2013年5月23日木曜日

初夏

草原に風がたずねて
麦わら帽子が揺れる
郵便配達の自転車が
河面に流れて
夕暮れの雲に
燕が影を落として
天の川が覗く頃
祭りの焚き火が
行きかう娘らの頬を火照らす


2013年5月18日土曜日

ゴドーを待ちながら、ゴドーは行く

笑い声が遠くで聞こえる
姿が見えないとき声は大きく
姿を見ると近いはずなのに何も聞こえない
現れた言葉の意味が本当なのかは知らない
でも現れたことは真実で
音も響きもどこかへ行ってしまったけれど
意味がほんとうであことを確かめるために
誰もがそうしているように私は待つ
そして意味がほんとうであるために
誰もがそうしているように私は行く

2013年5月17日金曜日

ひとしずく

どこから届いているのでしょう
どこから響いているのでしょう
どこから流れてくるのでしょう

どこまで届いていくのでしょう
どこまで響いていくのでしょう
どこまで流れていくのでしょう

私たちは落ちたひとしずく
私たちは生えたひとしずく
私たちは浮かんだひとしずく

そこへここへと溶け込むひとしずく



街かどで詩を売る

街がどで詩を売る
人々が通り過ぎる
見ることもしない
買うこともしない
人々が通り過ぎる
そして詩が読まれている

花は咲いている

花は咲いている
動くことは出来ないけれど
その本性に導かれ
花は咲いている
白 赤 黄色 紫 橙 緑
自分を見ることは出来ないけれど
花はただ咲いている
そして枯れて還っていく

息が聞こえる

息が聞こえる
沈黙がある
息が聞こえる
静寂がある
息が聞こえる

2013年5月16日木曜日

柔らかな肌は

柔らかな肌は
どこまでも優しい磁石のように
触れられることを拒んで
首筋の長い影に隠して
明け方の寝息に吸い込まれた

しとりとしたあなたの汗だけが
いまでもこの部屋に漂い
泣き出そうなくらい
遠い街の花園で目覚める私に
触れてくる

2013年5月6日月曜日

命よりて



生命が関わり産声は生まれ

大気を吸い込み混沌を彩る

新しいビートを

すませて

世界が聴き始めている

中央線

胸をみたしたぬくみ
中央線が運んでいく




2013年5月2日木曜日

アイアンメイデン

人を信じたいのだけど
信じる事ができない自分がいて
その訳は自分が今まで受け取ったものをすっかり忘れて
気持ちよくいたいからなのだ
そういった気持ちを鏡に映して
まんじりとみやると
清廉という名のアイアンメイデンに覆われるのを感じる

私は静かに狂いたい

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を