2010年8月31日火曜日

消え行くもの

夕焼けと引き換えに
町にはビルが建ち
星空と引き換えに
夜の盛り場が出来る
愛と引き換えに
女体があふれ
幸せと引き換えに
物が増えてゆく
膨張してゆく世界が
すべてを薄く薄くしてゆく
象徴だけが記されて
すべてかすみのように消え行く
呼吸をするのを忘れた人らは
それらが消えてゆくことに気づかない

2010年8月29日日曜日

特異点

赤いわれらは
透明な時間へ漂う
二重螺旋交わる
穏やかな愛の特異点
点灯しつつ

2010年8月22日日曜日

夏草

夏草が秋を探るようにたなびいている

昔、闇は夜自由だった
今、闇は自由を求めて
人の心の中へ入り込んだ
闇は夜を待たなくなった

2010年8月15日日曜日

美辞麗句

玉砕という言葉は
見殺しにした兵士を
たたえて吹きだした

イエスを磔にして
賛美歌が
世界で歌われている

平和を凌ぐ
言葉には
生贄が足りない

美辞麗句は
いらない

2010年8月12日木曜日

夏の君

君を想うと
心がキラキラして
時はサラサラと
流れ行く

波のように
君との間に
たあいない言葉が
ゆれている

君に会えるから
心がまぶしすぎて
うまく眠れない
夏の夜

訪れと同じように
時間の中へ
思い出残して
君は去っていた

言葉はいつも
遅すぎるけど
広がる空へ
投げかける

いつか君を
金箔の朝陽がつつみ
生きている喜びを
思い出すように

君を思うと
心がキラキラして
時がサラサラと
流れゆく

小船

計り知れないことを
無限と呼んで
そのままの姿で
あると思うことの
傲慢さ

死や終わりは
常にそばにせまり
たあいのない
その幻想を飲み込んでゆく

悲しむことはない
それは単純なる
事実にすぎない
今有限のうちに
前へ前へと進んでいく力に
私らの自由と呼ぶものの中に
含まれているのと
同じように

囲われた海へ
放り込まれ
内なる灯台の指す方へ
痛みや疲れ
眠気や悲しみを従えて
進んでゆく圧倒的な小船を
澄み渡る空は
憶えている

2010年8月5日木曜日

アモイ

陽の落ちる街並みを
家路へ急ぐバイクが走る
赤土に木々の影が
浮かんでいる

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす