2008年11月11日火曜日

残炎

ああ

この苦しみは
通過儀式なのか

それとも道を
たがえただけなのか

わからない
僕にはわからない

ただ
あまりにも
僕は恋の悦びを
感受したために
もう
なにも
残ってはいない

生きていることへの
悦びを
恋の悦びに
重ねすぎたのだ
僕は
魂を
あの
ベアトリーチェに
捧げてしまったのだ

ああ

あなたは去ってゆく
僕にもたらした
すべてを持って
去ってゆく

残された僕は
ひたすらに
煉獄の炎に
焼かれるしかないのだ

なんと残酷な!
あなたの
しあわせが
僕をさらに烈しく焼きつけるとは!

ああ
ベアトリーチェ
どうして
すべてを焼いてくれないのか

僕はもうこの残炎より
動くことができない
逃れることもできない
目を開けることもできない

ただ
この苦しみが
通過儀式であることを
祈るだけなのだ
愛への

だが
わからない
僕にはわからない

0 件のコメント:

季節が来て 人ははなれて 風が吹く 冷たい手のひらで 去っていく 金魚 煙であればいい 背徳の館に 君の影が さす