2010年12月7日火曜日

死海

死海は静かで
輝いて美しく
空をたたえて
どこからともなく
吹く風すらも飲み込んで
ぼんやりと
私をみていた

2010年12月6日月曜日

街路樹

ネオン輝く街路樹に
大人着込んであなたと歩く
まがゆい光に潜んだ夜空が降り注ぎ
僕らは震える手のひら差し出した

2010年11月24日水曜日

つみとばつ

さしだすつみのしを
かたはしからたべていって
びりびりたべていって
あなたはぬれていた

いつのひかぼくがつかれたとき
おなかがへりすぎて
あなたはどこかへいってしまった
ぶりぶりとばつをのこして

あなたのふざいが
ぼくをたたせる

2010年11月23日火曜日

ぬけがけ

愛していると言ったとき
僕はあなたを
愛しているのだと知った

2010年11月19日金曜日

木枯らしに

近くて遠いあなた
知っているけどわからないあなた
赤い糸紡げないかと
そっと木枯らしに小指を立てる

2010年11月12日金曜日

さみしさ

このさみしさはどこから来るのか
吹き始めた冬風はまだあたたかい
こみ上げるさみしさは
生きてきた過ちのつぶやき
気づかぬように新しい土地へ
紛らわすように出会いを求める
さみしさが私を動かす

2010年11月10日水曜日

別れ

またねと言って
さよならと言って
そして何も言わずに
去っていく
出会う悲しみ
別れる喜び
ああ、
なにもない

2010年10月29日金曜日

2010年9月22日水曜日

くも

季節はずれの入道雲見上げた
木々の間に蜘蛛の巣あった
さわがず贈り物を待っていた

2010年9月18日土曜日

また会う日まで

また会えるのかな
誰もが季節が来れば遠くの町へ旅たつし
愛する人が見つかればその人のそばにいる

語り合った夜や探し回った夢の足跡
それが最後だとわかっていたところで
どうすることも出来なくて
いつもと同じように町を並んで歩いた
肉屋の店先でコロッケつまんで
おじさんが居眠りしてる本屋で立ち読みして
レンガ造りの喫茶店でコーヒー飲んでた

その場所に君といたしあわせな時間追いかけて
僕もまたどこかへ出かけていく
雨が降るたび朝日が昇るたび
海を思い出すたび君を感じている
忘れてやしないよ

電話やメールや手紙で感じられない
香りのする君の手触りは
このまま進んでいく道のどこかにあると信じてる
君がどうしたってあふれ出る
静かな夜にはこうして君の思い出に話しかけるのさ

生まれた人

昨日生まれた人は46490人です
ようこそこの世界へ

2010年9月17日金曜日

慈しい

誰とでも会えるわけではないのです
誰とでも再び会えるわけではないのです
どこにでも行けるわけではないのです
どこにでも再び行けるわけではないのです

慈しい
面前に広がるその一瞬一瞬が
慈しい

慈しい
目の前でくつろぐあなたが
慈しい

ただ慈しい

2010年9月12日日曜日

2010年9月11日土曜日

君へ

君は知っているのだろうか
君の美しさや可愛らしさを
聞かぬ振りをして
知らぬ振りをして
君以外の美しさや可愛らしさを見つけては
教えてくれてる
君は美しく可愛らしい
受け取り
受け入れ
微笑んでほしいのだ
そう
微笑んでほしいのだ

2010年9月9日木曜日

社会≧アイデンティティ

そのようにして一個の人間の中に
含まれた土地や思想の
交わるところを重ねては
社会はトランプゲームのように
積み上げられていく

2010年9月2日木曜日

家出

自分と向き合うのが怖くて
君から家出して
ほっつき歩いた日々

行き着くところ
見つけたかったのは君こと
歩き出す力くれたのは
君との思い出

あるだろうか
戻ってきた街の雑踏に
どこにも見当たらなかった
君の笑顔は

2010年9月1日水曜日

なつ

同じ季節が同じ年に輝き
目も開けられぬもぐらは
息をするのをためらううちに
迷いの大地でもだえ死ぬ
躯を苗床とした
向日葵はいつまでも
黄色い花弁をその季節にたむけるだろう
伸びる入道雲が時折風とともに
その臭気を洗い流した

2010年8月31日火曜日

消え行くもの

夕焼けと引き換えに
町にはビルが建ち
星空と引き換えに
夜の盛り場が出来る
愛と引き換えに
女体があふれ
幸せと引き換えに
物が増えてゆく
膨張してゆく世界が
すべてを薄く薄くしてゆく
象徴だけが記されて
すべてかすみのように消え行く
呼吸をするのを忘れた人らは
それらが消えてゆくことに気づかない

2010年8月29日日曜日

特異点

赤いわれらは
透明な時間へ漂う
二重螺旋交わる
穏やかな愛の特異点
点灯しつつ

2010年8月22日日曜日

夏草

夏草が秋を探るようにたなびいている

昔、闇は夜自由だった
今、闇は自由を求めて
人の心の中へ入り込んだ
闇は夜を待たなくなった

2010年8月15日日曜日

美辞麗句

玉砕という言葉は
見殺しにした兵士を
たたえて吹きだした

イエスを磔にして
賛美歌が
世界で歌われている

平和を凌ぐ
言葉には
生贄が足りない

美辞麗句は
いらない

2010年8月12日木曜日

夏の君

君を想うと
心がキラキラして
時はサラサラと
流れ行く

波のように
君との間に
たあいない言葉が
ゆれている

君に会えるから
心がまぶしすぎて
うまく眠れない
夏の夜

訪れと同じように
時間の中へ
思い出残して
君は去っていた

言葉はいつも
遅すぎるけど
広がる空へ
投げかける

いつか君を
金箔の朝陽がつつみ
生きている喜びを
思い出すように

君を思うと
心がキラキラして
時がサラサラと
流れゆく

小船

計り知れないことを
無限と呼んで
そのままの姿で
あると思うことの
傲慢さ

死や終わりは
常にそばにせまり
たあいのない
その幻想を飲み込んでゆく

悲しむことはない
それは単純なる
事実にすぎない
今有限のうちに
前へ前へと進んでいく力に
私らの自由と呼ぶものの中に
含まれているのと
同じように

囲われた海へ
放り込まれ
内なる灯台の指す方へ
痛みや疲れ
眠気や悲しみを従えて
進んでゆく圧倒的な小船を
澄み渡る空は
憶えている

2010年8月5日木曜日

アモイ

陽の落ちる街並みを
家路へ急ぐバイクが走る
赤土に木々の影が
浮かんでいる

2010年4月15日木曜日

出航叙景

穏やかな潮風に
船首からのびる万国旗がたなびき
白い体を静かな入り江に横たえて
時のくるのを今か今かと伺う船

好奇心にしびれる乗客と
汗にまみれたクルーが船の血となり
駆け巡る

愛する人の紙テープが
磨きこまれた甲板の上を
どこまでもどこまでも転がりつづけ
空行くかもめの道しるべとなる

錨が引き上げられ
合図のドラが鳴り響き
白い体が波の招きにあわせて
沖へ沖へと吸い込まれていく

汽笛が鳴る
日常を区切る
汽笛が鳴る

2010年3月21日日曜日

バクの会へ

私が私を嫌いだった頃
それでも受け入れてくれる場所がありました
私が私を少し好きになった頃
それでも変わらぬ場所がありました
小さなそろばん塾から
プレハブ建屋
飲み屋の一角
建物は変わっても
変わらぬ場所がありました

私が私を大切にし始めて
私が私以外の誰かを大切にし始めて
私がその場所へ行かない時間が多くなって
私がいい気になって遊びほうけてほったらかして
私がいい気になってつまずいたとき
それでも"今は元気なの?"と
言葉をくれる場所がありました

私もみんなも髪が薄くなったり白くなったり
話がかみ合わなくなって笑ってるだけになったりでも
全然いたってかまわない
そんなあたたかな場所がありました
私を見つめてくれたあたたかな場所がありました

私も誰かのそんな場所となれたなら
そうすれば なくなっても
失われはしないのです

22年間ありがとうございました

2010年3月20日土曜日

白き灯台
白き波
白き空
白き砂

どこまでも
青き海

暖かき陽と
心慰める潮風
松ぼっくり
記憶の泡波

君の名は海
あの日あった
君の名は海

2010年3月19日金曜日

牛舎利

深夜営業の牛丼屋へ入る
母と同い年くらいのおばちゃんが
目を真っ赤に腫らして配膳している
丑三つ刻

ああ、母さんもう寝てください
僕が働きますから
ああ、母さん頭を下げないでください
僕が謝りますから

僕は砂利をほおばった

2010年3月11日木曜日

ゆりかご

そのゆりかごは
常に動いて突然我等の前に浮上する
善きことも
悪しきことも
美しきことも
醜きことも
それらは想いの振動で変化し流れる

自由があるというのなら
それは
その想像の自由さ
その想像にいのちを与えるのは
沈黙

長き沈黙より生じるものを
詩人は言葉で
絵描きは絵で
音楽家は音で
捉える

ゆりかごがある

2010年3月4日木曜日

スケート

スケート靴紐うまく結べなかったら
誰かに手伝ってもらえばいい

いろんな紐うまく結べなかったら
手伝ってもらえばいい
君を見守る人と

一人では結べない紐もあります
転ぶことも少なくなります
起き上がるのも早くなります

2010年2月10日水曜日

超短編

『強盗団とステーキ』

強盗団がステーキ屋に入ったのだが
肉を焼く音に驚いて引き上げた
店内の片隅ではギンズバーグが詩を書いていた
肉は厚さが20センチ以上あり血が噴出し
肉はまだ生きていた

『園児の来る店』

金を貸した男が通りの向こうから
笑いながらやってきて俺にキスをした
「金は古書店にある」と言って立ち去った
俺は古書店に行ったが店主は金を預かっていないという
そこへ園児を引き連れた女が現れ
見学させてくださいとぐるぐると店内を回り始めた
園児の数は200名を超えていただろう
店は園児であふれた。
帰り際、数人の園児が俺を見つけて
金を差し出して去っていった
金は返された

2010年2月3日水曜日

いつまで降りますかと
訊ねてみても
雪は答えてくれない
とても寒いから
地上への降り方を
嫌われないように工夫してる
積もった雪は暖かそう
でも触れると冷たい
それでも誰かがそばにいることを
教えてくれる

2010年1月29日金曜日

雨の妖精

夕立が上がり
すれ違う声が
雨の匂いがすると教えてくれた

人混みにまぎれて
顔も姿もわからない
それは雨の妖精

乾いた街の中に入り込んだ
それは雨の妖精
私は雨の匂いを吸い込んだ

2010年1月28日木曜日

裏切り者

幼稚園でのドッチボールの時間
耕介くんは白組の外野
美香ちゃんは赤組の内野
笛の音でゲームが始まる
わいわい、いけいけ

耕介君の所にボールが転がってきた
いつも一緒の美香ちゃんは
やっぱり耕介君のそばにいる
耕介くんは空に向かって力いっぱいボールを投げた

「おーい、耕介ー!そっちじゃねーぞー!」

2010年1月27日水曜日

女優

ガラスの靴を忘れたシンデレラは
物語の人物だけど
靴のかかとを忘れた君は
美しい肉体を持った女

君の躍動する命の輝きは
指先や髪の先にまで張り巡らされ
赤い靴を履くしなやかなふくらはぎは
大地に力を伝えるつなぐコイル

照明の落ちた暗転の中
ネガフィルムへ焼き付けられた
君の肉体の叫びは静寂へ浸かり
いっそう鮮明に浮かびあがる

2010年1月26日火曜日

痕跡

誰が来たのか
誰が去ったのか
それはなんとなくなくなる

なにがあって
なにが終わったのか
その痕跡すらなんとなくなくなる

私も誰かから
この世界から
なんとなくなくなっていく

2010年1月21日木曜日

その時海は銀色だった
青は空
空は雲で海の真似をしていた

その時海は金色だった
オレンジの朝陽
海へ金色の道を敷いた

その時海は鉛だった
風は恐れて
波の陰に隠れていた

その時海は暗闇だった
月がくすぐっても
息を飲み込む暗闇だった

海は・・・
海は・・・
海は・・・

その時海は殺人者だった
幼い私の足をつかんで殺そうとした
私は逃れようとどこまでも泳いだ

その時海は恋だった
行けば支配されるとわかっていながら
私はもぐりこんでいった

その時海は音だった
どこまでもやさしい母のように
私の嘆きを美しい旋律にした

その時海は永遠だった
私が記すときと同じように
その時海は永遠だった

海は・・・
海は・・・
海は・・・

2010年1月20日水曜日

ひとつの種が放り込まれ
流転する景色を眺め
闇へ思考を沈めゆくうち
幾年かの夜明けその種は
輝く陽光を受けて芽吹く
草木のそれと同じように
われら人間も陽光により芽吹く
草木のそれと同じように
われら人間も闇により育まれる

2010年1月18日月曜日

白猫

その白猫は誰かのそばでは眠らない
その白猫は誰もいないところでも眠らない

2010年1月17日日曜日

テスト

流れ込んでくる なにか
それは私の内部であり外部である なにか
理解など出来ようもない なにか

音に近い言葉の提示
それでも生まれるスタイルやフォルム
言葉へ落とし込むことによって

それは 体へ 流れ込んでいるものと
同じ わたしは鐘の音の傍にいたい
yyyyyyy

2010年1月14日木曜日

ヒロシマ

災いの火が
生活の灯を喰らったが
イノチノヒは
焼けた瓦礫の慰霊碑を
川のほとりにわざと残した
希望の日
登れと

2010年1月10日日曜日

鞆の浦

月の雫が入り江に落ちて
蒸気船の話し声に
釣り糸が漂うよ
鞆の浦

灯篭の灯りを魚がめざし
石畳の隙間で影が笑う
島々が亀に化けて竜宮へ誘うよ
鞆の浦

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす