2008年6月29日日曜日

一番いい

水がいいのです
飲むのは
水が一番いいのです
体に

愛がいいのです
もらうのは
愛が一番いいのです
心に

風がいいのです
伝えるのには
風が一番いいのです
あなたに
想いを

2008年6月28日土曜日

給料日

昨日給料日だったのに
もう財布が空っぽだ
弁天様へお参りでもして帰ろうか
でも 供えのひとつもしなけりゃな

女だから
甘いもの 光り物
愛の言葉もいいかもしれない
でも やっぱ金だよな

ああ
飯を食えば金がいる
女を抱けば金がいる
神様拝むのも金がいる

そのうち息をするのも
金がいるようになるのだろうか

そのうち糞をするのも
金がいるようになるのだろうか

そのうち人を愛するのも
金がいるようになるのだろうか

心地よい風がこんなにも
木々を揺らしているというのに

2008年6月27日金曜日

供詩

なにかの支えになるような
友が自殺した女に寄り添える
仕事で人を裏切った男に届く
そんな詩を

空へもぐり
緑を浴び
水を聴き
考えたのだが

ちっぽけな私からは
出てこない
ついにはこうして
まず文字を連ねて・・・

過去は戻らぬのだと
取り返しがつかぬのだと
はっきりわかっているにもかかわらず
ときにぼんやりとしてしまう

未来は 明日は
決まってなどないのだと
はっきりわかっているにもかかわらず
ときに知ったように思ってしまう

祈りがいらだちをしずめ
正しき草の道を示す
与えられた手を持って分け進む
正しき草の創造の道を指し示すのだ

その手の痛みを喜びとし
その体の臭気を慰めとし
その心の傷を誇りをせよ
恐れず生きるのだ

地球のように

2008年6月26日木曜日

蝶が飛んでいる

飛べるのになんとはかない

手のひらで

いとも簡単に消えていく

世界の秩序に逆らわず
飛べるように生まれてきた蝶は

舞い飛ぶ 先にも 後にも
純粋な軌跡が描かれていく


僕ら人間の
飛べもせず歩いた歴史の
たどたどしさよ

蝶よ おまえには
神の声が聞こえるか

2008年6月25日水曜日

時の芳香~友へ~

洗濯物の揺れる影が

風とともに部屋に入り込み

疲れ横たえた君の体を

猫がじゃれるようにゆする


寝息を立てる君の顔に浮かぶ

悲しみと喜びの年輪


この部屋に満ちるのは

君と出会ってから今まで積み重ねた

すばらしき時の芳香

2008年6月24日火曜日

メール

深夜、あなたからのメッセージ。

短い感謝の文が心を揺さぶる。

愛する人からの言葉ほど心強くするものはない。

僕があなたを愛するように

あなたも誰を愛しているのですね。

あなたの幸せを願っています。

言葉をありがとう。

2008年6月22日日曜日

愛について

 
 
 愛は永遠と君は言う
 愛はまやかしと君は言う
 愛は未来と君は言う

 愛は
 日々汚れ
 汚れを落とし
 しわをのばして
 きれいにたたむ
 そして風の強い日つつんでくれる

 3丁目のクリーニング屋の娘の
 洗ったシャツに他ならない

2008年6月17日火曜日

月夜

月夜の晩は
ふらりと歩いてみたくなるのです
どこまでも月がいますから

2008年6月15日日曜日

幻燈

夏の夜空の下の幻燈
いつきたのか
いついなくなったのか
都会の夜空の幻燈
見上げれば終宴
うつむけば始まりの羽がカサカサと
届かぬ果てに消えてゆく

2008年6月13日金曜日

未来

あなたの未来は
あなたのためにある
僕の未来が
僕のためにあるように

あなたが僕の未来を愛してくれるように
僕はあなたの未来を愛する
あなたはあなたの未来を
僕は僕の未来を愛するように

2008年6月12日木曜日

日付

日付が365日しかないから
何年たとうが忘れるなよといわんばかりに
その日がくる

誕生日や記念日など
心躍る日ばかりだけでは
あるまい

生きていれば
悲しく途方にくれ
後悔で押しつぶされそうな日もある

でも、すべては過ぎたこと
同じ日は二度と繰り返さない
ただ新しい今を精一杯生きるのだ

2008年6月11日水曜日

労働

薄暗い地下の部屋に
同じ服の同じ目をした人がいる
自由を金と引き換えて今日を生きる
夢を保証と引き換えて今日を生きる
大勢いるのに孤独な人がいる

俺も大勢の中で同じ服を着て
同じ目になるだ明るい明日のために

そうしなければ
夢も自由もない。生きてもいけない。
映画を見ることも女を抱くこともない。

この
金に征服されたまばゆい世界と、
おびえきった俺の心では!

ファック!
叫ばせてくれ
ファック!

2008年6月10日火曜日

あなたが好きだというから
雨音楽し
傘の花美し
麗しあなたが
好きだというから
雨の日が待ち遠しい

2008年6月8日日曜日

なぜ

愛する人の一言 たった一言は
なぜこんなにも私の心を暖かくするのか

愛する人の一言 たった一言は
なぜこんなにも世界を明るくするのか

ああ、
私はどうしようもなく とめどもなく
人を愛してしまったのだ

ああ、
なぜこんなにも愛してしまったのか
私を愛さぬ人を

祝詞4

呼応し細分化された球形から
放射された陰影が開示する
予告めいた導火線の滴りは
ただ装丁の陰部に終息しゆく

2008年6月6日金曜日

祝詞3

それは瞬間の旋律が世界を包括するところから隆起しはじめ
状況を永続的に開放し濁流とともに
研磨された無限の静寂の塊を
感受し携え咆哮するというなのだ。

父へ

臭いが似てきたのは人を愛したからでしょうか?とうさん。

2008年6月5日木曜日

祝詞2

幽玄の彼方より迷いくる
甲殻の羽音の明滅した希望が
前兆なく抱擁し
牛革の伝統を放棄し忘却するのだ

犠牲の微笑が就寝し
静寂の上蓋が別離を興す
しかし然として雪崩を踏みしめるのは
感得しているからなのだ残忍な歓喜を

眼球の行方の砂塵を行く呼吸
覚者の表層を3番手の端にて掘る
警笛の椅子、いや傘、いや、石が
蛾の訓戒を

2008年6月4日水曜日

祝詞

紫の月光が揺らめく海面を燃やし
突き刺さる振動が血液を沸き立たせ
祈りをささげられたマリア像の瞳に反射する
残像を払拭しわが身へ近寄せる

裂けた海溝の壁面に刻まれた
生命の慟哭に彩られ
混迷の果てより立ち上る
無数の感触と痙攣し続ける指先

漂流する鼓膜に届く
摩擦の悲鳴と快楽の解釈
掌握された星のかけらの
閃光を受け入れ噴出する歯車

虚構の空に呪われた旋律
蜘蛛の露の疾走と失踪
仕掛けの人形の手のひらで
転がる金色玉や勾玉

2008年6月3日火曜日

想いが微笑みを殺す

いつでも いつの時でも
あの子のそばにいたいけど
冷たい態度に心が悲鳴を上げている
忘れてしまえよと風が騒ぐけれど
悲しいくらい思い出してしまうんだ

始めて会った日
あんなにもやさしく微笑んでくれたのに

その微笑みを奪ったのは
僕の想い、好きだという想い

証明

よろこびも
かなしみも
生きていることの証明

起きていることも
寝ていることも
生きていることの証明

愛することも
憎しむことも
生きていることの証明

なにを拒むことがあるだろうか
なにを戸惑うことがあるのだろうか

引き受けてしまおう
身に起こるすべてのことを
それが生きていることの証明
なのだから

2008年6月2日月曜日

旅立つ友に捧ぐ

大地に付き立てた足と
地平線のへ向けた目を信じ
大空からの祝福を受け
心惹かれるままに
旅せよ男子

2008年6月1日日曜日

星野道夫氏に捧ぐ

あなたのやさしさと暖かさは
死してなお
傍らにいるかのように
僕らに安ぎをあたえてくれる

極北の岩場に咲く
忘れな草を思い出せば
傍らにいるかのように
僕らに愛の意味を教えてくれる

限りなくそっと

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を