2012年1月31日火曜日

偉大なる枝へのオード

喜びの日も 悲しみの日も
たくましく たちゆく
偉大なる枝よ
幹である私は敬礼する

偉大なる枝よ
なぜ いま
たくましく たちゆく

偉大なる枝よ
その美しき大地を指し示せ


偉大なる枝よ
その慈しき大地を指し示せ

偉大なる枝よ
その麗しく輝く大地を指し示せ

2012年1月30日月曜日

愛の仕草

僕のこと好きなら 君のやり方でいい 教えてほしい 知らせてほしい 僕は見つけられる 君の愛の仕草

2012年1月29日日曜日

人は

人は人を見るとき
都合のいいように見ます

人は人に見せるとき
都合のいいように見せます

その差が悲しみや時に
憎しみを生みます

その差が笑いや時に
新しい自分を生みます

生まれてくるものの差は

人に満たしてもらおうと
するところから生まれます

人を満たそうと
するところから生まれます

生まれたら死ねばいい
死んだら生まれればいい

2012年1月28日土曜日

忘れ物

君のこと考えてたらマフラー忘れた/ 君のこと考えてたらタバコ忘れた/ 君のこと考えてたら帽子忘れた/ 君のこと考えてたらコート忘れた/ 君のこと考えてたら財布忘れた/ 君のこと考えてたら何忘れたか忘れた/ 君もよく何か忘れたようにしてる/ 誰のこと考えてましたかな

2012年1月27日金曜日

どこかで

どこかで流れて
どこかで飾られて
どこかで食べられて

あなたがぼくをみつけるとき
ぼくはあなたをみつけている

2012年1月26日木曜日

雪だるま

雪の降った次の日には
おっきいの ちっちゃいの
しかくいの まるいの さんかくの
枝、投げ出して
空き缶、転がして 
空、見てる
朝、日差しの中でまぶしそうに
空にかえってく

2012年1月25日水曜日

飾られない花瓶

もらった一輪挿し
何さしたらいいかわからなくて
そのまま

直径2センチの黒い穴
水入れてみる
陽にあててみる
隠してみる
拭いてみる
色かえてみる

すこし割ってみる
水がしみでて
敷いてた布、ぬれた

わからなくて
すこし泣いたら
ぼんやりとして

もう花はさしてあったんだと
気が付いた

2012年1月24日火曜日

蓮の花

満員電車の中で
初夏に咲く蓮の花を思い出している

皿を洗う泡の中で
美しい詩について考えている

眠りの夢の中で
新しい世界を熟成させている

すべてはパチリと咲く

2012年1月23日月曜日

肉体へのオード

裸になった時
私はふとこみ上げた

顔よ ありがとう 人に微笑みをあげることができた
目よ ありがとう 美しい世界を見ることができた
鼻よ ありがとう いい匂いを嗅ぐことができた
耳よ ありがとう 素敵な言葉を聴くことができた
口よ ありがとう ご飯をしっかり食べることができた
喉よ ありがとう 詩を朗読することができた
首よ ありがとう まっすぐ歩くことができた
腕よ ありがとう いろんなものを運ぶことができた
手よ ありがとう がっしり握手をすることができた
指よ ありがとう こうして詩を書くことができた
胴体よ ありがとう 抱きしめてもらうことができた
ちんちんよ ありがとう 古い水を排泄することができた
足よ ありがとう 行きたいところへ行きことができた

それぞれの部位を丁寧にさわりながら
私は礼をのべた

命よ ありがとう 今日という日を生きることができた

2012年1月22日日曜日

この電車は俺たちの乗る電車じゃない

ライブ終わりの
高円寺への帰り道
総武線は満員電車
並ぶ人たちが全員乗るには
もう3つくらい車両が必要
電車の中には
もうプール4つくらい空気が必要

行き場所求めて
行き場のない車両に乗り込む人々
人を押しのけて
人を傷つけて
行き場所求めて
息のできない車両に乗り込む人々

詩人はつぶやいた
この電車は俺たちの乗る電車じゃない

ガラス越しに顔のつぶれた
ガラス越しに体のつぶれた
ガラス越しに心のつぶれた

それでも車両の中にいることに
安堵し慣れた人々を見送りながら
詩人はしばしたたずみ
今朝見た道端の猫を思い出していた

詩人は次の電車に   乗り込んだ





2012年1月21日土曜日

お金

おそろしいことです
お金がないというのは
会えず行けず語れず
美しい風景のなかにあって
お金のことばかり考えているのです

おそろしいことです
お金がないというのは
想い出や目標や時間
ひどい時には意欲を 売り払わねばなりません
たくさんのお金のなかにあって
何がしたかったのか
ぼんやりとしているのです

おそろしいことです
お金がないというのは
本物も偽物もわかっているのに
嘘を信じて
そういうふうに振舞わなくてはなりません

ほがらかな陽射しの中で
つらく寒い夜ですねと言わなくてはならないのです

そんなことないよと笑う人は
おそろしい人です

2012年1月20日金曜日

み雪よ
もっとふれ
沁みて
思い出すまで

み詩よ
もっとふれ
積り
姿あらわすまで

名もなきひとひら
いのちの記憶

2012年1月19日木曜日

手紙

晴れた日の朝
太陽の光を見るたび
空に描かれた
雲、神様の落書き見るたび
無性に君に手紙を書きたくなるよ

トタン屋根に響いて
落ちる雨音聞くたび
地面に溶けてく
水、神様の寝息聞くたび
無性に君の声を聞きたくなるよ

手紙書いているとき
声を聞いているとき
指や耳と息をしている
体、神様の創った心が
無性に君に会いたいと騒いでいるよ



2012年1月18日水曜日

大地に


2011年3月11日
北の大地が揺れて
おおくの灯が飲み込まれ
不安が漏れ出した

我々は北へと向かった
線路沿いのプレハブから
闇は覆いかぶさり睨んでいたが
我々の道を照らす光は
一切ひるまなかった

その青年は西から訪れ
何かの助けとなる
何かをつなぐ
ひとくさりとなることを知って
ガレクシャの山を通り過ぎ
重石のような泥のまとわりつく堤防を
我々と行きかいながら
土に触れ
土を食んだ

鋼鉄の枠組み

スーパーファミコンのコントローラー

赤い靴

繋がれたままの家畜

空に伸びる松

たちよったラーメン屋の親父は
煮える釜を見つめていた
湯気が昇っていた

不安を含んだ雨が
ボンネットの上を歩き
ガイガカウンターの針が振れる
突き抜けてくる不安は一切見えず
突き抜けていった恐れは一切匂わず
ただ我々を
(受けたものとしての
つくりだしたものとしての
誰もがそうであるところの)
毒虫に変えた
毒虫たちは不安を飲み
毒虫たちは恐れを食べ
毒虫たちは放尿し
不安の星で叫んだ
夜明けをまちながら

―この星で―

俺が人類の敵なら
することは決まっている

俺が人類の味方なら
することは決まっている

俺は人類だから
沈黙はしない
俺は愛する人と生きたいから
沈黙はしない


曇りガラスの先が青々と染まり
毒虫たちは東へと
不安の海へと向かった
まだ足りぬとばかりに
不安の海はうねり
うなり
大地を食べていた

毒虫たちは問いを投げかけ
沖へ沖へとすすんだ
不安の海は
はじき
もみくだし
さみしげに毒虫たちを
吐き出した
何の問いにも答えぬままに
しかし、その時、
毒虫と不安の海は
どこまでも対等だった

夕日の中で語らぬまま毒虫たちは
ガレクシャの山の一部を
見知らぬ人の
生きてきた記憶をひろいあげ
こびりついた泥をふいた

卒業アルバム

結婚式の領収書

子供らの内緒の手紙

うまらぬ手帳

その男は不安の漏れ出した中心からきた
電柱に奇妙な果実のなるのをみた
と言った
老人たちが血を吐き出すのをみた
と言った
その男に連れられて橋のたもとに行った

その男は川の先を見ていた
この季節遡上する鮭をみせようとした
川はまだ静かだった

しかしその時、毒虫たちは
一語一語、語られた言の葉に身を包み
一枚一枚、拾われた言の葉に身を包み
さなぎとなった

まばゆい月が雲の割れ目から
生れ孵る舞台をのぞいていた

果実の泡 

絵描きの夢 

紫の煙 

生きている愛する者の声

ー皿ー

さらわれた皿 さらに サラダ
われた皿 なおさら ささみ
まっさらな皿 いまさら さらばい



毒虫たちの体が割れ
蝶たちが立ち上がり
光の中を舞った
背中には強い羽が広がっていた

蝶たちは象徴をつかむべく
太古より流れる
川へと入りこみ
たたずみ晒して交わる

揺れるススキをかきあげ
輝くアユを眺め
跳ねるしぶきを撒きちらし
あたたかな風を嗅ぐ
赤く染まる山に触れ
やわらかな岩を吸い
萌える命はとめどなくあふれ
一切の不安にひるまなかった

つめたさもはげしさも
はしゃぎながら
蝶たちは交わる 
大地ははしゃいだ
蝶たちははしゃいだ

一切の邪気なしに

港で待ちわびるカモメが鳴いている
港で待ちわびるカモメが舞っている
ニーニーニー

轟が響く
轟が
この大地へ突っ込んでくる
この季節遡上する鮭に伴ない轟が響く
鮭はこの大地に戻ってきた
豊穣を立ち上げるために
水をはね身をよじりながら

蝶たちは咀嚼され鮭となり
共に轟を抱え大地へ突っ込む
流れを超えて
悠久の中に突っ込んでいった

大地は轟を聴いた
海は轟を聴いた
我々は轟を聴いた

それは一切ひるまず
それは一切消えることはなかった

我々は全く新しい目覚めの中に息をしていた
我々は毒虫であったことを引き受けて
我々は蝶であったことを引き受けて
我々は鮭であったことを引き受けて
息をしていた
深く深く
息をしていた

我々は南へと向かった
川沿いの駐車場から
現実は覆いかぶさり睨んでいたが
我々の中に響く轟は
一切ひるまなかった

我々の中に立ち上げられた萌芽は
朝陽に萌えていた

2012年1月17日火曜日

お好み焼き

銀色のボールに入ってきたネタ
かき混ぜて鉄板に流して
キツネ色に焼きあがるのを
ビール飲みながら君が見てた

フライ返しでひっくり返して
ソース 青のり 鰹節
マヨネーズかける?うん、少し
ビール飲みながら僕が見てた

驚くくらいペロリとごはん食べる君

君の好きなエスニック カレー
僕の好きなイタリアン スパゲッティー
和洋中 すぺいんとるこえとせとら
お好み焼き

僕とごはん食べてください
これからもずっと
僕とごはん食べてください

2012年1月16日月曜日

ザネリ

カンパネルラに命を救われたザネリは
あのあとどうしたろう 

子供の頃
ジョバンニやカンパネルラにあこがれ
牧師や鳥を取る男のように生きたかった

 大人になって
僕はザネリなのかもしれないと思った 

土を見つめる賢治の肖像写真
あのとき賢治は
ザネリ思っていたのかもしれない

ザネリはどうしたろう
あのあとザネリはどうしたろう

2012年1月15日日曜日

私の好きだった人

私の好きだった人が
インターネットの向こう側で
裸になって
知らぬ男の手の中で
ぬれて もだえている

私が触れたかった
その唇
その肌
その髪
その乳房
そのヴァギナ

四角く切り取られた
心と体が粒子となり点灯する

私はブラウン管に触れた
時すらも砕かれて
今の私から 過去の好きだった人に
見つめるカメラを通して 
触れようとした
その知らない男より
やさしくあなたに触れたかった

私はもう私の好きだった人が
愛しても愛されてもいない
その知らない男に触れられるのを
見ていたくはなかった
私はインターネットを閉じた

私は痛みを感じるまで射精した

2012年1月14日土曜日

この星で

俺が人類の敵なら
攻撃するところは決まっている
そこを破壊すれば
人類は死に絶える

俺が人類の味方なら
全力で叫ぶことは決まっている
それがなくなれば
人類は生き残る

俺は人類だから
沈黙はしない
俺は愛する人と生きたいから
沈黙はしない

原発はいらない
武器はいらない
差別はいらない
憎しみはいらない
幻想はいらない

乗り越えよう
乗り越えよう
乗り越えよう


2012年1月13日金曜日

青空の下で

駅前通り/荷物を背負って抱えて/泣き出しそうに走る小学生/遅刻して友達に置いていかれたのか/追われてその小さな体を走らせている/晴れ渡る青空の下で

2012年1月12日木曜日

冬のピクニック

晴れた日/バスケットにハムとチーズ/パンとサラダつめて/ビールとワイン持って/カラフルなテーブルクロス公園のベンチに敷いて/陽気な詩を捧げて/愛する人とおひさまに乾杯/そういう日がたくさん/サンサン降りつもれば/人生はきっとしあわせ/

2012年1月11日水曜日

やせて


7キロもの脂肪はいったい何処に行ったのか
それは生きて行動したエネルギーとなった
僕はそれを蓄えていた
蓄えて蓄えて生きることを困難にしていた
蓄えるということに喜びをおぼえて
それをなにに使うのでもなくただっ持っていた
まだぼくは持っている
必要なものは与えられる
恐れることはないのだ
持っているものを使い 僕は明日も生きるのだ
           僕は明日も行くのだ

2012年1月10日火曜日

・・・のように

日が暮れてから起きだした
昼間君が何をしていたか知らない
月の中歩いていた
君も見上げていたのか知らない

眠っているときも
起きているときも
息するように君のこと想ってる

互いに知らない時間が
知らない場所で流れてる

知らない君に触れるように
僕は風を確かめる

知らない時間埋めるように
僕は文字をつらねていく

2012年1月9日月曜日

秘密

みんなといる時は苗字で呼ぶの 誰もいない時は名前で呼ぶの 夢の中では呼び合うこともないの 友達にも親にも内緒なの

2012年1月8日日曜日

D-51の月


もう行きなよと君は言った
次の駅 次のベルで

君は君の列車
僕は僕の列車へ

時を忘れて語りあった
慈しい日々の終着駅

離れてゆくレール
それぞれのレールへ

車窓に月 D-51照らす月
約束の街に昇る月

君は君の列車
僕は僕の列車へ
離れてゆくレール
それぞれのレールへ

車窓に月 D-51照らす月
約束の時に昇る月


2012年1月7日土曜日

冬の太陽はそれでもやさしく命を照らす

物憂げに肩を窄めて歩く人々
眩しい太陽はその影だけを立ち上らせて
つかむことの出来ない幻影を見せる

カーテンをくぐるように
太陽へと向かいながら
辿りつくことのない楽園を夢みた

独楽のように運命を回し続けては
止むことのない行為に没頭する

断ち切られた静かなる情熱は
既に霧散し
いく世代かののちに
再び降り注ぐのを待ちわびるのみ

鳴ることのないオルガンを弾きながら
世界の片隅へと囚われてゆくカナリア

戸を開け窓を開け
風に運ばれてくる微かな物音
一体何者なのか誰も知らない

冬の太陽はそれでもやさしく命を照らす

2012年1月6日金曜日

裸婦モデル

あなたは今日も
どこかでセータを
えらんだ下着を脱いで
生まれている

2012年1月5日木曜日

四万温泉~積善館~

雪の薫り立つ
浪漫のトンネルくぐりぬけ
月浮かぶ露天風呂
湯気とたわむれて粉雪が舞う

猿ら
目を閉じ黙して聞かず
ただ一刻あたたまる
ただ一刻景色につかる


2012年1月4日水曜日

言 葉 の重さ


枯穂のように 積み重なり その一つ一つは軽いが
あるとき もう 持ち上げられないというように 重くなる

毎日 ポーランドの詩人 チェワフ ミウォシュの 詩の 朗読 渡辺徹の を
聞いていた
 
もらった その CDを 毎日聞いていた

と ある朝 まさに今朝 言葉 その言葉は
意味とは一切関係なしに 重さを増した

2012年1月3日火曜日

詩人

100人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
1000人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
10000人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
ただひとりにでも詩を愛されたら
まぎれもなく詩人でしょう

2012年1月2日月曜日

『映画館を出たら~月曜日に乾杯に捧ぐ~』


映画の中の主人公は
ふらっと全部残して旅に出た

映画館を出たら僕も旅立とう
ユートピアかガンダーラか
知らない所ならどこでもいいや
ビール飲めて、風が吹くならどこでもいいや
映画館を出たら僕も旅立とう


映画の中の主人公は
優雅に川辺で絵を描いてた

映画館を出たら僕も絵を描こう
草花、裸婦、空
目に映るものならなんだっていいや
水彩、鉛筆、血、油
描けるなら何色だっていいや
映画館を出たら僕も絵を描こう


映画の主人公は
いつだって手紙を出していた

映画館を出たら僕も手紙をだそう
家族に、友人に、恋人に
思い浮かぶ人なら誰だっていいや
日本人、外国人、宇宙人
届くって思えたら死んだ人だっていいや
映画館を出たら僕も手紙出そう

映画館を出たら僕も
映画館を出たら僕も

映画の主人公みたいに
見つめあって愛を語ろう

誰にでもなく
どこにでもなく
何色でもなく

僕が主人公の鮮やかな
映画をいきよう

君と

2012年1月1日日曜日

紹介詩

 こんにちは
 私は地点
 1.9.7.5.8.2.9
 J.A.P.A.N.T.O.K.Y.O
 に2560gの重さ
 を持って
 く.ろ.か.わ.た.け.ひ.こ
 というぱっちりとした名を賜り
 生れ落ちました

 感ずるすべては心となり
 食するすべては体となり
 父母世層の集積として存在し
 その発するところのものとして詩を抱え
 ついえるまでつづります

 あなたに触れて
 感じあるいは食し
 つづるさいわいを見つけつつ
 皿を洗い 本を売り 記録しながら
 生きています

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を