2020年10月12日月曜日

不条理戯曲1

 道の真ん中で穴を掘っている男がいる

通り過ぎる人々の中に主人公、立ち止まり様子を見ている

「何してるんですか」

「見ればわかるでしょう、井戸を掘っているんです」

「井戸。ですか」

「井戸です」

男は掘り始める

「どうして」

「わかるでしょう、井戸端会議をするためです。そしてあなたはこの井戸ができてしまう前に、できてしまう前に!わたしに話しかけてしまった。そしてわたしの井戸を掘るという行為を、その目的を失わせてしまった。だからあなたには責任がある。ほんとうの井戸端会議をするための井戸を掘るという行為をすることを」

主人公立ち去る

男は井戸を掘るのを再開する

そして水が出てくる、しかしそれは水ではなく油であった

「失敗だ、あの男に話しかけられてしまった。井戸は作られなかったまた別の場所を掘らなくては」

男はシャベルを持って立ち去る

油田が引火して火柱が上がる

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季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす