2009年2月25日水曜日

女は

走り行く闇をまなこに沈めし若い娘
花と鳥に彩られたくましき腕に盗まれ
捧げられる夢を見る

かくして若い娘は生を美しく完結させ
針で傷ついた指先に流れる
赤き花びらを大気に吸わせる

恥じらい確かめ安堵しながら
心のうちにしまいこみ
高く陽の昇る浜辺にてひっそりと眺める

ふけり懐かしむゆうべ
娘は娘でなく女となる
女はだれでもそれを持っている

2009年2月23日月曜日

雨と雲

また雨だ
この街は雨ばかり降る
買ったばかりのコートがまた濡れる
石畳を流れる雨水が川へ
いつか君の住む海へも行くならば
男と君の足元へ貝殻を届けよう
あの時君がうつむく僕に
星空教えてくれたように

マシュマロみたいな雲が飛んでいる
遠い街へ行ってしまったあなた
雲の行く先にあなたの空があるならば
恋に落ちてるあなたと彼女に
通り雨を降らせてあげる
あなたがコートを女かけて
風邪でもひいてしまいなさい
あの時あなたが凍えるわたしに
暖かさ教えてくれたみたいに

2009年2月20日金曜日

眠たくなる

眠たくなっちゃう
君といると
眠たくなっちゃう
なんだろ
眠たくなっちゃう
ほんととにかく
眠たくなっちゃうから
一緒に夢につれていく
たくさんキスしたあとで

ふれる

紙にふれるえんぴつ
髪にふれる指
髪にふれるまなざし

不安

薄汚れた醜い夢に
いつしか僕の中の
やさしさが死んでしまうのではないかと
不安になるのです

日常

おとといの冬だとか
あさっての風だとか
会った日の木漏れ日だとか
来年の落ち葉だとか
雨のむせび立つ夜だとか
粉雪踊る朝だとか

どれも地球が呼吸してるみたいに
あなたとのあたりまえの愛の日常

鈍行列車

たどりついたどこかで出会うあなたに
多くの景色を教えたいから
僕は鈍行で行くよ

ホームに佇む人々や
線路沿いに広がる田園の香り
体揺らせてレールを踏み越える音

つくことも
たどることも
喜びだから

あなたへ
あなたと

酒飲み

昼酒飲んで
アルタ前で
「いよ~」とからんで
いい年した大人が
ふらふらしてね
太陽が「おつかれさん」と
その頬はさらに赤く

2009年2月18日水曜日

僕は

百年も生きられぬのに
なぜこうも日々迷う
大木は千年の生き
ただ天にまっすぐに伸びていく
短いから迷うのか
ならば蜉蝣ははたして

人間という存在に生まれ
正しくあろうとするのに
自らが正しき人間でないと気付いて
取り返しのつかぬ過去に迷い
歩むべき道の険しさに愕然とする

行き着いた先で裁かれ
正しさとはそぐわぬ
その生だったとしても
行く
僕は
いく

2009年2月14日土曜日

不思議な夢

不思議な夢を見た
大理石の立ち並ぶ広場で
着物を着た女と
コートを着た男
知人のO氏と
シャツ姿のT氏
スーツの見知らぬ外国人
そして私

みな笑顔で
順々に2行詩を読み上げる
私の番が来て
思いつくまま
焦りながら
2行の詩を読む
内容はすっかり忘れたが
少しはうまかったのか

目覚めて私は微笑んでいた
そんな朝があってもいい

2009年2月13日金曜日

酒場にて

酒場をやりませんかと
酒飲みが呼び掛けて
酒飲みながらうちあわせ

氷がとけて
夜がふけて
お金ないねと笑ってて
場所何処にしようと笑ってて
何売ろうかと笑ってて

いつしか

ボトルもグラスからっぽで
なにもないけど僕らはそこに夢をそそいだ

酒場をやりませんかと
酒飲みが呼び掛けて
酒飲みながらうちあわせ

僕らはそこに夢をそそいだ
いつまでもつきぬ夢をそそいだ

白銀

流れゆき過ぎた季節の中で
待ち望んだぬくもりは
忘れてしまった遠い未来で
触れられぬ雪のように降り注ぎ
窓を開けぬ部屋の中でこそ
みつめられる

火を落としカーテンをしめ
夢の中へもぐりこむ
ただゆるやかに
かくじつに世界は白銀へ
いつまでも白銀へ
そして私は
心臓を貫かれながらドアをあける

五分も持たぬ白銀へのドアを

2009年2月10日火曜日

静かな夜

近すぎて見透かされようで
怖くて
幸せすぎて今が過ぎるのが
怖くて
あるものがなくなるようで
怖い

時間はどうしていつも進んで
世界はどうしていつも変わってしまうのだろう

静かな夜は騒がしすぎる

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす