過ぎて
誰かが親しんで生まれた社の途中の話

再び誰かが通り過ぎ
再び誰かが親しむならば
再び生まれる社の途中の話

風の中に通り過ぎた
蛙の声の中に通り過ぎた
東北地方に春の日数日だけ吹くという風「やませ」の中で
僕らは少し話して
こうして少し話している
途中でかけた社の話を



それは
ちちちち
小さな花

組み上げられた社に
幾千、幾万の 

てててて
て 

ゆゆゆゆ


だだだだ
雨だ



どちらがさきか
かえるのこえか
ほしのこえ 

どちらがさきか
ほしのゆらぎ
かぜのゆくえ

どちらがさきか
そらのざわめき
とちのいのり

どちらがさきか
ひとのいとなみ
ひとのはじまり
はなのはじまり
ときのはじまり

どちらがさきか
かえるのなきごえ
ひとのうぶごえ



青いそらに緑が手を広げて伸びる
星をつかもうと
どこまでもどこまでも
手を広げて伸びていく

彼は
いのるように撮影しています

彼は
いのるように時間をつかんでいます

だれかがあるいた
だれもがあるいた
だれかとあるいた

参道

大切なところを知っていること
大切なところを持っていること

どこですかあなたの社は
みんな知っているでしょう
あるのを知っているでしょう

僕らはたたずんで
僕らはそれぞれのやり方で親しんだ

だれかがあるいた
だれもがあるいた
だれかとあるいた 

参道 



「相馬盆唄」詞・曲:作者不詳

ハアアーアイョー 今年ゃ豊年だよ
穂に穂が咲いてよヨー
ハアアー 道の小草にも
ヤレサナ 米がなるヨ

ハアアーアイョー 道の小草に
米がなるときはヨー
ハアアー 山の木萱に
ヤレサナ 米がなるヨ

ハアアーアイョー 揃った揃ったよ
踊り子が揃ったヨー
ハアアー 稲の出穂より
ヤレサナ よく揃ったヨ 

ハアアーアイョー 踊り踊るなら
三十が盛りヨー
ハアアー 三十越えれば
ヤレサナ 子が踊るよヨ

ハアアーアイョー 踊り輪になる
八重の輪が出来たヨー
ハアアー 踊り廻れよ
ヤレサナ 夜明けまでヨ



いつくるかわからない
春の土の薫りの中に
潮の風の薫りの中に
まぎれているものがある 

汗の臭いや足の裏の臭いが
愛おしくなるほど
人の心のつくりだした
無臭がまぎれている

行く先表示のないバスが
Jビレッジから出ていく
夕暮れの中最前線へ
僕の知らない名前のある人たちの乗せて
Jビレッジから出ていく

汚れた土が削りだされ
土嚢の山が築かれていく 

誰もいなくなった街に土嚢があふれ
土嚢の街が築かれていく

何ものも触れられない土嚢がとどまり
土嚢の社が築かれていく 



静かなところ

空き地だったところは
虫けらをのみこんで
工場になりました

工場だったところは
貧乏人をのみこんで
パチンコ屋になりました

パチンコ屋だったところは
働かなかった人をのみこんで
宗教施設になりました

宗教施設だったところは
争う人をのみこんで
基地になりました

基地だったところは
すべての人をのみこんで
墓地になりました

墓地だったところは
季節をのみこんで
空き地になりました

人はいません
静かなところです



しずる夜に訪ねてくる
通過したわずかなさざなみ
張り詰めた旋律に
フクロウの詩がこだまする

田園の案山子が
敷き詰められた星々を見上げ
風車が明日の風を受けて
金色の小麦をひいている

灯る火はゆらめきの狭間に
遠くから届いた長い手紙を映す
人々は開封された懐かしい器に
天からの光を注ぎ飲み干す

無言のままはぐれた影たちを
見つけようとするかのように

息が聞こえる

息が聞こえる
沈黙がある
息が聞こえる
静寂がある
息が聞こえる

残された社には風の音しか聞こえない



どこから届いているのでしょう
どこから響いているのでしょう
どこから流れてくるのでしょう

どこまで届いていくのでしょう
どこまで響いていくのでしょう
どこまで流れていくのでしょう

私たちは落ちたひとしずく
私たちは生えたひとしずく
私たちは浮かんだひとしずく

そこへここへと溶け込むひとしずく

10

思うにままならないことを 
思い煩い時間ばかりが過ぎてゆく 

お酒を飲んで、散歩して、本を読んで、映画観て
仕事して、誰かと話してても舞い降りる
忘れてしまえばいいのにと言われても
感じた気持ちさえ捨ててしまうようで

月日がたてば姿が変わって
うまく扱えるようになるのでしょうか
風のない静かな晩には
やわらかな歌が聞きたくなる

戻りたいとも忘れたいとも思わない
風のない静かな晩には
やわらかな声が聞きたくなる

やわらかなあなたの声が聞きたくなる

11

これは途中の話
誰かが気にして
誰かが通り過ぎて
誰かが親しんで生まれた社の途中の話

再び誰かが通り過ぎ
再び誰かが親しむならば
再び生まれる社の途中の話

風の中に通り過ぎた
蛙の声の中に通り過ぎた
東北地方に春の日数日だけ吹くという風「やませ」の中で

僕らは少し話して
こうして少し話している
途中でかけた社の話を

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を