2012年1月26日木曜日

雪だるま

雪の降った次の日には
おっきいの ちっちゃいの
しかくいの まるいの さんかくの
枝、投げ出して
空き缶、転がして 
空、見てる
朝、日差しの中でまぶしそうに
空にかえってく

2012年1月25日水曜日

飾られない花瓶

もらった一輪挿し
何さしたらいいかわからなくて
そのまま

直径2センチの黒い穴
水入れてみる
陽にあててみる
隠してみる
拭いてみる
色かえてみる

すこし割ってみる
水がしみでて
敷いてた布、ぬれた

わからなくて
すこし泣いたら
ぼんやりとして

もう花はさしてあったんだと
気が付いた

2012年1月24日火曜日

蓮の花

満員電車の中で
初夏に咲く蓮の花を思い出している

皿を洗う泡の中で
美しい詩について考えている

眠りの夢の中で
新しい世界を熟成させている

すべてはパチリと咲く

2012年1月23日月曜日

肉体へのオード

裸になった時
私はふとこみ上げた

顔よ ありがとう 人に微笑みをあげることができた
目よ ありがとう 美しい世界を見ることができた
鼻よ ありがとう いい匂いを嗅ぐことができた
耳よ ありがとう 素敵な言葉を聴くことができた
口よ ありがとう ご飯をしっかり食べることができた
喉よ ありがとう 詩を朗読することができた
首よ ありがとう まっすぐ歩くことができた
腕よ ありがとう いろんなものを運ぶことができた
手よ ありがとう がっしり握手をすることができた
指よ ありがとう こうして詩を書くことができた
胴体よ ありがとう 抱きしめてもらうことができた
ちんちんよ ありがとう 古い水を排泄することができた
足よ ありがとう 行きたいところへ行きことができた

それぞれの部位を丁寧にさわりながら
私は礼をのべた

命よ ありがとう 今日という日を生きることができた

2012年1月22日日曜日

この電車は俺たちの乗る電車じゃない

ライブ終わりの
高円寺への帰り道
総武線は満員電車
並ぶ人たちが全員乗るには
もう3つくらい車両が必要
電車の中には
もうプール4つくらい空気が必要

行き場所求めて
行き場のない車両に乗り込む人々
人を押しのけて
人を傷つけて
行き場所求めて
息のできない車両に乗り込む人々

詩人はつぶやいた
この電車は俺たちの乗る電車じゃない

ガラス越しに顔のつぶれた
ガラス越しに体のつぶれた
ガラス越しに心のつぶれた

それでも車両の中にいることに
安堵し慣れた人々を見送りながら
詩人はしばしたたずみ
今朝見た道端の猫を思い出していた

詩人は次の電車に   乗り込んだ





2012年1月21日土曜日

お金

おそろしいことです
お金がないというのは
会えず行けず語れず
美しい風景のなかにあって
お金のことばかり考えているのです

おそろしいことです
お金がないというのは
想い出や目標や時間
ひどい時には意欲を 売り払わねばなりません
たくさんのお金のなかにあって
何がしたかったのか
ぼんやりとしているのです

おそろしいことです
お金がないというのは
本物も偽物もわかっているのに
嘘を信じて
そういうふうに振舞わなくてはなりません

ほがらかな陽射しの中で
つらく寒い夜ですねと言わなくてはならないのです

そんなことないよと笑う人は
おそろしい人です

2012年1月20日金曜日

み雪よ
もっとふれ
沁みて
思い出すまで

み詩よ
もっとふれ
積り
姿あらわすまで

名もなきひとひら
いのちの記憶

2012年1月19日木曜日

手紙

晴れた日の朝
太陽の光を見るたび
空に描かれた
雲、神様の落書き見るたび
無性に君に手紙を書きたくなるよ

トタン屋根に響いて
落ちる雨音聞くたび
地面に溶けてく
水、神様の寝息聞くたび
無性に君の声を聞きたくなるよ

手紙書いているとき
声を聞いているとき
指や耳と息をしている
体、神様の創った心が
無性に君に会いたいと騒いでいるよ



2012年1月18日水曜日

大地に


2011年3月11日
北の大地が揺れて
おおくの灯が飲み込まれ
不安が漏れ出した

我々は北へと向かった
線路沿いのプレハブから
闇は覆いかぶさり睨んでいたが
我々の道を照らす光は
一切ひるまなかった

その青年は西から訪れ
何かの助けとなる
何かをつなぐ
ひとくさりとなることを知って
ガレクシャの山を通り過ぎ
重石のような泥のまとわりつく堤防を
我々と行きかいながら
土に触れ
土を食んだ

鋼鉄の枠組み

スーパーファミコンのコントローラー

赤い靴

繋がれたままの家畜

空に伸びる松

たちよったラーメン屋の親父は
煮える釜を見つめていた
湯気が昇っていた

不安を含んだ雨が
ボンネットの上を歩き
ガイガカウンターの針が振れる
突き抜けてくる不安は一切見えず
突き抜けていった恐れは一切匂わず
ただ我々を
(受けたものとしての
つくりだしたものとしての
誰もがそうであるところの)
毒虫に変えた
毒虫たちは不安を飲み
毒虫たちは恐れを食べ
毒虫たちは放尿し
不安の星で叫んだ
夜明けをまちながら

―この星で―

俺が人類の敵なら
することは決まっている

俺が人類の味方なら
することは決まっている

俺は人類だから
沈黙はしない
俺は愛する人と生きたいから
沈黙はしない


曇りガラスの先が青々と染まり
毒虫たちは東へと
不安の海へと向かった
まだ足りぬとばかりに
不安の海はうねり
うなり
大地を食べていた

毒虫たちは問いを投げかけ
沖へ沖へとすすんだ
不安の海は
はじき
もみくだし
さみしげに毒虫たちを
吐き出した
何の問いにも答えぬままに
しかし、その時、
毒虫と不安の海は
どこまでも対等だった

夕日の中で語らぬまま毒虫たちは
ガレクシャの山の一部を
見知らぬ人の
生きてきた記憶をひろいあげ
こびりついた泥をふいた

卒業アルバム

結婚式の領収書

子供らの内緒の手紙

うまらぬ手帳

その男は不安の漏れ出した中心からきた
電柱に奇妙な果実のなるのをみた
と言った
老人たちが血を吐き出すのをみた
と言った
その男に連れられて橋のたもとに行った

その男は川の先を見ていた
この季節遡上する鮭をみせようとした
川はまだ静かだった

しかしその時、毒虫たちは
一語一語、語られた言の葉に身を包み
一枚一枚、拾われた言の葉に身を包み
さなぎとなった

まばゆい月が雲の割れ目から
生れ孵る舞台をのぞいていた

果実の泡 

絵描きの夢 

紫の煙 

生きている愛する者の声

ー皿ー

さらわれた皿 さらに サラダ
われた皿 なおさら ささみ
まっさらな皿 いまさら さらばい



毒虫たちの体が割れ
蝶たちが立ち上がり
光の中を舞った
背中には強い羽が広がっていた

蝶たちは象徴をつかむべく
太古より流れる
川へと入りこみ
たたずみ晒して交わる

揺れるススキをかきあげ
輝くアユを眺め
跳ねるしぶきを撒きちらし
あたたかな風を嗅ぐ
赤く染まる山に触れ
やわらかな岩を吸い
萌える命はとめどなくあふれ
一切の不安にひるまなかった

つめたさもはげしさも
はしゃぎながら
蝶たちは交わる 
大地ははしゃいだ
蝶たちははしゃいだ

一切の邪気なしに

港で待ちわびるカモメが鳴いている
港で待ちわびるカモメが舞っている
ニーニーニー

轟が響く
轟が
この大地へ突っ込んでくる
この季節遡上する鮭に伴ない轟が響く
鮭はこの大地に戻ってきた
豊穣を立ち上げるために
水をはね身をよじりながら

蝶たちは咀嚼され鮭となり
共に轟を抱え大地へ突っ込む
流れを超えて
悠久の中に突っ込んでいった

大地は轟を聴いた
海は轟を聴いた
我々は轟を聴いた

それは一切ひるまず
それは一切消えることはなかった

我々は全く新しい目覚めの中に息をしていた
我々は毒虫であったことを引き受けて
我々は蝶であったことを引き受けて
我々は鮭であったことを引き受けて
息をしていた
深く深く
息をしていた

我々は南へと向かった
川沿いの駐車場から
現実は覆いかぶさり睨んでいたが
我々の中に響く轟は
一切ひるまなかった

我々の中に立ち上げられた萌芽は
朝陽に萌えていた

2012年1月17日火曜日

お好み焼き

銀色のボールに入ってきたネタ
かき混ぜて鉄板に流して
キツネ色に焼きあがるのを
ビール飲みながら君が見てた

フライ返しでひっくり返して
ソース 青のり 鰹節
マヨネーズかける?うん、少し
ビール飲みながら僕が見てた

驚くくらいペロリとごはん食べる君

君の好きなエスニック カレー
僕の好きなイタリアン スパゲッティー
和洋中 すぺいんとるこえとせとら
お好み焼き

僕とごはん食べてください
これからもずっと
僕とごはん食べてください

2012年1月16日月曜日

ザネリ

カンパネルラに命を救われたザネリは
あのあとどうしたろう 

子供の頃
ジョバンニやカンパネルラにあこがれ
牧師や鳥を取る男のように生きたかった

 大人になって
僕はザネリなのかもしれないと思った 

土を見つめる賢治の肖像写真
あのとき賢治は
ザネリ思っていたのかもしれない

ザネリはどうしたろう
あのあとザネリはどうしたろう

2012年1月15日日曜日

私の好きだった人

私の好きだった人が
インターネットの向こう側で
裸になって
知らぬ男の手の中で
ぬれて もだえている

私が触れたかった
その唇
その肌
その髪
その乳房
そのヴァギナ

四角く切り取られた
心と体が粒子となり点灯する

私はブラウン管に触れた
時すらも砕かれて
今の私から 過去の好きだった人に
見つめるカメラを通して 
触れようとした
その知らない男より
やさしくあなたに触れたかった

私はもう私の好きだった人が
愛しても愛されてもいない
その知らない男に触れられるのを
見ていたくはなかった
私はインターネットを閉じた

私は痛みを感じるまで射精した

2012年1月14日土曜日

この星で

俺が人類の敵なら
攻撃するところは決まっている
そこを破壊すれば
人類は死に絶える

俺が人類の味方なら
全力で叫ぶことは決まっている
それがなくなれば
人類は生き残る

俺は人類だから
沈黙はしない
俺は愛する人と生きたいから
沈黙はしない

原発はいらない
武器はいらない
差別はいらない
憎しみはいらない
幻想はいらない

乗り越えよう
乗り越えよう
乗り越えよう


2012年1月13日金曜日

青空の下で

駅前通り/荷物を背負って抱えて/泣き出しそうに走る小学生/遅刻して友達に置いていかれたのか/追われてその小さな体を走らせている/晴れ渡る青空の下で

2012年1月12日木曜日

冬のピクニック

晴れた日/バスケットにハムとチーズ/パンとサラダつめて/ビールとワイン持って/カラフルなテーブルクロス公園のベンチに敷いて/陽気な詩を捧げて/愛する人とおひさまに乾杯/そういう日がたくさん/サンサン降りつもれば/人生はきっとしあわせ/

2012年1月11日水曜日

やせて


7キロもの脂肪はいったい何処に行ったのか
それは生きて行動したエネルギーとなった
僕はそれを蓄えていた
蓄えて蓄えて生きることを困難にしていた
蓄えるということに喜びをおぼえて
それをなにに使うのでもなくただっ持っていた
まだぼくは持っている
必要なものは与えられる
恐れることはないのだ
持っているものを使い 僕は明日も生きるのだ
           僕は明日も行くのだ

2012年1月10日火曜日

・・・のように

日が暮れてから起きだした
昼間君が何をしていたか知らない
月の中歩いていた
君も見上げていたのか知らない

眠っているときも
起きているときも
息するように君のこと想ってる

互いに知らない時間が
知らない場所で流れてる

知らない君に触れるように
僕は風を確かめる

知らない時間埋めるように
僕は文字をつらねていく

2012年1月9日月曜日

秘密

みんなといる時は苗字で呼ぶの 誰もいない時は名前で呼ぶの 夢の中では呼び合うこともないの 友達にも親にも内緒なの

2012年1月8日日曜日

D-51の月


もう行きなよと君は言った
次の駅 次のベルで

君は君の列車
僕は僕の列車へ

時を忘れて語りあった
慈しい日々の終着駅

離れてゆくレール
それぞれのレールへ

車窓に月 D-51照らす月
約束の街に昇る月

君は君の列車
僕は僕の列車へ
離れてゆくレール
それぞれのレールへ

車窓に月 D-51照らす月
約束の時に昇る月


2012年1月7日土曜日

冬の太陽はそれでもやさしく命を照らす

物憂げに肩を窄めて歩く人々
眩しい太陽はその影だけを立ち上らせて
つかむことの出来ない幻影を見せる

カーテンをくぐるように
太陽へと向かいながら
辿りつくことのない楽園を夢みた

独楽のように運命を回し続けては
止むことのない行為に没頭する

断ち切られた静かなる情熱は
既に霧散し
いく世代かののちに
再び降り注ぐのを待ちわびるのみ

鳴ることのないオルガンを弾きながら
世界の片隅へと囚われてゆくカナリア

戸を開け窓を開け
風に運ばれてくる微かな物音
一体何者なのか誰も知らない

冬の太陽はそれでもやさしく命を照らす

2012年1月6日金曜日

裸婦モデル

あなたは今日も
どこかでセータを
えらんだ下着を脱いで
生まれている

2012年1月5日木曜日

四万温泉~積善館~

雪の薫り立つ
浪漫のトンネルくぐりぬけ
月浮かぶ露天風呂
湯気とたわむれて粉雪が舞う

猿ら
目を閉じ黙して聞かず
ただ一刻あたたまる
ただ一刻景色につかる


2012年1月4日水曜日

言 葉 の重さ


枯穂のように 積み重なり その一つ一つは軽いが
あるとき もう 持ち上げられないというように 重くなる

毎日 ポーランドの詩人 チェワフ ミウォシュの 詩の 朗読 渡辺徹の を
聞いていた
 
もらった その CDを 毎日聞いていた

と ある朝 まさに今朝 言葉 その言葉は
意味とは一切関係なしに 重さを増した

2012年1月3日火曜日

詩人

100人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
1000人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
10000人に詩人と呼ばれたら詩人でしょう
ただひとりにでも詩を愛されたら
まぎれもなく詩人でしょう

2012年1月2日月曜日

『映画館を出たら~月曜日に乾杯に捧ぐ~』


映画の中の主人公は
ふらっと全部残して旅に出た

映画館を出たら僕も旅立とう
ユートピアかガンダーラか
知らない所ならどこでもいいや
ビール飲めて、風が吹くならどこでもいいや
映画館を出たら僕も旅立とう


映画の中の主人公は
優雅に川辺で絵を描いてた

映画館を出たら僕も絵を描こう
草花、裸婦、空
目に映るものならなんだっていいや
水彩、鉛筆、血、油
描けるなら何色だっていいや
映画館を出たら僕も絵を描こう


映画の主人公は
いつだって手紙を出していた

映画館を出たら僕も手紙をだそう
家族に、友人に、恋人に
思い浮かぶ人なら誰だっていいや
日本人、外国人、宇宙人
届くって思えたら死んだ人だっていいや
映画館を出たら僕も手紙出そう

映画館を出たら僕も
映画館を出たら僕も

映画の主人公みたいに
見つめあって愛を語ろう

誰にでもなく
どこにでもなく
何色でもなく

僕が主人公の鮮やかな
映画をいきよう

君と

2012年1月1日日曜日

紹介詩

 こんにちは
 私は地点
 1.9.7.5.8.2.9
 J.A.P.A.N.T.O.K.Y.O
 に2560gの重さ
 を持って
 く.ろ.か.わ.た.け.ひ.こ
 というぱっちりとした名を賜り
 生れ落ちました

 感ずるすべては心となり
 食するすべては体となり
 父母世層の集積として存在し
 その発するところのものとして詩を抱え
 ついえるまでつづります

 あなたに触れて
 感じあるいは食し
 つづるさいわいを見つけつつ
 皿を洗い 本を売り 記録しながら
 生きています

2011年12月16日金曜日

ウクレレ買った日

ウクレレ買った日
君を想ってた
青い空の下 
ボロ ボロ ボロン

どんなに遠くにいても
こうしてウクレレ弾けば
いつでも一緒さ 愛してる

ウクレレ買った日
波の手紙に
夕日のスタンプ 
ボロ ボロ ボロン

 どんなに遠くにいても
こうしてウクレレ弾けば
いつでも一緒さ 愛してる

ウクレレ買った日
君の名前の
星座がまたたいた 
ボロ ボロ ボロン 

どんなに遠くにいても
こうしてウクレレ弾けば
朝から晩まで ボロ ボロ ボロン
春夏秋冬    ボロ ボロ ボロン
いつでも一緒さ 愛してる 
ボロ ボロ ボロロン

2011年11月16日水曜日

旅の句

荒川流れゆけど
実りたまりゆく
長瀞の宿 

2011/9/26

いまは

ほったらかしたまま
わすれてしまったように笑うんだね

ちらかしたまま
なかったように笑うんだね

大切だと思っていた
まばゆい言葉と時間
いまは はるかかなた

2011年11月2日水曜日

そろそろ

そろそろ幸せなからっとした詩書きたいし
そろそろハッピーなほかほかした詩書きたいし
君と二人でいるとき触ってみようかな指先から
君を見つめてみようかなおしゃべりやめて
夢で見たよ君のこと
そろそろやさしいいつも心にいられる詩書きたいし
そろそろ陽気な海辺で流れる詩書きたいし
君が近寄ったらキスしようかな
商店街で公園で芝居小屋で古本屋で
夢では何度かキスしたよ

僕は時に

僕はなんらかの
世界の見えぬ法則に触れていたのだ
それを言葉
時に詩として現してみたいのだ

さらわれた皿 さらに サラダ
われた皿 なおさら ささみ
まっさらな皿 いまさら さらばい

2011年10月28日金曜日

青い服

体が砕けては 服は
着れない

青い服に包まれて
どこかへ運ばれていく

体が砕けては 何も
言えない

無言に包まれて
どこかへ運ばれていく

中央線のある日のホーム

2011年10月21日金曜日

はかないものに
頼ろうとするとき
私がいる

消えていきそうなものに
触れているとき
私がいる

星や月
ましてや
太陽なんていらない

あなたがいれば
私がいる

2011年10月13日木曜日

高円寺恋歌

知らない街歩いて メグミの香り探してた
春はいつも先まわり 思い出が鼻先かすめる

知らない花見つめて ユミコの姿探してた
夏はいつも遠い空 ずぶ濡れの髪乾かした

知らない店長居して サユリの気配探してた
秋はいつも夕暮れの予感 長い影路地に伸びた

知らない歌聞いて ケイコの言葉探してた
冬はいつもかくれんぼ 静けさがこの街つつんだ

知らない人愛して 君の仕草探してた
僕はいつも君の中 君はいつまでも僕の中  

この道だね 君に触れて 心あふれ
この季節さ 甘い記憶 さよならだね

桜の部屋

桜の見える部屋
けんかしたり お酒飲んだり
抱き合ったりして過ごします

行く時は行ってらっしゃい
帰ってきたらただいま
ご飯の時はいただきます

声とか呼吸とか気持ちとか
壁やドアに染み込んで
あったかい部屋になってきました

遠くに旅するときも
落ち着くところはこの部屋に似たところ

春、桜の花びらが洗濯するとき入ってきた
去年の思い出と一緒に

表に出て
桜の木の下歩いてみる
江戸の人も歩いたように
桜の木の下佇んでみる
僕らの子供の佇むように

しばらくして
ちぇりーしゃわーが注いできた

ビールとバーボン

俺から去っていった女のマボロシが
今夜も俺をゆすって眠れやしない
ビールをだらだらして、タバコふかふかして
ウエイトレスとベットに入ることを考える

可愛いアンヨに手をはわせ
悶える姿眺めて首すじにキスを浴びせる
バスルームでシャワーを全開にして
尖った乳房をすいまくる
冷たい毛布へ入り込んで
モルモットみたいに激しく転がり
春の芝生みたいに温める
香るのはビショップとシュートの臭い
ドクロに塗ると命が宿るって聞いたことある
眠る女の横顔に天使だとか女神だとかの
西洋から渡ってきた幻影重ねて
腰のクビレに弥勒菩薩のちょっとした悩みを発見
ホクロのある白い尻に耳をあてて
俺の同士がしっかり働いているか監視するんだ
俺が長くソンザイできるかどうかの大切な大仕事
星だって見守っているし
嘘っぱちのネオンも通り過ぎて
ダンボールで作り上げた月だって
ナイトだって見つめてる

働け同士!
働けど同士!

夢やモウソウの中だって真面目にやるんだ

ウエイトレスがやってきて
だらしなく胸のはだけたシャツの隙間から
おかわりはどうですかと聞く
ちくしょう、うらでコックとサックしてやがったな
俺はバーボンを頼んだ

2011年10月6日木曜日

君が

眠る君を見てる君を読んでる君に
触れる君を思う君を呼んでる君に
捕われた君を描く君を撮る君が眠る

2011年7月23日土曜日

LIFE&PEACE

どうしたらいい みんな穏やかに暮らすには
どうしたらいい 争いのない世界が来るには

考えることすら愚かと 笑う人がいる
ずっとずっと変わらないと 笑う人がいる

悲劇を叫ぼうと 怒りを語ろうと
ずっとずっと変わらないと 笑う人がいる

みんながなんて思わず
人の不幸は 見ずに 聞かずに 言わずに
思考停止

やめてしまえばいいのですか
みんなを忘れてしまえばいいのですか
そういうものだと諦めてしまえばいいのですか

それでも願うよ PEACE
この生きているところから LIFE
それでも願うよ PEACE
いま 生きているからこそ LIFE
それでも願うよ PEACE

2011年7月13日水曜日

君の街

君の住んでいた街へやってきました
この喫茶店には入ったことあるかな
呼吸する街は君の夢を吸い込んで
にぎやかになっていった

君の中から夢がなくなって
街に全部吸い込まれて
君はそのさみしさを埋めるために
誰かのやさしさにすがりついた

君がこの街を出て行った後も
君の夢だけは残って街をにぎわしている
そのにぎわいにみせられて
君に似た誰かが
今日もやってくるのだ
君の街に

2011年7月7日木曜日

琥珀さんへ

どっかいっちゃう背の高いマスター
先に空っぽのカップ持って来るママ
たいてい埋まってる麻雀ゲーム台
モーニングピザトーストと
サービスピザトーストはパンの厚さが違う
客の残した水は観葉植物が飲んでいる
毎週欠かさずリード社の漫画雑誌
四十年を
引いて淹れてた珈琲店
青春 思い出 恋 涙
煎って入れてた珈琲店
壁に飾られてたコーヒーカップ
今頃、空に浮かんで
さようならの夕立ち受けて
雨出し珈琲
次 ここ琥珀で飲む珈琲は
来世か来々世か夢の中
ここ琥珀珈琲
湯気が
通り過ぎた人の記憶の中で昇っていく
ここ琥珀珈琲
香りが
通り過ぎた人の記憶の中で琥珀になっていく

2011年7月4日月曜日

聖域

遠い町の
遠い昔の悲しみは
テレビとラジオでやってくる
新聞のインクの香りでやってくる
youtubeに残ってる

おまえのせいだと
おまえの父の
お前の祖父の
お前の国のせいだとただされる

遠い町の
遠い昔の悲しみは
愛する友の口からやってくる
敬愛する恩師の手紙からやってくる
行く先々の土地の味に残っている

誰のせいだと叫びたてて
敵を作って聖域を作るのだ
不発弾を抱えた聖域を
誰もが作ろうと叫んでいる

poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair