2011年7月7日木曜日

琥珀さんへ

どっかいっちゃう背の高いマスター
先に空っぽのカップ持って来るママ
たいてい埋まってる麻雀ゲーム台
モーニングピザトーストと
サービスピザトーストはパンの厚さが違う
客の残した水は観葉植物が飲んでいる
毎週欠かさずリード社の漫画雑誌
四十年を
引いて淹れてた珈琲店
青春 思い出 恋 涙
煎って入れてた珈琲店
壁に飾られてたコーヒーカップ
今頃、空に浮かんで
さようならの夕立ち受けて
雨出し珈琲
次 ここ琥珀で飲む珈琲は
来世か来々世か夢の中
ここ琥珀珈琲
湯気が
通り過ぎた人の記憶の中で昇っていく
ここ琥珀珈琲
香りが
通り過ぎた人の記憶の中で琥珀になっていく

2011年7月4日月曜日

聖域

遠い町の
遠い昔の悲しみは
テレビとラジオでやってくる
新聞のインクの香りでやってくる
youtubeに残ってる

おまえのせいだと
おまえの父の
お前の祖父の
お前の国のせいだとただされる

遠い町の
遠い昔の悲しみは
愛する友の口からやってくる
敬愛する恩師の手紙からやってくる
行く先々の土地の味に残っている

誰のせいだと叫びたてて
敵を作って聖域を作るのだ
不発弾を抱えた聖域を
誰もが作ろうと叫んでいる

2011年6月9日木曜日

やさしい幻

食べるものの
飲むものも
目に見えない病に侵されて
生きてくことを閉ざされている

外を歩くことも
語ることも
止められた世界のなかで
死ぬことを罪とする

空を消したのはなに
山を埋めたのはなに
海を怒らせたのはなに

耐える人々は震えて祈る
愛することさえ哀しみに飲み込まれ
寄り添うことさえ疑いに喰われていく

幻を信じることでしか生きられないのなら
やさしい幻を信じたい
幻の中から作り出された
やさしい幻を信じたい

スタイル

花には花
コーヒーカップには
コーヒーカップ
森には森
あがた森魚にはあがた森魚
僕には僕
その文字、音、色、におい
世界にはスタイルがある
生きるための
活かされるためのスタイルがある

2011年6月5日日曜日

携帯

マナーモード
震えてもないのに
震えた気がする
あなたからではないかと
震えていたのは私

うらない

くる
こない
くる
こない

花を一輪つんで マーガレットだったか
白い花
はなびら 一枚 一枚 ちぎったよ
           幼い頃

今も僕は幼いまま

はなびらのかわりに 一文字 一文字 綴って

キ(くる)
ミ(こない)
ハ(くる)

ク(こない)
ル(くる)
カ(こない)
ナ(くる)

コ(こない)
ナ(くる)
イ(こない)
カ(くる)
ナ(こない・・・

こらぁ!

2011年5月30日月曜日

一方通行

僕は君に贈り物
君は彼に贈り物
彼は誰かに贈り物

それでいいや

知らない外国の歌がラジオから流れて
いつしか流していたよ涙

歌詞がわからなくても
僕がよくわからなくても振るわせるものがある

よくわかっていなくても
よくわかっていることもある

感じられるままに
感じることを感じればいい

よくわからないままは
わかなないままでいいや

2011年5月12日木曜日

あなたのいない日常は
ブラックホールに落ち続ける
ひと粒の砂に等しい

2011年4月8日金曜日

鎌倉の春

野花が揺れて
風の歌声
君を探して
ヴィロードの道
散歩していた
鎌倉の春

メメント・アモ

そうして僕らは生まれた
流れるひとしずく
寄り添い
愛を想うあたたかさに
つながれて

忘れがちな
どこにでもだれにでもある
愛を想うあたたかさ
メメント・アモ

あなたへ私から
私へあなたから
メメント・アモ

あなたへあなた自身から
私へ私自身から
愛を想うあたたかさを
ひそやかにでもたしかに
メメント・アモ

2011年3月25日金曜日

ノート

君からもらったノート
最後のページ

夏のしおりが挟まれてるのは
君に最後に会った日付

ノートにはいい詩が少し
よくわかんない詩が少し
さよならたくさん

なつかしさあふれるときまで閉じておく

ノートにはいい詩が少し
よくわかんない詩が少し
さよならたくさん

2011年1月31日月曜日

かいわれの種

こげ茶の種
ひとたびの水
ものの数日
たくましき森

飼い慣らされた我の種
その身を旅で満たし
空へ伸びだせ
大地を茂らせろ

かいわれの種

2011年1月27日木曜日

ギターを買った日

ギターを買った日
抱きしめて眠ったの
Cのコード押さえて
ボロ ボロ ボロン

誰にも触らせないの
それは私のギター
それは私のギターなの

ギターを買った日
抱きしめられて眠ったの
大きな手のひら
ボロ ボロ ボロン

誰にも触らせないの
それは私のギター
それは私のギターなの

ギターを買った日
雪が降り出して
指先が痺れてた
ボロ ボロ ボロン

それは私のギター
それは私のギターなの
ボロ ボロ ボロン
ボロ ボボロン

2011年1月17日月曜日

眠る前

すすんでく針をみつめて
思い出したり泣いてみたり
静かな夜に懐かしい歌を探している

昼間見上げた流れる空は
茜色にやさしくて
いつか見上げた空と同じで
のんびりとひろがってた

そこにいたことを確かめようと
目に見える時間と空間を切り取って
なんどもなんども見返してみる

どこから逃れどこまで行くのか
なんでここにいるのかさえ
わからなくなりそうになるけれど

眠る前深く深く息を吸い込むと
頬をなでた太陽のぬくもりがが
耳を掠めた音楽の笑いが聞こえてくる
月の下遠いどこかで車を走らせる
君の姿が浮かんでくる

僕は生きている
明日は来る
僕はまだ歩ける

2010年12月7日火曜日

死海

死海は静かで
輝いて美しく
空をたたえて
どこからともなく
吹く風すらも飲み込んで
ぼんやりと
私をみていた

2010年12月6日月曜日

街路樹

ネオン輝く街路樹に
大人着込んであなたと歩く
まがゆい光に潜んだ夜空が降り注ぎ
僕らは震える手のひら差し出した

2010年11月24日水曜日

つみとばつ

さしだすつみのしを
かたはしからたべていって
びりびりたべていって
あなたはぬれていた

いつのひかぼくがつかれたとき
おなかがへりすぎて
あなたはどこかへいってしまった
ぶりぶりとばつをのこして

あなたのふざいが
ぼくをたたせる

2010年11月23日火曜日

ぬけがけ

愛していると言ったとき
僕はあなたを
愛しているのだと知った

2010年11月19日金曜日

木枯らしに

近くて遠いあなた
知っているけどわからないあなた
赤い糸紡げないかと
そっと木枯らしに小指を立てる

2010年11月12日金曜日

さみしさ

このさみしさはどこから来るのか
吹き始めた冬風はまだあたたかい
こみ上げるさみしさは
生きてきた過ちのつぶやき
気づかぬように新しい土地へ
紛らわすように出会いを求める
さみしさが私を動かす

2010年11月10日水曜日

別れ

またねと言って
さよならと言って
そして何も言わずに
去っていく
出会う悲しみ
別れる喜び
ああ、
なにもない

2010年10月29日金曜日

2010年9月22日水曜日

くも

季節はずれの入道雲見上げた
木々の間に蜘蛛の巣あった
さわがず贈り物を待っていた

2010年9月18日土曜日

また会う日まで

また会えるのかな
誰もが季節が来れば遠くの町へ旅たつし
愛する人が見つかればその人のそばにいる

語り合った夜や探し回った夢の足跡
それが最後だとわかっていたところで
どうすることも出来なくて
いつもと同じように町を並んで歩いた
肉屋の店先でコロッケつまんで
おじさんが居眠りしてる本屋で立ち読みして
レンガ造りの喫茶店でコーヒー飲んでた

その場所に君といたしあわせな時間追いかけて
僕もまたどこかへ出かけていく
雨が降るたび朝日が昇るたび
海を思い出すたび君を感じている
忘れてやしないよ

電話やメールや手紙で感じられない
香りのする君の手触りは
このまま進んでいく道のどこかにあると信じてる
君がどうしたってあふれ出る
静かな夜にはこうして君の思い出に話しかけるのさ

生まれた人

昨日生まれた人は46490人です
ようこそこの世界へ

2010年9月17日金曜日

慈しい

誰とでも会えるわけではないのです
誰とでも再び会えるわけではないのです
どこにでも行けるわけではないのです
どこにでも再び行けるわけではないのです

慈しい
面前に広がるその一瞬一瞬が
慈しい

慈しい
目の前でくつろぐあなたが
慈しい

ただ慈しい

2010年9月12日日曜日

エイヨウ

すずめがねこじゃらしを
ついばんでいる
エイヨウになるんかな

こころ

愛されるのされ
おそれるくらい
からっぽなところこころ

2010年9月11日土曜日

君へ

君は知っているのだろうか
君の美しさや可愛らしさを
聞かぬ振りをして
知らぬ振りをして
君以外の美しさや可愛らしさを見つけては
教えてくれてる
君は美しく可愛らしい
受け取り
受け入れ
微笑んでほしいのだ
そう
微笑んでほしいのだ

2010年9月9日木曜日

社会≧アイデンティティ

そのようにして一個の人間の中に
含まれた土地や思想の
交わるところを重ねては
社会はトランプゲームのように
積み上げられていく

2010年9月2日木曜日

家出

自分と向き合うのが怖くて
君から家出して
ほっつき歩いた日々

行き着くところ
見つけたかったのは君こと
歩き出す力くれたのは
君との思い出

あるだろうか
戻ってきた街の雑踏に
どこにも見当たらなかった
君の笑顔は

2010年9月1日水曜日

なつ

同じ季節が同じ年に輝き
目も開けられぬもぐらは
息をするのをためらううちに
迷いの大地でもだえ死ぬ
躯を苗床とした
向日葵はいつまでも
黄色い花弁をその季節にたむけるだろう
伸びる入道雲が時折風とともに
その臭気を洗い流した

2010年8月31日火曜日

消え行くもの

夕焼けと引き換えに
町にはビルが建ち
星空と引き換えに
夜の盛り場が出来る
愛と引き換えに
女体があふれ
幸せと引き換えに
物が増えてゆく
膨張してゆく世界が
すべてを薄く薄くしてゆく
象徴だけが記されて
すべてかすみのように消え行く
呼吸をするのを忘れた人らは
それらが消えてゆくことに気づかない

2010年8月29日日曜日

特異点

赤いわれらは
透明な時間へ漂う
二重螺旋交わる
穏やかな愛の特異点
点灯しつつ

2010年8月22日日曜日

夏草

夏草が秋を探るようにたなびいている

昔、闇は夜自由だった
今、闇は自由を求めて
人の心の中へ入り込んだ
闇は夜を待たなくなった

2010年8月15日日曜日

美辞麗句

玉砕という言葉は
見殺しにした兵士を
たたえて吹きだした

イエスを磔にして
賛美歌が
世界で歌われている

平和を凌ぐ
言葉には
生贄が足りない

美辞麗句は
いらない

2010年8月12日木曜日

夏の君

君を想うと
心がキラキラして
時はサラサラと
流れ行く

波のように
君との間に
たあいない言葉が
ゆれている

君に会えるから
心がまぶしすぎて
うまく眠れない
夏の夜

訪れと同じように
時間の中へ
思い出残して
君は去っていた

言葉はいつも
遅すぎるけど
広がる空へ
投げかける

いつか君を
金箔の朝陽がつつみ
生きている喜びを
思い出すように

君を思うと
心がキラキラして
時がサラサラと
流れゆく

小船

計り知れないことを
無限と呼んで
そのままの姿で
あると思うことの
傲慢さ

死や終わりは
常にそばにせまり
たあいのない
その幻想を飲み込んでゆく

悲しむことはない
それは単純なる
事実にすぎない
今有限のうちに
前へ前へと進んでいく力に
私らの自由と呼ぶものの中に
含まれているのと
同じように

囲われた海へ
放り込まれ
内なる灯台の指す方へ
痛みや疲れ
眠気や悲しみを従えて
進んでゆく圧倒的な小船を
澄み渡る空は
憶えている

2010年8月5日木曜日

アモイ

陽の落ちる街並みを
家路へ急ぐバイクが走る
赤土に木々の影が
浮かんでいる

2010年4月15日木曜日

出航叙景

穏やかな潮風に
船首からのびる万国旗がたなびき
白い体を静かな入り江に横たえて
時のくるのを今か今かと伺う船

好奇心にしびれる乗客と
汗にまみれたクルーが船の血となり
駆け巡る

愛する人の紙テープが
磨きこまれた甲板の上を
どこまでもどこまでも転がりつづけ
空行くかもめの道しるべとなる

錨が引き上げられ
合図のドラが鳴り響き
白い体が波の招きにあわせて
沖へ沖へと吸い込まれていく

汽笛が鳴る
日常を区切る
汽笛が鳴る

poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair