2018年5月29日火曜日

忘れ去られた横断歩道にカモメが一羽
夕暮れ間近の場違いな海辺とどこが似てる?
いつだかの暗がりの中でさぐりあった肌のあたたかさを
なぁカモメ、君も憶えているだろ?
2018.5.25

2018年5月20日日曜日

同じに思える風の中に
新しい色がまぎれこんで
しだいに音に変わっていく
かき混ぜられた紫色の交響曲
ナイルの反乱に飛び込んで日々を裏ごしして
ピュアな木の葉が降りつもる
ああ、光の芽が高速でふき出して
矢印をつくっている

2018.5.11

2018年5月17日木曜日

首筋の伸びた君が一秒を細かく細かくして歩いてくる
鼓膜に届く微かな微かな君の足音
どこをイメージのイメージの中で進んでいるのか
遠い岬の灯台が光を回して届くところまで届くところまで行くように
君が世界を世界を新たに照らしながら照らしながら歩いてくる
私に、私のところへ
ああ、
私に、私のところへ
ああ、君よ
七色のプリズムの幻

2018年5月7日月曜日

白い紙たちの沈黙が呼びかける

白い紙たちの
沈黙が呼びかける
記されるべき言葉の
描かれるべき線の明日は

この呼吸の
この血の
この時の
先に

確かなことそれだけをまず記す
おはよう
わたしはあなたと過ごせて
どれだけしあわせかわかりません

部屋に虹
部屋に光
窓から
そう 窓から


2018年5月2日水曜日

大切な人と一緒にいられること
美味しいものを食べられること
快適な場所にいられること
私の仕事が世界の役に立つこと
美しい風景の中にいられること
安らかに眠りにつけること
湯船にのんびりと浸かれること
芸術作品を日々創り続けられること
これらの訪れに感謝していられること
隣人に祝福と祈りを捧げられること

ひとつ先の角を曲がれば
長いこと街を見てきた大きな木がある
あなたにとっての懐かしい風景は
私にとってのはじめての風景
あなたに導かれて歩いて行くことで
その角が今日から私の想い出の一部となる
いつの日かまたこの角を曲がり
この木に出会うとき
私は挨拶をするだろう
そしてこの木目に触れて
あなた指先を思い出すだろう

登る朝陽、とっぷり浮かぶ月に出会い
正面切って向き合える詩を思い出すだろう
光のある未来の創り出せる詩を思い出すだろう

蜘蛛

地上10階のこの部屋に蜘蛛の歩いているのをみた
マンションが改装中で外壁に足場が出来てそこをのぼって来たのだろう
巣を張るのだろうか自分だけの住みか
自分の体から出てくる糸を組み上げ食べ
眠るところを作り、飛行する
移動して形づくる
透明な生の為すまま
蜘蛛は私に気づいて動きを速めとどかぬ所へ
死を逃れて

2018年4月27日金曜日

あの日から3年が過ぎた
信号待ちの白い部屋から
トビウオが逃げ出した
どこからともなくの電線が
昨日と明日の間に鎮座する
鉄塔がに絡みついて
ツーツーツー
通り過ぎた自転車の学生たちが
影を追い越しながら
消えていく
少し痩せた君の雪だるまのようなおにぎり頬張る
深夜タクシーから遠い未来の約束をして別れたあなたと過ごせる時間があと1日あるだろうか

柱時計の告げる
詩の始まりから
巻き上げられるネジ
幾千もの振り子が
夕暮れを追いかけた
麦わら帽子の未来を約束していた

インクの匂いを忘れずにいることで
かつて咲き乱れた花々
(例えばパンジー)(あるいは向日葵)

凍える駅のホームでも
星々の中に持つことが出来る

私はその夜に流れる
ひとつの河を見た


2018年4月19日木曜日

影が濃い冬のある日

影が濃い冬のある日
像は過ぎ去り気配がまたひとつ
​世界を覆う

2018年3月4日日曜日

光にまぎれて春の薫りが路地を通り抜ける
暮れてゆくその日をとどめたくて
時間の流れのゆるやかなところへ行く

どのくらいの距離から
どういう形で届いてくるのか
光、音、あるいは味

その大きな窓から見える景色と移ろいゆく存在
夜の訪れる少し前に音のない花火が開く

2018年2月20日火曜日

白い紙たちの
沈黙が呼びかける
記されるべき言葉の
描かれるべき線の明日は

この呼吸の
この血の
この時の
先にあるだと

おはよう
わたしはあなたと過ごせて
どれだけしあわせかわかりません

確かなこと
それだけをまず記す

虹が部屋にはいり込んできた
いつかあなたにもみせたい
放物線が空と地面を分けていた
呼吸を整えながらもたれかかる君を
白い窓辺からみていた
許された時間のわずかなのを知る
階段の格子の影が移ろうのに似て

2018年2月9日金曜日

さらばあたえられん

あかるいひざしのかなで
わたしはきょうもいきていることをしる
でんしゃのゆくおとがする
つけたままねていたでんとうがついている
まちでびるをたてるおとがする
そこにはだれかがいて
わたしもそこにいるのだ
なつかしいひとたちにあうゆめをみる
のこされたしゃしんが
そこにわたしのいたことをしょうめいする
まだふざいのあしたやみらい
かつてふざいだったいくたのじかんやばしょ
こたえをだれもよういしてはくれない
のどがかわいた
わたしはきょうもいきていることをしる
もとめよさらばあたえられん

2018年2月1日木曜日

絞り5.6 速度1/125

もたれ掛かりくる君の腕に
1月の雨の雫おちる
透明な傘さしてほお赤らめる君に
夕暮れの刻のおちる
絞り5.6 速度1/125

鳥取

真っ白な雪が朝目覚めると景色を覆いつくして
その中で屋根のあることを思いながら
湯を沸かして朝食の準備をする
米とみそ汁シシャモに納豆、卵。
じょりじょりしてる雪道と鷲の羽ばたくような山並み抜けて
小学校の校庭、雪に埋もれた電気自動車。
鳥の置物がたくさんある廊下。
腰丈の灯油ストーブ。黒光りするリノ
白いスクリーン。ラジオ体操。
声、声、身体、身体、真実、真実、虚構、虚構
夕暮れ、月夜、鍋、下着、台所、やかん、お菓子、カレー
イラスト、結婚、ゴリラ、200円、ぼんやり
一軒家に偽物の親戚

あぁ、美しさとはつまり欠如

『夕暮れ』

さかさまの
天井が黄色キャンバスに
描かれて行く
予定された
シュークリームの甘さ

かなたのこと
とどく光の道筋
溢れてくる
美しい言葉だけを
紡いでいく

反響する
時間たちが
ほらまたそこここで
睦びあう


埋もれていた古い手紙コーヒーの滴が花もよう
湯舟に頭の先まで浸かって
あの日のことばを泡にする
ー雨が好きだー
巡りゆく季節の雨が弾けるたび
私も見知らぬ誰かの声を聴く

2017年10月29日日曜日

眠りと目覚めとに
ひかりとかげとに
記憶と夢想とに
永遠と刹那とに

あぁ、ミューズ


2017年10月25日水曜日

日々が失われていく
あれほど心に誓った願いや想いも
塗り替えられてゆく日々に埋もれて
掘り返さなければ見つけられない
手のひらを空に向けて
あの日から流れてくる雲の端を
掴もうとする
握られた拳を
そのまま胸に打ちつける
何度も何度も
動け動けと
祈りににて

2017年8月15日火曜日

たそかれ

浜辺から見える
水平線の漁火に
焚き木の火が混ざる

いつの日かのカモメのように
あなたは潮風の中でそれを見つめていた

ざわめいた波があなたをさらおうとしていた
雲の切れ間から黄昏があなたをさらおうとしていた

とても静かなの

と、あなたはささやいた

2017年7月16日日曜日

それでさそしたらさ

約束を果たしながら虹の足元を探しているんです
見上げて流れて行く雲が笑っているんです
何もないところに指で筋をつけて遊ぶんです
おまじないみたいに合図を送って呼んでるんです
浜辺に打ち寄せる波は忘れたい言葉を流すのによくて
海を渡ってどこかの浜辺にいる誰かの口に移って飛び出してくるんです
見えないけれど優しく生命のある言葉がミルフィーユみたいに
積み重なってさ
積み重なってさ
それでさそれでさ
そしたらさそしたらさ

2017年6月25日日曜日

さざ波

週末のギャラリー
人の海
いい薫りがする
ああ、君

「美しいですね」
「ああ、ほんとに」
ああ、君
ああ、さざ波

2017年4月15日土曜日

2017年3月31日金曜日

飛行機雲

君の街の空には飛行機雲があるんだね
夕陽がトマトみたいに赤い
君はそこを歩くんだね
君はここに暮らしているんだね

そこで僕は駆け出した
急いではいたんだけど
そういうことでなくて
飛行機雲を追いかけるように
僕はかけだしたんだ

2017年3月29日水曜日

電灯を消して天井がどのくらいか見えるかなな夜に

電灯を消して天井がどのくらいか見えるかなな夜に
だんだんと夜が明けてくるのを待つのです

温もりから窓を開けますと
物干しざおにかかかる 空っぽの洗濯ばさみに
陽光がほされて足をぶらぶらしてるんです

石鹸とビオラがつつきあって露をはねる
冷蔵庫の中で昼寝する茄子と大根をひっぱりだして味噌で煮る
吹きかえる湯気にシンドバットの蜃気楼
オアシスに浮かぶ花びらを手のひらですくうんです

いつだって日々を閉じ込めて薫りがする
そう、哀しい記憶ほどいい薫りがする
だからもう泣かないでください それでよかったのですから
アパートの白壁がね ギリシアのミコノス島みたいに見えるんです

いつだって少したってから青春は訪ねてくる

2017年3月22日水曜日

はなればなれに世界はありまして

はなればなれに
世界はありまして

みぎて よるのき
わらう かぜ うしろ
雨のしじま 卓上ランプ
ふりこ時計 ボボン 一輪挿し
コーヒー 古本 とりおき
キャバレーの娘
スケッチしたての赤ちょうちん
すりガラス越し

はなればなれに
世界はありまして
詩はなかった

でも君が来て
世界は詩になった

君を知るまで
詩はなかった

2017年3月20日月曜日

指先

あの夏の楽しかった波打ち際で
水面から燕が飛び出して
秋を迎えに行ったね

明けがたの別れ際で
少し話があるんだって
嘘だっていいから
飛び跳ねた風船をみつけたらよかったね

指先がいつも明日のスイッチを押して
コンベアーに乗っかって
螺旋階段のすみを見つめているんだ

そこの交差点を曲がれば
目的地はすぐ
そこで待っていれば
来るんだ

そのときは知らなかったんだよ
そうそれは未来のことだからね
そのさきも知ることはないんだね
そうそれは起こらなかったことだからね

そう指先
指先が
描かなかったね


そうやって生きます

生きている僕は
生きます
食べます
息をします
歩きます
働きます
唄います
笑います
泣きます
話します
見ます
聞きます
嗅ぎます
触ります
寝ます
そうやって生きます

ときどき
生きることは
怖いから
生きることは
苦しいから
生きることは
悲しいから
優しい人と過ごします
そうやって生きます

2017年3月17日金曜日

湊にて

港街の
青い海の

白い漁船が
真昼の太陽に照らされて
揺れている

身体を縁取り
墨汁のような影が
地面に染みる

娘が聖域の中で
光を捧げて影になる
娘をさらいに風が吹く

唖の娘は糸を垂らして
ここへ、ここへと
往き来しながら合図する

湊の
青い海の

永遠が落下する

2017年2月5日日曜日

あしたがくる

ふらりといって
ふわりとのんで
あしたがくる

ふたりでいって
やきにくやけて
あしたがくる

ことばがひらひら
きぶんがふわふわ
あしたがくる

おんでもおふでも
さんでもむーんでも

さよならのじこくがきて
さようならのときがきて
それで
あしたがくる

2017年2月2日木曜日

2017年1月22日日曜日

座りてハラハラを眺め



遊歩道にあるベンチに座る

シダの屋根の隙間から青空がのぞいた

隣に1人の老人が座り

シンセイを吸った

吸い終わると去った




スーツケースを持った青年が座った

スーツケースに身を預けるようにして

臥して座った

冷たい北風が吹き抜け

私の吸ったタバコの煙が青年に流れていった

青年はひとつ咳をすると

立ち上がって去っていった




どこかでみかけた顔が通り過ぎて

声をかけようとしたが、

イヤホンを耳にしていたので

私の声は届かなかった

知らない顔だ




煙が空に浮かんで行き

雲を作って桜になった

ハラハラと、散る

ハラハラと、ハラハラと。

2017年1月18日水曜日

いろはにほへと

ひと駅先のあなたの店
今日も寄れずじまい

居待月がツンとした空に
のぞいていた

文字や絵文字の
おはようとおやすみ
やりとりしていた
満ち欠けの間に

ハードディスクの中の笑顔
アイホンの中の愛してる
全部ディデイトして

たあいない
たよりない
あいまいな

いろはにほへと と
ちりぬるを を


2017年1月13日金曜日

抽象画

5年くらい前、高円寺のライブハウスの控室に抽象画のいい絵があって、欲しいなと言ったら、マスターが描いた人を紹介してくれた。「絵を売るのは初めてなので」というので彼の滞っていた携帯代と引き換えた。それから全く会っていなくて、昨晩、昨年、酒飲んで階段から落ちて死んだって話聞いた。

2017年1月9日月曜日

厨房にて

トマト、レタス、キュウリ、パプリカ。
水菜、アボカド、ブロッコリー。
インゲン、カイワレ、スモークサーモン。
ワカメ、タコ、ツナ、ローストポーク。
セロリ、ギュウニク、マスタード。
ダイコン、クルトン、タマゴ、チーズ、ホウレンソウ。
ナス、ジャコ、ピーマン、ウインナー。

テリーヌ

庭先に梅が咲いていた
金柑がたわわになって地面に落ちていた

苺をほおばり
笑い声が響く

夕陽は今日も水平線を染めて
はしゃぎ疲れた子供が自分の世界で眠る

でんでん太鼓のやわらかな音が
夜のしじまに溶けてゆく

そんなある日の一日のテリーヌ




2017年1月7日土曜日

私は亀でよかった
星に見守られて暮らす
私は亀でよかった

2017年1月5日木曜日

念には



言いそびれました
やりそびれました
書きそびれました


一念3千という言葉があって
一念の刹那の中には
3千もの様相が絡み合って出来てるそうな


言いそびれました
やりそびれました
書きそびれました


服、かわいかった
声、心地よかった
今、美しかった


正しさじゃなくて
正直さを
念にはいれて


そびれた慈しみを
せめてこの
念にはいれて

2017年1月3日火曜日

公園

アパート前の公園
正月から賑やかに親子が遊ぶ

遊具の丘の上から滑りおり
木漏れ陽注ぐ木々の隙間を走る

いつだかの雨の日
オレンジの傘をさして君があるいた

いつだかの冬の日
霧の中を君があるいた

陽は落ちて
時は流れて

公園は憶えているのだろうか
木々は憶えているのだろうか

通り過ぎた親子を
通り過ぎた僕らを

悪い奴と暮らす

少し悪い奴と暮らすんだ
毎日がめちゃくちやで面白いから

少しワイルドな奴と暮らすんだ
住むところがジャングルだから

飛び跳ねてすべりこんで
ひっぱたいてよじ登ぼる

黒い奴、茶色い奴、
ぱっかりはらを割って暮らそう

あけすけにはしゃいで
適当にしつらえて

少し悪い奴と暮らすんだ

poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair