2013年10月31日木曜日

遠い島

風が吹いて
雲が流れ
影が走る

猫が歩いて
鳥が飛んで
魚が泳ぐ

ハイビスカスが揺れて
芝生が香り
木々が歌う

波が繰り返し
山が佇み
空が息をする

また

風が吹いて・・・

日常

いずれ世界は可愛さの前にひれ伏すだろう。
やがて世界は美しさの中に孕まれるだろう。

2013年10月24日木曜日

2013年10月21日月曜日

楽園

腹を減らしながら道をゆく
始まりがどこであったかはもうぼんやりして
足をむしり取ってほおばりながら
踏みつけにしてきた小石や土が
もうぜんと主張し始め突刺しまとわりつく
行こうとする僕をとどめて
空から落ちてくる太陽に焼き尽くされ
I am
I am
歩かなくては死ぬ
進まなくては死ぬ
飢えを満たすのは肉しかない
肉を喰らうまでは進むしかないガイコツ
肉を喰らうとき
動かず誰かがくらいに来るのを待つのだ
ああ、それにしてもまだ風は吹かないのか
風さえ吹けば少しは思い出をたどれるというのに
北の山脈
西の夕陽
東の岸辺
南の島々
トレーラー、ガスタンク、ブォブォ
目指しているのは楽園
人と離れ故郷と離れ
鋼鉄の創造物に追われながら
僕自身を食い破りながら進む
カバンの中に今朝、安宿でくすねた
干からびたパン 
そこに含まれる


今はただ行かなくてはならない
道を行かなくてはならない
ガイコツになって骨、しゃぶりながら

2013年10月16日水曜日

ドロップ

ドロップなめて
公園をあるく
象のすべりだい
ねこのブランコ
キツネがとびだして
そらに飛んでいく

美人モンスター

ホテルいこっか
抱かれてもいいなーしよしよしよ
僕は攻略されている

これ食べなよ
はいプレゼントーしよしよしよ
忍び寄る圧力

だれかが好きなの
私さみしいなーしよしよしよ
美人モンスター

コレクションして
食いやぶっては
渡り歩く

美人の姿をした熱量に
僕の愛が死んでゆく
美人モンスターーしよしよしよ

美人は好きだが
モンスターはにがて

女は好きだが
モンスターはにがて

君は好きだが
モンスターはにがて

もう少しおとなしくーよしよしよし
美人モンスターーよしよしよしよし




たんぽぽレジスタンス

同じ詩をうたい続けて
世界に蓄積させていくのだ
やさしく陽気な生きた愛の言葉

命を割いて紡いでゆく
宿命へのレジスタンス
運命からのレコンキスタ

言葉の水滴が降り注ぐ限り
どこへでも水脈は現れる

コンクリの街に閉じ込められながら
根を張るたんぽぽのように
繰り返し繰り返し求めてゆく

意思のゆくえに詩が咲く
自己へのレジスタンス
均一からのレコンキスタ

やがて詩は綿毛をまとい飛んでゆく
そして詩が新たな心に落ちる

朽ちることなく


2013年10月7日月曜日

親父さんのイーゼル

すべての色と形を受け止める用意を整えて
斜め上の天井を見上げている

根を降ろす場所を知ってか知らずか
落ち着き払った、たたずまい
かつて木であった記憶を向き合うものにも流し込む

自らの役目を知り
使いやすいように穴を開け
頑丈に足組みしながら
黙して出しゃばらず
必要ないときはたたまれ影にて待つ

街中の喧騒であろうとも
嵐の吹き荒れる断崖であろうも
哀しみにくれる闇夜であろうとも
不動のイーゼル

であるからして
向かう精神は自由でいられる

世界はまた確かな柱を得た
とんぼが懐かしくてとどまりさえする

2013年10月4日金曜日

高円寺ららばい

誰かと通り過ぎる毎日
心にだけ残る思い出
夢のまたたきの中で色づいてゆく

商店街の店先で売っていた
コロッケをかじりながら
見上げた空に浮かぶ君の微笑み

喜びも悲しみも飲み込んで
夜を招いて沈んでゆく太陽

高円寺ららばい
明日も朝が来るのを知っているから

高円寺ららばい
陽気な音だけ抱きしめて


夜空に広がる星のように
どれも同じに見える光の中に
君のためにだけ輝く星がある

この世界にあふれる人のように
誰も無関係に見える姿の中に
君の到着を待つ眼差しがある

目を閉じるから君を思い出せるように
闇夜が来るから誰かを愛せるように

高円寺ららばい
その星を探して

高円寺ららばい
好きな歌を口づさみながら


愛してるの言葉が
白々しく聞こえるのなら
さようならと言えばいいさ

生きているこの街でならば
聞こえるはずだよ心の音が
今夜も君のいる場所で


高円寺ららばい
誰もが寝静まるまで

高円寺ららばい
我らの夜に

高円寺ららばい
宴の用意は整った!
さあ乾杯!

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす