2012年7月31日火曜日

蝉時雨

蝉時雨の注ぐ夏
この夏産まれた蝉が
いつかの夏に時雨る時
人々に注ぐものは何?

見えなくても
聞こえなくても
どうか育むものであれ
どうか結ぶものであれ

2012年7月30日月曜日

岬から


ほおづえをついて話す君
焼けた肌に街のシルエット
声に潮風訪ねて
眼差しに浜辺ゆれて
僕も君と思い出を旅する

2012年7月29日日曜日

エノコロ

前髪をおろしている
処女の
整えられていない
狗尾眉毛

白く細い指が
微かに震え
梳きあげ
露わになる

めがけて
風はもぐり
太陽は嗅ぐ
血汐が張る

2012年7月28日土曜日

にがい荷

踏み越えたくない
ボーダーを
押し出されて
あるいは気がつかず
身体はアルカリ性
土砂降りの
にがい荷にさらされ
心体は酸性
中空を見上げて
拭うことの出来ない
にがい荷が
積み上げあげられる過去に
染みていく

2012年7月27日金曜日

店主と客

うちの店には来ないでください
お客さんにはしたくないのです

後悔していることがあります
始めてあった時に
愛を告げなかったのかと

あのことばが私に向けられたものであったら
どれだけしあわせか
あなたに愛されてみたいと思う

かつて嘆くひとをみた
今はよくわかる
うちの店には来ないでください

2012年7月26日木曜日

静かなところ

空き地だったところは
虫けらをのみこんで
工場になりました

工場だったところは
貧乏人をのみこんで
パチンコ屋になりました

パチンコ屋だったところは
働かなかった人をのみこんで
宗教施設になりました

宗教施設だったところは
争う人をのみこんで
基地になりました

基地だったところは
すべての人をのみこんで
墓地になりました

墓地だったところは
季節をのみこんで
空き地になりました

人はいません
静かなところです

2012年7月25日水曜日

7月のソネット

七月の頂きに新しき景色
傍にささやかな花の微笑み
昼に育まれる光の雨
なじんだ場所に別れの鐘を告げて
押され導かれ歩みゆく
思い出の中でならば美は永遠
心に寄り添う雲雀の唄聲
清涼な風のしめす方角
森に偉大なる虫の営み
夜に慰める静寂の海
辿れば見えるものは見えざる美へ
辿れば見ざるものは見える美へ
時の環を抜けて美となるのだ 
思い出さねばならぬ時は来た

2012年7月24日火曜日

2012年7月23日月曜日

鎮魂

ため息が空を覆い尽くし
光は遮られ閉ざされた
大気は停滞し街に沈む
時は遡り地球が湿る

2012年7月22日日曜日

3度目の夏

泣き出したわけ
わかならいけど
つないだよ

怒り出したわけ
わからないけど
抱きしめたよ

行き去ったわけ
わからないけど
忘れるよ

3度目の夏は
思い出じゃない
新しい薫りを
抱いて眠る

2012年7月21日土曜日

俺は鳩

ああ、ここはいつか来たな
このアンテナいつだか来たな
母に連れられて来たか
友達だったか恋人だったか

このアンテナいつだか来たな
庭に枇杷の実がたくさん落ちてら
昔はアンテナ屋根はあったのに
今じゃ丸いのばかりで掴まりにくいや

このアンテナいつだか来たな
ベランダに行けないや
喰われるかもしれないからな
女の子がいつも寝てら

ほら、起きた
そら、逃げろ
どら、捕まるもんか

2012年7月20日金曜日

とびら

とびらひらけば
みしらぬせかい

みしらぬせかい
ながめれば
いろんなできごと
みしらぬせかい
あるけば
いろんなひとびと

みしらぬせかいと
はなしこめば
こいをして
あたらしいとびらが
あらわれる

すこしかなしいけれど
おわかれをつげて
ふたたびとびらをひらくんだ
 
いくつかのとびら
ひらくうち
いつかきたせかい
かつてこいしたひと
いごこちのいい
みしったせかいに
たどりつくんだ

そのときぼくは
とびらになるんだ

2012年7月19日木曜日

罪と罰と悦

すべてをさらしてないと

なんてことはない

ぜんぶかくさないと

なんてことはない

さかさにした重くある
罰は
氷のような孤独として
のしかかる

さかさにした
悦は
大気のような孤独として
ただよう

2012年7月18日水曜日

黄金虫

美しさを認めてくれる人の元へ
闇夜を飛んで朝陽に尽きた黄金虫
やさしき掌に眠る

2012年7月17日火曜日

遠くで遠くへ

轟音騒音爆音
突っ走る
環七沿い

途切れ途切れに
するりと抜けて
唄声がする

空を見上げて
ギターを弾く青年
遠くで遠くへ


ギターケースに
ライブのチラシと
僅かな小銭


反響残響
高架橋のトンネルに
唄声がする

壁を見つめて
ギターを弾く少女
遠くで遠くへ

唄われた心は
紛れたりはしない
かき消されたりはしない

遠くで遠くへ
どこよりそばへ







2012年7月16日月曜日

薄明

肩に触れて気がついた夏
肩に触れて目覚めた君
肢体に薄明が重なり
肩に朝の帳がおりている

2012年7月15日日曜日

夜に

月明かりに
影はたたずみ
足音遠のく

灯火流れて
月日重ねて
薫りつつむ

2012年7月14日土曜日

フィルム

いつの日からか
カラカラカラカラ

イメージの染みた
記憶の光は流れだし
僕らの流れる水面を照らし
川底にそよぐ水草をみせる

僕らもまた呼吸を
僕らもまた鼓動を
いつの日か光る
そのひとひらに移し始める

2012年7月13日金曜日

言葉の解らない異国の詩を前にして

遠い国の 重い昔の 近い未来から
何か叫んで 何か言っている
太陽のことかもしれないし
女のことかもしれないけれど
言葉や音階 突き抜けて 会いに来た

高い壁の 硬い岩の 深い森から
何か呻いて 何か発してる
いきどおりかもしれないし
ふがいなさかもしれないけれど
長さやかたち 突き抜けて 会いに来た

かっこいいだろ
ともだちだろって
その輝きのなかに

たぶんそれ、奴をみたんだ 僕は
たぶんそれ、魂をみたんだ 僕は
たぶんそれ、愛をみたんだ 僕は

2012年7月12日木曜日

2012年7月11日水曜日

詩人へ

哀しみはことばで流せ
苦しみはことばで笑え
空白はことばで埋めろ
喪失はことばで戻せ
憎しみはことばで断ち切れ
怒りはことばで愛せ

喜びはことばで謳え
生命はことばで讃えよ
好きな存在の名はことばで叫べ

ポエム
ポエム
ポエム ...

自分の世界はことばで語れ
ことばを信じて真実をつくれ

ことばは拾われる

2012年7月10日火曜日

曼荼羅の花

みかけて
気にして
水をかけて

昨日のこと
明日のこと
話しかけて

時が包めば
路傍の石にも
曼荼羅の花

2012年7月9日月曜日

懐かしい歌

懐かしい歌口ずさめば
誰もが瞳輝き
歩いてきた路を
思い出している

言葉 音 リズム
誰かが受け止めて憶えている

君の空にも届くだろうか
たとえばふいに
降りだした雨のように
たとえばふいに
吹き出した風のように

前触れもなく訪れる
やさしい言葉
穏やかな音
かすかなリズムに

君は気が付くだろうか
心は思い出すだろうか


2012年7月8日日曜日

みみず

雨上がり
路上に這うている
波打ちながら
からだすすむ
何を考えているのか
一切わからない 

土を食い浄化
目、手、足、性別を捨てて進化
食物連鎖の最下層で
生きとしいけるものに身を献化

考えなどわかるはずがない
 仏よ
みみずは仏よ
仏の鼻みみずよ。

2012年7月7日土曜日

七夕

嬉しいことを話すと
妖精がおしゃべりで
悪い人にも伝わるから
言わないほうがいいって
そんな話が遠い国に
あるって聞いた

今日は七夕
曇りだったけれど

☆☆☆ました。
    ☆☆☆です。
       ☆☆☆ね。
           ☆も
          ☆も
            ☆も
              ☆☆☆よ。
                                ☆☆☆☆。

2012年7月6日金曜日

おはようございますおやすみなさい

おはようございます

本日も目覚められたことに感謝
合掌

本日も詩の記せることに感謝
合掌

本日も空を見上げられることに感謝
合掌

本日も飲んで食べられたことに感謝
合掌

本日も本を読めたことに感謝
合掌

本日も働けたことに感謝
合掌

本日も友といられたことに感謝
合掌

本日も愛する人のあることに感謝
合掌

本日も祈りを捧げられたことに感謝
合掌

本日も昨日を確かめられたことに感謝
合掌

本日も明日を見つめられたことに感謝
合掌

本日も今を生きていることに感謝
合掌

本日も眠りにつけることに感謝
合掌

おやすみなさい*

2012年7月5日木曜日

未来を思い出す

ジャンコクトーという詩人がいた
詩人は未来を思い出す
といった
出来るものかと未来を思い出してみた

ああ、君も逝くか
ああ、君も去るか
ああ、僕も逝くか
ああ、僕も去るか
ああ、あの薔薇は君か
ああ、あの薔薇は僕か

かなしくて仕方がない

2012年7月4日水曜日

ナイフ

嘘をついた
傷つかないように
傷つけないふりをして
傷つかないように

政府、東電、メディア、僕

ナイフを握る
柄も刃の
ナイフを握る

2012年7月3日火曜日

クリームソーダ

あの人とクリームソーダ飲みたいな
あの人とかき氷食べたいな
あの人と尾瀬行きたいな
あの人とポルトガル行きたいな
あの人とサッカー観たいな
あの人と珊瑚観たいな
あの人と魚になりたいな
あの人と風になりたいな
あの人と星を照らしたいな
あの人とご飯を作りたいな
あの人をアイスみたいに食べたいな
あの人にソーダの泡みたいに飲まれたいな
汚れて嫌われてもいいけど
あの人がわからなくなる
あの人にはなりたくないな
あの人とクリームソーダ飲みたいな

2012年7月1日日曜日

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす