2020年12月3日木曜日

沈みゆくもの

ふりしきる雨よりも正しいものはなく
私を保つものははかなく失われる
求めることも求められることも
怯えてしまう夜に沈んでいく
それでいいそれでいいのだ

2020年12月2日水曜日

確認

生きていることはわかっているのですがこうして深夜にひとりいると私が生きていることを確かめるひとは誰ひとりとしていないのです。私もみんなが生きていることをほんとうに知ることはないのです。あぁあなただけはそばにいて生きていることをもう少し確かめていたい。私はあなたに私が生きていることを知っていてほしい。ずっと確かめていられることのできないことは知っている。それは私たちは別の存在だから。でもだから確かめあえる

2020年12月1日火曜日

 この夕暮れ時に僕はまだどこにも行かなくていいのだ

駆り立てられて外向きでいなくていいのだ

もう少しこの日の落ちるのをみていたい

もう少しこの日の昇るのをみていたい

街の音に耳をすませたい

料理を味わっていたい

声を聴いていたい

あなたといたい

自分でにんじんをぶらさげて走り転げながらつまずいてようやく空が見えた

いつでも目覚めていたい

この世界の美しさに

私だけの記憶の中だけだとしても

私が身体が抜け殻だったとしても


2020年11月23日月曜日

 人と会うことが嬉しくて犬のように尻尾ふって漏らす

君の腰の暖かさは同じ36.5度のグラスよりもシャープ

自宅前の神社の木々がいつの間にか生い茂り

夏は過ぎ去り赤や黄色の葉になりそして風に散っていく

今年は詩人が天国にたくさん行って

向こうで好きなだけ抱き合っているんだろうな

国も肌の色も関係なくそんな理想郷を昔から夢見て

限られた命の中で果たせないままに景色に溶けた人々と


ふんだんに盛り込まれた命の種を祈りの中で芽吹かせていく

痛みを覚えるこの肉体を精神を言葉のフォルムに落とし込んで

新しい種を許されないことを夜から朝にかけて

月の光しか知ることない孤独の中で開いていく


置き去りにされた電話BOXから希望の人に電話をかけて

泣きじゃくるのは恥ずかしいことじゃない

朽ち果てていく自分を慈しいと強く思えるのはあなたとまた会えたから


私たちには続きがある

正しさと偽りによりも湧き上がる感情を放つ

空を詩で埋めつくしてバベルを築くにはまだ

優しさがたりないかもね握手をしよう拍手をしよう

この世界と君のほおに触れながら

ミリオン通り

花屋スナックレストラン
鰻屋郵便局ランドリー
いい匂いがしています

喫茶酒場雑貨屋整体院
蕎麦屋バル茶屋薬屋
食べて整えてプチテラスでひと休み

クリーニング店居酒屋公文
仲町の家弁財天の氷川神社
子どもらのはしゃぐ声が聞こえます

リビングショップバーガーショップ和菓子屋
大通り大きな空がひらけて電車が行き交います
左に進んで劇場cafeギャラリーBUoY

あぁ、この風、いつかの風と同じ気配
夏でしたか、秋でしたか、
あなたとでしたか、君とでしたか、
劇場に向かうこの通りを歩いたのは

2020年11月10日火曜日

君の喜ぶ声が雨の降りはじめみたいにやさしくびびいて

夏だったか秋のはじまりだったかポストに届いた

どこで買ったかわからないお土産みたいに

好きな人を描いた丘や浜辺を持ち歩いている



きみのこと

 きみのくちびるの

もとめるまま

はなしたらいいよ

すきなこと

きらいなこと

きみのくちびるの

もとめるまま

はなしたらいいよ

どんなだった

こどものころ

どんなだった

はつこいは

どんなだい

きみのいる季節は


2020年11月8日日曜日

ある朝のこと

昨夜の夢の続きが

現実世界の朝日に溶けて

砕かれた虹のかけらになる

錯乱した水際の白鳥たちが

終わりの季節を知って

飛び立ってゆく

塗り固められた

煉瓦造り、緑の大河へかかる

橋の上を

打ち震えた哀しみ通りぎた

ああ、

今、また

通り過ぎた

2020年11月7日土曜日

幻の夏

黄色い車に乗って君を迎えにいく

浜辺で行われるステージまで

折りたたみの手紙にぎっしりと文字があって

早く読みなよと急かしてくる

泳いだ後の帰り道

腕が触れてもう少し近くにいたいなと

僕たちは思った

言葉を君が先に捕まえて

僕は君を引き寄せた

幻の夏が永遠に近く現れた


2020年10月31日土曜日

銀色の空が窓からのぞいて

銀色の空が窓からのぞいて 
街の音が吸い込まれていく

青色の空が窓からのぞいて
哀しみが吸い込まれいく

橙色の空が窓からのぞいて
太陽が吸い込まれていく

漆黒の空が窓からのぞいて
私が吸い込まれていく

幾億年ものすべてを記憶した
空を私の生と幻が反射する

2020年10月23日金曜日

 少し長めのスカートをひきずりながら

床、地面でなく、時間、空間に

君のその腰あたりは銀座で今もパレードしてる

美しき君の腰と足と吐き出された愛の言葉たち

愛してるだとか好きだとか可愛いだとか

あんよだとかブロック

キャッチーボールだけ路地や故郷にあぜみちに続いている

踏みしめた確かさ響かせて

ブランコの揺れる公園に西日が差して

レンガの歩道に影ができた

追い越したい青春はいつも影の中に見えて

這いつくばるように働いた日々が消費していく

手のひらにあるものは抱きしめた女の温もりだけ

一番や最善を決めることことを恐れて

いつでも選ばずに流されてゆく

知らずに選んだその道さえも

神に選ばされているとは知らないままに

弾けゆく部分のかなたに宿る神の一息の息吹を

君は感じているか

だとか

パラソル、カエル、つみき、パステル、チョコ、キャラメル、ワユ、キューピー、ロ二ッツ、イミシユ、パチン、パイナプ、キューい、yいい湯インqん、び^ち、ぽい^るピーチ、サングリア、っさsっっっサングリア、あ

ある、15フーとstでタンクさんのああゆたうあ

青い壁のCAFEDEピアノ聴いて

152STdeある

どうかしてる店のママさんせ絶対化アメリカ人なの亜婆さんおに日本人みたいに辿々しく会話したsその一句いくつかが日本語で喋っているようにsっっっっっさ再生されてどこから来たのかmない何を飲む

あらサングリアs木なのね

僕たち人間はむしろtましい魂で交わしたキオwく記憶を

きざw刻まれるのだ

世界は世界を知らなければ

形跡なのだかrっっら

それを

2020年10月14日水曜日

君のいた季節が遠く過ぎ去り

風だけがまだ僕の耳元に届いてる

麦わら帽子を笑いながらかぶって

波打ち際をはしゃいで駆け抜けた

どこに向かうのわからないまま

ただ夕陽を追いかけていた

飲み干したビールの空き瓶から

砂が落ちていく時、永遠は生まれた

どれだけ優しいかわからない君の指先

どれだけ明滅を繰り返したかわからない

鼓動と存在が世界を包み込んでいた

この音と文字のにじむ光景の中だけに

今、君はいるんだろう

笑うことも泣くこともためらうことも忘れてしまった

あの季節に

君ともう一度出会いたくて

僕は綴るんだ

僕は歌うんだ

あーあーあー

うーうーうー

晴れるだろうか明日は

会えるだろうか君に

永遠を弾く

この僕の指の先に

2020年10月13日火曜日

この美しい朝が今日も私を迎えてくれる
おはよう、ありがとう
動き出した街の音がする
深く深呼吸をする
懐かしい思い出の浜辺の香りがして
私はのどが渇いているのに気がつく
おはよう、ありがとう

2020年10月12日月曜日

君だね

 わたしと出会い愛してれくれた人よありがとう

君だね

君と会ったね

レンガの街

君だね

白い船の上

君だね

古本に囲まれた店

君だね

8の文字の中

君だね

風呂の中で揺らして見上げた

秘密をたしかめたのいつ頃

君だね

交換した宝物をどこかへ置き忘れてしまった

木造の基地の中で息が荒くなった

君だね

燃える焚き火の中で浜辺て水平線をみたね

君だね



不条理戯曲1

 道の真ん中で穴を掘っている男がいる

通り過ぎる人々の中に主人公、立ち止まり様子を見ている

「何してるんですか」

「見ればわかるでしょう、井戸を掘っているんです」

「井戸。ですか」

「井戸です」

男は掘り始める

「どうして」

「わかるでしょう、井戸端会議をするためです。そしてあなたはこの井戸ができてしまう前に、できてしまう前に!わたしに話しかけてしまった。そしてわたしの井戸を掘るという行為を、その目的を失わせてしまった。だからあなたには責任がある。ほんとうの井戸端会議をするための井戸を掘るという行為をすることを」

主人公立ち去る

男は井戸を掘るのを再開する

そして水が出てくる、しかしそれは水ではなく油であった

「失敗だ、あの男に話しかけられてしまった。井戸は作られなかったまた別の場所を掘らなくては」

男はシャベルを持って立ち去る

油田が引火して火柱が上がる

2020年10月9日金曜日

実在

私の目は

私が意識するより先に

あなたを追いかけていた

私の体は

私が思うより先に

あなたへ近づいていた

私の存在は

あなたの存在により

実在を現わした

2020年10月5日月曜日

 僕の前を流れた風景

それはすでに失われ

花を揺らす風

ベンチを照らす光

喋り声

道端のはね

いつかの土産

無数のマンション

僕を見つめる目

僕は何かを思い出した

通勤途中の駅で

懐かしい友人に会う時に

あの雲の果ては

果てである

今はもわかりもしない悲しみの

僕は何をみたのか

僕は何をみたかったのか

影が形を作る

触れてはいけない

僕は近くだけだ

僕は迫る

忘れながら失いながら

触れられぬものに

僕は停止する

2020年9月19日土曜日

朝、山々へ陽がさして
血が呼応し立ち上がる
向かう先の示すまま
私は遅れて立ち上がる
いななく血の佇まいに
私は一礼する

2020年9月14日月曜日

青春ドライブ

空に白い鳥の飛ぶ但馬の街を
快適な速度でドライブ
青春はいつでも瞬く間
今を包み込んで懐かしさに変わっていく
夕暮れが過ぎて
風が海へ帰ってゆく
人の暖かさを探して
ネオンが裏路路地に点灯する頃
ぼんやりしながら
恋人に手紙を書いて
明日の始まりを見届けた

2020年9月1日火曜日

アラモード

ささやかな音のするベランダ
踊り子を夜のとばりが包む
塗りたての白壁に飛び跳ねた万国旗
鉄塔をひとまわりして
朝陽がカーテンを揺らす
ロフトに届く慌ただしい暮らしの足音が
夏を遠ざけた
扉を開いてやさしく短い小説を読んだあと
また僕たちは物語に戻った

2020年8月30日日曜日

ファンタジー

ゆうべが紫の煙になって昇る
正しい黄色がどこにあるかを
双眼鏡で見つめながらいる
レンガ造りの小さな家に
ヤギが繋がれている
獲物を狙う竜の群れが
のぞいている
繰り返しの効かない魔法が
また一つ唱えられて
あとかたもなく事実が消える
魔法の音たちは
常にあり続けることで
その意味を消していく
森が暗闇の中でなく
夜明けをまつ



2020年8月18日火曜日

幻聴

永遠を記す途中しぶきが水平線を隠して
呼吸の出来ない深海へと誘う
西瓜のビーチボールが
転がり来て去り行きながら
溶けた氷の中からこちらを見つめている
灼熱のカーテンが
我らを奪おうとして包み込む
いつかの夏の幻聴が
砂浜に落ちている
私は耳をあてて
それらのつぶやきを聴いた

2020年8月15日土曜日

アローさんへ

 8月13日

きょう東京では雷が落て雨が降り

その後大きな虹が出て消えそうにありません

昼、私は冷やし中華を食べましてね

自転車で塾へ向かう子どもらがいます

エコバックを下げたおばあさんがいます

そうそうレジ袋は有料になりました

安倍政権は続いていてマスクが配られています

セミがやけに鳴く夏で電車の中にも紛れ込んでいます

オリンピックは来年だそうです

コロナって知ってますか?


短い言葉であなたならどう記したでしょう


あなたの見たかった今日を

あなたの愛した歌い手たちが謳っています

消えそうにありません、届きますでしょ、虹を伝って


セイハロー ミスター、マスター、アロー

ペンギンと散歩しながら詠んでいますか

セイハロー ミスター、ポエット、アロー

歌に生まれ変わりましたね

セイハロー ミスター、エンジェル、アロー

ハイボール、お代わりお願いします


2020年8月11日火曜日

夏の夕暮れ

ゆれている来たみち
帰るみち

いつかの夕暮れは短い

笑い声と歌声と
景色に溶けて
まぼろしみたい

高架橋に
西行きの電車が通り過ぎて
川を渡る

ゆれている
ひまわりとぼくたちと
水面と

2020年7月30日木曜日

7月のソネット

七月の頂きに新しき景色
傍にささやかな花の微笑み
昼に育まれる光の雨
なじんだ場所に別れを告げて
押しだされ導かれ歩みゆく
思い出の中でならば美は永遠
心に寄り添う雲雀の唄聲
清涼な風のしめす方角
森に偉大なる虫の営み
夜に慰める静寂の海
辿れば見えるものは見えざる美へ
辿れば見ざるものは見える美へ
時の環を抜けて美となるのだ
思い出さねばならぬ時は来た

2020年7月16日木曜日

電灯を消して天井がわずかに見えるかなな夜に


電灯を消して天井がわずかに見えるかなな夜に
だんだんと夜が明けてくるのを待つのです

温もりから窓を開けますと
物干しざおにかかかる 空っぽの洗濯ばさみに
陽光がほされて足をぶらぶらしてるんです

石鹸とビオラがつつきあって露をはねる
冷蔵庫の中で昼寝する茄子と大根をひっぱりだして味噌で煮る
吹きかえる湯気にシンドバットの蜃気楼
オアシスに浮かぶ花びらを手のひらですくうんです

いつだって日々を閉じ込めて薫りがする
そう、哀しい記憶ほどいい薫りがする
だからもう泣かないでください それでよかったのですから
アパートの白壁がね ギリシアのミコノス島みたいに見えるんです

いつだって少したってから青春は訪ねてくる

2020年7月15日水曜日

浜辺

弥勒菩薩の悩みが砕けて砂になる
夏雲が笑って立ちのぼるんです
それを指でたどって遊ぶんです
打ち寄せる波はいつか誰かの忘れたい言葉
僕たちは飽きるまで眺めるんです
僕たちは暮れるまで浮かぶんです

2020年7月8日水曜日

光景

部屋の中に列車の音が響く
私の知らない無数の人が
どこからか来てどこからかへ行く
部屋の中で煙草の煙が立つ
ドアからの風がそれを消し去って行く
ここへ光がさしてまたどこからかへ行く
私もまたどこからかへ
青空に溶けながら

夜明け

夜明け
空はむらさき
あなたはわたし
わたしはあなた
雲について何か語ろうとした
柔らかい筆先のような雲について

2020年7月4日土曜日

沈黙

時間は私の知らぬところで流れ
私の知るところは眼前の一輪の花
瞬く間に散りゆく一輪の花
私の知らぬところは変容し続けて
ひたすらの流れの前に私は沈黙している

2020年6月28日日曜日

あなたがもしすでにいるのならばどうかお訪ねください
僕たちの前に現れて合図をください
僕たちがわかるような合図をください

2020年6月27日土曜日


言いたいことほおっておくと
嘘みたいに思えて
腐っていくように思えて
詩という殻つくって保つ


誰も暖めず孵らず
古くなったら
砂糖とミルクバター混ぜて焼いて
パンケーキにして
食べたらいい

投げつけるより
平和だよ

2020年6月22日月曜日

梅雨

どこかにいる時間の
予定のあったその時間に
どこにもいかずに時計とカレンダーをみつめている
あなたに会う時間の
新しく買った家具のことを
始めた仕事のことを話している時間に
こうしてひとり書いている
静かすぎる夜には
なにもしなくてもいいのだけどざわつくほど
あたりは暗くなり梅雨と呼ばれる季節がやってきて
日の長い時間はもう通りすぎたのだと
電波が映し出す画面が教えてくれる
あの日に行きたかったけれども
それは私があの時もっと強く願わなかったからなのかもしれない
私がこうしていることもまたいつかへつながるのだろう
今夜はまた雨が降っています

夏至

表情の変わらぬその顔の奥に
どれほどの糸がつまっている
色の変わらぬその服の奥に
いったいどれほどのとげを隠している
あなたの唇が動くたび湿度が増す
聖書に記されている言葉のように
立ち上っていく

街に雨が降る
街は潤い
僕は孕んでいく

2020年6月14日日曜日

トンネル

大きな窓から見えるマンション
雨粒とライトでぼんやりと見えて
それはいつの日か訪ねた部屋の表札
地下鉄が僕らの記憶の足元を通過しながら
球体の虹を輸送しているころ
起こされたばかりの水夫たちが
焼き立てのパンを頬張りながら
掘削の計画を立てている
朝と夕暮れの訪れる訳をしらないままに
出来たばかりのトンネルを
私達もまた通過してゆく

2020年6月12日金曜日

泡沫

からっぽな僕らの地中海旅行は
西陽の差し込むワイングラスにはじけた

2020年6月11日木曜日

【Pw3連詩組2020】第3弾のまとめ

6月の風

風が強く、薄く塗った雲の早く流れる6月は
いつだかの船の上で撒いた思い出が戻ってきたように思える
あくびをしながら椅子に座りつづけている美しい女がいた
うなる低い風の音はその女の声に似て
触れる風の細かさはその女の髪に似て
押し上げられるカーテンのふくらみは乳房に似て
今日もまたあなたを愛し始めている

2020年5月27日水曜日

蝶が飛んでいる

飛べるのに
なんとはかない
手のひらでいとも簡単に消えてゆく

世界の秩序に逆らわず
飛べるように生まれてきた蝶は

舞い飛ぶ 先にも 後にも
純粋な軌跡が描かれていく

僕ら人間の
飛べもせず歩いた歴史の
たどたどしさよ

蝶よ お前には
神の声が聞こえるか

2020年4月26日日曜日

金魚

水槽に金魚が2匹
1匹は底に沈んで動かない
もう1匹はその傍らで動かない

見上げる目と
私を見る目と
私の目と

空気ポンプの気泡が通り過ぎる

2020年4月24日金曜日

2020年4月20日月曜日

さまよいながら
たどたどと
冬の街を行けば
ちらりちらりと
雪の降る
狂っちまった詩が
はなればなれに
飛んでゆく
夢からさめていばら
吐き出す言葉のそらぞらしさ
誰もいない部屋で
やわらかな照明がちらつく
まだ息をしているということは
まだ流れているということ
真っ白な未来に
ぼくたちはなにをつづる
記してしまえば
描いてしまえば
空白は失われて
無限の自由は
閉じてしまう
触れずにおいておけば
保たれたまま
あぁ、ふさいでいくことでしあk
「生」は
あれない

2020年4月13日月曜日

20200413

こうして誰にも会わずにいると
今まで生きてきたことや
出会ったことすべて幻だったのかと思えてくる
はたしてかつて愛した人愛してくれた人も
もう目の前にはいない
このまま電子分解して宙へ霧散するまえに
私はまたその重さを確かめたい

2020年4月12日日曜日

無題

世界に悲しみと貧困が訪れて
命のあることを投げ出しそうになったとしても
道端に咲く花のようにあることのたくましさを忘れずにいれば
きっと明日も大丈夫
僕たちはまだ歌をうたうことができる
僕たちはまだ愛を告げることができる
僕たちはまだ明日を変えることができる
新しい景色、見たことのない道を探して
僕たちはまだ歩くことができる
君に会いに行くことができる

2020年4月10日金曜日

昨日の空と今日の空は違う
今日の空と明日の空は違う
でも
昨日の空と明日の空はつながっている
明後日の空とおとといの空もつながっている

ロンドンの空とアフリカの空は違う
蜜蜂の見上げる空とバオバブの見上げる空は違う
でも
北極の空と南極の空はつながっている
ペンギンの見上げる空とイグアナの見上げる空もつながっている

だから
100万年前のアンデスに咲く花の見上げた空と
100万年後のエジプトの猫が見上げる空はつながっている
ように
あなたの空と僕の空もつながっている
のだ

***

The sky of yesterday is different from that of today, and today's sky is different from that of tomorrow. However, the sky of yesterday is connected to that of tomorrow, and the sky of the day after tomorrow is connected to that of the day before yesterday. The sky in London is different from that in Africa, and the sky seen by bees is different from that seen by baobabs. However, the sky in the North Pole is connected to that in the South Pole, and the sky seen by penguins is connected to that seen by iguanas. So, the sky seen by flowers blooming in the Andes 100,000 years ago is connected to the sky seen by cats in Egypt 100,000 years later. Similarly, your sky and my sky are also connected.

2020年4月4日土曜日

20200404-2

死せる海の底に
悲しき町の影が流れ込んで
蝋燭の炎の揺れるにまかせて 
今朝もとぼとぼと
とぼとぼと昨夜も

20200404

蝋燭の灯りを頼りに夜の街
家々からのバイオリンの音色
私は炎の揺れるにまかせて
とぼとぼと



2020年4月2日木曜日

20200322

正しき明日の遊覧飛行
さきみだれたる沈丁花に
霞の中より雫の落つる

20200319

かかしの夕暮れに
風車のまわる8月
飛行船がビラを撒いて山へ帰る
虹が追いかけて星が瞬く

2020年3月27日金曜日

ザラメ

透明ガラスの乱反射が人々の目を奪う
積み上げられた落ち葉の熱が
かゆみを伴う眠りとなって押し寄せてくる
砕かれた像が地層の中で液状化
ざらりとした、ウラジオストクの通風孔をぬけて
騒ぎの特異点で待つ

ザベート

青春の寒い朝に扱うことのできぬ羽のあるのに気づいた
私は羽ばたくままに振り回されながら問いかける

星屑と一緒に流れ落ちながら新しいかけらを握りしめて
強い光に私の体が溶け出して羽の影だけがまた時の彼方へと飛んでいく

三つ編みの少女が夢の中で私を見つけた
永遠に近く漆黒の地面に並行しながら

作業員A・B

支度の済んだ
トーテムポールが
海底火山を揺らす

木目からにじんだ
言葉の影が
闇へ帰る

実験場としての
社の丘に
置き去りにされた勾玉

怒号の響く
高速道路が南国の海へ伸び切って
点在するシグナルに耐えている

どうだね
そちらの無線機は
押しすぎてはだめだ
一度だけかるく押すんだ

滑ります
ここは気を付けていないと
滑ってしまいます
それを先にいってほしかった

銀河の端が
消えかけているが
そのことはまだどこにもあらわれてはいない


季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす