回転木馬の整列が/光の糸を噴き出している/ガレ-ジに吊るされた/ランプの灯と交じり合い/ビニールシートのこすれる音がひびく/岬で魚影を追う白い船が今朝/沖へ到達した/知りすぎたペンシルバニアの農夫たちが/反乱する/強い炎の中で二つの森が現れる/焦げた匂いは斑点模様となって/リンゴの表面(サーフェイス)へ/降りそそぎ始めた/通り過ぎた玉虫色の遊歩道から/キビキビとしたチェロの旋律/行方知れずの猫が土曜日の階段であくびをしている/満ち足りたグラスからダイヤモンドが引き上げられて/渡り鳥が旅の準備を始めた/太陽の産声に気づかぬうちに/羽衣の残照が大河へと流れだす/蓮の咲く沼のほとりに少年の自転車がまわる/投げ出された手紙が今日もビルの隙間でまばたきをしている/緑色の椅子が空き地の中に立ち上がり/揺りかごの紋章は扉のステンドグラスに映り込む/ちぎれたパンのかけらが路地裏にすいこまれていく/ああ、6月の幻/屠殺場から血の便りが届くように/街灯に照らされた傘の影が/広がり続ける星々の速度を計測している/置いてきぼりのハムスターが輪を回し続けている/遠くで君の名を呼ぶことばが/屋上から見える花火のように/過去へとどまり未来へ散る/静寂の海と忘却の空へ/私もまた君の名を呼ぶ/カフェの入り口にたたずんで/春のゆくのを待つ/酒場のカウンターで/秋の訪れをかぐ/駅のホームで/冬の足音を聞く/今は夏のはじまり/林道で、陽射しに貫かれながら/君の後姿を摘んでいる/ああ、私はまた、ただ/海辺の巡るのを知る/同じに思える風の中に/新しい色がまぎれこんで/しだいに音に変わっていく/かき混ぜられた紫色の交響曲/ナイルの反乱に飛び込んで日々を裏ごしして/ピュアな木の葉が降りつもる/ああ、光の芽が高速でふき出して/矢印をつくっている/窮屈なボトルの花々が/草原を夢見て空へ伸びる/走り去る馬の周りを蜂たちが飛びまわり/再会を約束した傭兵たちの十字架へとまる/落ち続ける滝のしぶきに目玉がすり減りながら/それら花々の香りを放っている/最北の地にゆがんだテレスコープの影がゆるやかに流れる/ジキタリスにおける国境のあいまいさに似て/三度目の祝祭が行われる街で大通りをいけにえの羊たちが歩いて連なる/右手の火傷のあとからぼんやりとした痛みがして/予定調和の酒だるから天の川の星々が注がれていく/水中花の浮かぶグラスに陽の差して虹の生まれる/南蛮渡来の望遠鏡からオアシスの森/三千年の教会から鐘の音の響くころ/カエルの歌が聞こえて山々の嶺に雪の降る/最小限の方位磁石をたよりにジプシーの一団が/新しい季節を求めて出発した/ソドムとゴモラの罪を洗い流す月の光に似て/田園の稲が歌い始める/くりかえされる、まわる、めぐる/いのちのはなに君は似ている/馬のたてがみをつかんで草原の風が触れる/水色の首飾りに涙がいくつか落ちて/長い髪の女がその髪を結いながら/夕暮れを見つめている/遠い未来が今をのぞいて優しく肩を抱いてくれている/隙だらけの気泡が両端の夢に届いて虹をかけ始める/数時間のサイレンが石炭袋に吸い込まれて/青い光がこぼれてくる/三日月の上に腰かけた少女たちが/白い足をこぎながら優しい歌を唄っている/千年草が芳香の中で開きはじめた/今日の夕暮れが昨日の夕暮れを引き受けながら/突き出された天井桟敷に鎮座している/見つけたばかりのハンケチを手にしながら/あふれる涙をぬぐう/それは、霧の先での、喜びの、である/とどまることのない陽光のように/現れて消える言葉とわたし/そしてあなたのかおり/現前するのがはかない/絹のような糸のような/触れることのできぬ去り続ける幻/この呼吸の終わらぬうちに/もう一度もうち一度/夕闇に音はまぎれて
光る瞳ばかりが宙を舞う
遠い日の彼岸を私たちは待つ
嘘もひとつの真実であると知る時
森の中からふくろうのなく声の響く
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