2013年8月21日水曜日

豚と宇宙


養豚場で配られている冊子の中に
著名な詩人が書いた詩が載っていた
豚と向きあって自分と世界を獲得して謳っていた。

あぁ、私は
豚について詩に書いたことがなかった
そういえば
巨人の福王選手についても
殿様バッタについても
デ・トマソ・パンセーラについても書いたことがなかった。

Googleがすべての文字をデータ化しているように
詩人達はいちいち詩にして
追いかけっこ
そして宇宙は光速の3倍の速度で広がっている。




2013年8月20日火曜日

季節はずれ

歌が好きで上京して
高円寺のライブハウスで唄っていたよ
細身のギタリストが
声がかわいいねって言ってくれた
もう君の誕生日がいつだったか忘れたけど
2人で馬橋公園の桜を見ながら作った曲は
忘れられなくて

帰ってきなさいと正月の度に家族に言われて
肩書が立派な写真を見せられて
歌をを唄っていたのと言ったら
バカにしたみたいに笑うから
水をぶっかけたよ見合いの席で

季節がまだでみあげても
なんにもない
咲いててほしかったよ桜
2人で馬橋公園で見上げた桜が
咲いててほしかったよ
どんなぬくもりだったか忘れたけれど
2人の桜の歌
季節はずれに口ずさんだよ

2013年8月3日土曜日

沖で

ちんどん屋がラッパ吹き鳴らし
白いパラソルを掲げながら
大名行列の真似をして
忘れられた時代と
これからの時代を行き来している

その脇をまきとられぬよう
掘り返された美しい鉱石を
大事そうに抱え
灰の街を歩いてゆく人がいる

生れたばかりの言葉のしずくを
口のなかで転がしながら
地下鉄へと乗り込んで
遠くへ遠くへ行こうとしている

辿り着いた夜の海に幻を流しては
沖でかすかに揺らしている

2013年8月2日金曜日

月が見ていた

しのびしのび込む光と影
蛍光灯の点滅
ガスボンベの路地
魚のさかさのうろこ

八百屋のトマトは転げ
はい回る女の髪がほぐれ
みえかくれする
きえあらわれする
こだまとはりの
真ん中のステップ

待ちわびた風が
青いふろしきを叩いて
蝉のなく季節を祝う

月が見ていた

2013年8月1日木曜日

風車

はだけたシャツの隙間から
白い君の肌がのぞいて
赤く染まるほおを恥ずかしげに隠した

夕立が上がったあとの光る道を
風と一緒にふらふらと歩いて
出逢ったのがいつだか思い出していた

10年先がどうなるかなんて
考えるふりをして君の素振り
とどまる時の中でさぐっていた

次の約束をしないままに
音の速さで今が思い出に変わってゆく
さよならを告げないままに
カラカラと回る風車に
僕らの景色もまぎれはじめる

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす