2013年4月30日火曜日

ノマド

草の生えるときを知り

星のしるべをたよりに

地平線をゆく



家系を引き継ぎ

羊と山羊を引き連れて

馬と犬と群れてゆく



夕闇迫り

影の伸びた仮宿に

哀愁の馬頭琴



明日の薫りを待ちながら

白濁の酒あおり

糧をほうばる



日々が満ちて

謳いあげた躯が

悠久の中に発酵し



TUCHITONARI KUSATONARI HANATONARU

(土となり 草となり 花となる)

SORATONARI KAZETONARI HOSHITONARU

(空となり 風となり 星となる)

MICHITONARI SHIRUSHITONARI TOKITONARU

(道となり 印となり 時となる)

2013年4月28日日曜日

喫茶情景

張りつめた心の内が 肌にあらわれ ハリネズミ
行きずりの男と女が 揺さぶられた 由比ヶ浜
空っぽのカップに 影が伸びて  風車
ためらいの下唇に 立てかけたままの たらこスバ

2013年4月25日木曜日

降り注ぐ闇を待つ

恋人のいない季節が
切れかけたインクリボンのように灰色
刻まれた哀しみは鮮明に浮かび
二度と帰ることのない鮭の群れ
真昼を過ぎて沈みかけた太陽に
這い出してくる記号を投げつけて
降り注ぐ闇を待つ

2013年4月24日水曜日

手まねき

遠い街が手まねきしている
光と影で化粧した女の
後ろ姿を面影にたくして
道しるべを探すツバメが
空の果てから舞い降りては
海の五線譜を奏でながら
坂と谷とを越えて
遠い街が手まねきしている

2013年4月11日木曜日

2013年4月4日木曜日

幕間

三人娘のお喋りする
黄色い舞台の幕間に
狸は踊り狼は狙う
白塗りの画廊に飾られた
風景画家と抜け出したのは
川沿い葉桜の舞う
春と夏の幕間の季節

2013年4月1日月曜日

さよならさくら

去年はどうしていただろう
来年はどうしているのだろう
散りゆく桜おしみながら
今年もまた春に別れる

さよならさくら
なくならなおさら
なくならへんよ
さらんへよ

雪が降る 柔らかに雪が降る 昼も夜もこの街に 雪が降る 足跡が道についている 誰かが歩いた跡 私も歩く 雪の中を 優しい雪の中を