2015年2月26日木曜日

国境

僕の住む町に国境がある
2メートルほどの金網で仕切られた国境
鳥がその金網に止まって休んでは飛び立ってゆく
夕陽が金網越しに差し込んで道に影をつくる

船で旅をした時、海の上には国境はなかった
地図でみたような線は書かれていなかった
でも移動するごとに持っていたパスポートに
カラフルなスタンプがたくさん押された

言葉の通じない異国の地で
真っ黒な、白い肌の人々
カタコトでツタエアウ
ワタシハカレラニドウミエタロウ

ここでは自分と違う人を排除している
分かり合えないものは排除している
よくしった安全な幻の中に身を置いて
卵のようにつるんとする

ここは収束しようとしている
膨らみ続けた世界が
間もなく収束し出して
光の一点に戻りはじめる

閉じた光の中で
暗闇を広げて
到着を待つ
岩戸の前で裸になるのは誰か

岩畳が見える
境目から水は流れてゆける
そのたどり着いた先は海
深海に沈んだプランクトン

0と1で構成されたブランクは
トランクの中で発酵し始めて
祈りの臭気だけが
漂っている

そうしてようやく越えてゆくことが
出来るのかもしれない
存在をすてて
そうしてようやく越えてゆくことが
出来るのかもしれない




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季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす