poem on chair
2013年3月31日日曜日
去春
春がゆく
空に道に
フロントガラスに
足跡残して
春がゆく
2013年3月29日金曜日
無常
日は暮れ花は散り人は去る
時は過ぎ道は絶たれ記憶は霞む
肉体は老いて言葉は失われ魂は消える
ああ、無常
2013年3月27日水曜日
距離
どうすれば愛まで至れるのですか。
どうやったって愛まで至らない。
望むほど愛まで至らない。
2013年3月24日日曜日
茶トラと鯖柄
深夜駅前のコンビニ前に猫二匹
茶トラと鯖柄の猫二匹
出てくる客に茶トラが
ニャアとなく
入っていく客に鯖柄が
ニャアとなく
コロッケのカケラをほおる客がいる
茶トラは
のそのそと
歩み寄り
もそもそと
食べた
客は鯖柄のほうにもほおるが
ニャアとひとなきして動かない
茶トラは鯖柄の前のコロッケも
もそもそと
食べた
客足のなくなったコンビニの前から
茶トラと鯖柄もどこかへ消えた
2013年3月21日木曜日
修業
指先から溢れ出す滲み出す
言葉や線が美しくないことに
哀しさを覚え
もう二度と話すことも描くこともしたくなくなるのだけれど
明日、いや次の瞬間には
とてつもなく美しいものが
現れるのではないかと思う
あるいは美しいと思える解釈が見つけられるのではと
煩悶をさっぱり忘れて今日も挑む
2013年3月19日火曜日
桜の咲く少し前
桜の咲く少し前
空気の色が変わり始めて
日の落ちたあとでもどこか明るく
行く当てもなく歩いてみたくなるのだ
気づかなかった新しい店や
いつの間にかなくなった古い建物
カレンダーの日付は同じところを辿るけれど
今歩いてる場所は
昨日と同じでも明日と同じでもない
私自身も
昨日と同じでも明日と同じでもない
咲き始めているのは
季節に約束されたからではなく
あたらしさあふれるから
2013年3月14日木曜日
恋歌
何度あなたは私を恋の落とすのか
言葉で態度でその美しさと優しさで
あなたに言える言葉はひとつ
恋の底で見つけた愛してる
何度あなたは私に触れるのか
春の日に夜更けに明け方に
あなたに触れられるのはわずか
永遠の中で見つけた生あるこの時
口をふさごうと心をふさごうと
湧き上がるあたたかなこの気持ち
あなたに言える言葉はひとつ
恋の底で見つけた愛してる
あなたに触れられるのはわずか
永遠の中で見つけた生あるこの時
新しい詩
詩人は新しい詩をうたえ
目覚めるたびに新しい詩をうたえ
息をするたひ新しい詩をうたえ
懐かしさは商人にまかせて
説明と分析は評論家にまかせて
誰も踏みこまぬ未開の未見の地へ
その身をさらして命を削り
新しい詩をうたえ
詩人は新しい詩をうたえ
2013年3月13日水曜日
うれしいよ春
君と歩いた桜並木
風が吹けば桜が舞って君の髪がなびいて
春の薫りに包まれる
うれしいよ春
新しくめぐるいのちがふきだしている
君のそばで春をまとって
このまま桃色のトンネルの中をどこまでも
うれしいよ春
詩人の始まり
孤独と愛で詩を読み始め
愛と苦悶で詩を綴り始める
2013年3月10日日曜日
夜曲
しずる夜に訪ねてくる
通過したわずかなさざなみ
張り詰めた旋律に
フクロウの詩がこだまする
田園の案山子が
敷き詰められた星々を見上げ
風車が明日の風を受けて
金色の小麦をひいている
灯る火はゆらめきの狭間に
遠くから届いた長い手紙を映す
人々は開封された懐かしい器に
天からの光を注ぎ飲み干す
無言のままはぐれた影たちを
見つけようとするかのように
2013年3月2日土曜日
マーガリン
マーガリン大好き
ママに止められながら
一日スプーン一さじ
マーガリン食べてたの
パパとドライブ
ママとピクニック
レストランでパンをたのんで
マーガリン食べてたの
大人になって
いきつけのブラウンで
マーガリンおかわりして
ペロリと食べてたの
それを見てた となりの人が
マーガリンはギリシャ語で
真珠のことだよって
教えてくれたの
マーガリンいただきましたの
しばらくしてその人から
パパママには内緒の
マーガリンいただきましたの
2013年2月28日木曜日
心電図
心電図は体の中でうごめいている
心臓や血液なんかをよく分かるようにする
心の中で動いている
やりたいことや本当の気持ち
良く分かる心電図があれば
みたいけれどみていられるだろうか
2013年2月25日月曜日
手術の夢
私の頭蓋骨が半分切り取られ脳が露わになっている
医者たちがそれを見てヒソヒソと話している
私も同じようにのぞきこむと黒い塊が右脳と左脳の間にある
医者たちの相談をよそに私はそばにあったスプーンを脳にそっと入れる
脳がくすぐったい
プリンあるいは豆腐の一部を掬うように黒い塊を掬った
私は何だかうまそうだなと思いながら黒い塊を捨てた
医者らはまだ気が付いていない
2013年2月24日日曜日
外套を脱ぐようには
外套を脱ぐようには
心の肌を覆う言葉を
拭うのは出来ません
2013年2月23日土曜日
焔
焔がついているうちは
消えることを思いもしない
一筋の煙が立ち昇るとき
音もなく景色は過去へと還る
2013年2月21日木曜日
いのち
抱きかかえた
あなたの
子供の
体の
心の
生まれたばかりの
存在に
手が沈む
泉
いつからだというのだろう
残された形跡が疑いを膨らませ
開いているのにはいることの出来ない扉のように
重石をつけつづけ忘れてしまわなくてはなったのは
その場所では記憶ばかりがたまり続け
わずかな風ぐらいでは消すことが出来ない
そこに身を置くことがそれらをかき鳴らす
指であり息であり止めることはできない
約束を果たすために未来をつくろうとしていた
離れることは抱き続けることとしりながら
偽りの仮面ばかりが増え続け
もとのことがなんなのかさえわからない
釣り糸がきれて深く深く河へ沈むように
見知らぬところで泉がわいている
時間をかけて洗い流す水をたたえた泉がわいている
2013年2月20日水曜日
行方不明
逃れようとして握りしめているものは何?
逃れようとしてとどまり続けているのは何処?
愛ならば
愛なとき
愛かも
見えているけれど届かない雲のように
見えているけれど果てしなく遠い恒星のように
愛ならば
愛なとき
愛かも
2013年2月19日火曜日
父親の空
父親がガンだと分かったのは昨年の秋だ
手術や治療を繰り返している
家庭を振り返らず母に愛想をつかされ
ひとり線路沿いのアパートに住んでいる
訪ねて行ったら散らかる部屋の中に
健康に関する本が山と積まれていた
部屋を片付けてジブリのCDをかけたら
「人間になった気分だよ」と蒸せた
飯を食べて駅までの道を歩いていると
父親は突然立ち止まった
父親は曇り空を見上げた
膀胱ガンだから尿意がわからずおむつをしてるのだ
思い出したようにカバンから携帯を取り出し
電話をかけるふりをした
「こうすれば怪しまれないだろ」
誰になにを怪しまれるのかわからなかったが
父親は笑っていたので私も笑った
詩にしていいかなと聞いたら
「書け、書け」というので私はこうして書いている
明日再び手術がある
夢の街
夢から覚めてはっきりとしたものが流れこんでくる前に
古ぼけたランプにもういちど火をつける
オイルの匂いが夢の色をとどめて
過ぎてしまった夜空を輝かせる
石灰で描かれたトラックを
一人の娘がかけていく
もう少しだけもう少しだけ
速く走れば失われた扉にもう一度会える
迫りくる嵐を誰もが知り
息をひそめて過ぎるのをまっている
切れかけた電球がバリバリと合図している
影が山にのびてやまびこに触れた
街は山に飲まれようとしている
山もまた闇に飲まれようとしている
2013年2月17日日曜日
砂漠
ひとつの灯は消えて
五つの水晶に影が落ちた
弾かれたままの黄金の雫が
五線の上を伝っていく
乗り遅れたバスのたてた煙が
咲き誇る花園を
蜃気楼の速度で遠ざけていく
砂漠の中央で倒れた兵士たちは
オアシスの夢を伸ばした指先の間にみる
2013年2月15日金曜日
口実
バレンタインでチョコをもらう。「早く開けて食べなよ」と言われる。包みを開けると「少しもらっていいかな」と言われる。「どうぞどうぞ」と私が言う。愛は口実なのだと思う。幸せそうに君はチョコを食べている。
2013年2月14日木曜日
Valentines Day
There are too many beautiful women all over the world, and it worries about the ability to finish responding to their love by only me.
2013年2月13日水曜日
深夜少しだけ雪の降った朝に
深夜少しだけ雪の降った朝に
なにを愛しているか分かることは
とても恐ろしいこと
それ以外なにも愛してはいないと
分かることなのだから
朝少しだけ残った雪が消えていくように
2013年2月12日火曜日
ウインドブルース
追い風 突風 南風
ビル風 そよ風 春一番
飛んでいくのは夢か希望か
飛んでくるのは煙のように付きまとう現実
自転車こいで今日もゆく
ウインドブルース
ウインドブルース
夕凪 木枯らし 桜まじ
台風 潮風 君の吐息
舞い上がるのは僕の心
上空三千メートル青い地球見下ろして
恋に恋して今日もゆく
ウインドブルース
ウインドブルース
2013年2月11日月曜日
いつか私は
いつか私は愛の詩を書きたいと願う
長く長く短く短く
儚く儚く強く強く
あなたへあなたへ
私へ私へ
未来へ未来へ
過去へ過去へ
いつか私は愛の詩を書きたいと願う
2013年2月7日木曜日
傘花
降りしきる雨が君を悲しませているのなら
私はその傘となりその悲しみをこの身に受けよう
照りつける日差しが君を悩ませているのなら
私はその傘となりその悩みをこの身に受けよう
広がる世界を阻むものが私という傘であるのなら
風に飛ばされてはるか彼方へ飛ばされよう
水平線しか見えない海原へポツリと落ちて
一輪の花となれば渡り鳥のとまる時もありましょう
今はすべての直前
このラインの先には
例えは海、例えば山、例えば君
見知らぬ景色と人々
今までの時間を置き去りにして
ラテン気分あるいはヨーロピアン
どこまでも行けるのさ
このトビラの先には
例えば空、例えば月、例えば君
新しい場所の生きてる世界
今までの色を塗りなおして
アジア気分あるいはウエスタン
何度でもくぐるのさ
今はいつでもすべての直前
どこまでも行けるのさ
何度でもくぐるのさ
今はいつでもすべての直前
自由に選べるすべての直前
2013年2月6日水曜日
浜辺の小石周辺
いつしかそういう日が来るのだろうか、誰もが待ちわびているのは、誰もが望むこと。微かで結びつくことなく生まれなかったもは浜辺に打ち寄せられたひとつの小石。ある夕暮れにぼんやりと海を眺めるものの視界はじめて入り込む。そこでしか現れないと知りながら一番美しいもののように握りしめるのだ。
2013年2月5日火曜日
春の薫り
春の訪れを知らせる風が草原より吹いて、飛ばされた帽子のに優しい花びらの模様をつける。長くなる光の時間に比例して短くなる影がかえって僕らの周遊軌道を近づけていく。わかるはずもなかった霧に包まれたその一筋の小径を今は目を閉じたままでも歩いてゆける。風の薫りをたよりに僕は歩いてゆける。
2013年2月3日日曜日
春のコード
一足早い春の香りの包まれる街では誰に話しかけてもやさしく答えてくれる。見上げた空には筋雲があり、それは強い風が何かを押し出そうとしている印。踏み間違えたコードを懐かしく笑うためには正しいコードを次の春のために探さなくてはならない。ゆるやかな河の流れの行方をみているのは誰?
ホームレスのおじさん
道端でくつろいでいるホームレスのおじさんを、ちらりと見たら、空を指さして「これが東京の空、灰色の空、『東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ』智恵子抄」と言った。私は答えて「高村光太郎!」というと白くはない歯をニカリと出して笑い、ダチョウ倶楽部のポーズを一緒に決めた。
キス
輝く唇の君とのキスはしあわせ
映画の中でも夢の中でも真似事でも
唇、奪われている時
心、奪っている時
君はミューズ
重ねるたび
輝きが世界にはじけて
夜の来るのが遅くなる
唇、奪われている時
心、奪っている時
君はミューズ
キスがほどけて
日が落ちて
世界が恋におちる
めまぐるしい一日
めまぐるしい1日、
昼間のことがもう遠い思い出のように感じられ、どこかしっくりと受け取れる場所を探して歩くも、そこにはまた別の物語が用意されている。ないがしろにしたくはないけれどたぶん明日には忘れてしまう。停止、迂回、フィリピン、どんぐり、ボタン、契約、死、予定、建築、地球、偽り
2013年2月1日金曜日
罪の神話
曇りだした水晶の内部に
離れ続ける君が鮮明に浮かぶ
潜んだ私を私は殺さねばならない
美しさに触れて神話のように罪を重ねる
残骸
この冬の寒さを乗り越えられなかったものたちが
見つけてくれと主張しはじめ、私は灯りをかざして這いつくばった。
うるささはあるべきヒズミの中に放り込まれた後もまとわり付き
汚れた雨音の中に身を置くことでしか拭うことは出来なかった
それは、その断片を私自身も抱えていることを知ったから
2013年1月31日木曜日
彼岸
そして言葉自体がこうして偽りだす
どこに中心があるのかなど
誰にもわかりはしない
思うに任せて形成されるそれらの断片が
ただ風のようにあるいは波のように
押し寄せている
私たちにわかるのはその鱗粉
その羽ばたきの速度を知る由もない
誰しもがたずさえている秘密は
暴かれる以前に現れている
その接点を誰もがたたずみ
見つけようとしている
この空に
2013年1月30日水曜日
私の世界
目覚めるたび私はこの世界と恋に落ちる
眠りにつくたび私はこの世界の面影に抱かれる
やがてこの世界は私となり
やがて私はこの世界となる
2013年1月29日火曜日
幸不幸
最大の幸せは最大の不幸と似た姿で訪れる
最大の不幸は最大の幸せを装って訪れる
路地の月
路地の夜空に満ちた月
家路を歩く君の足元の道標
路地の月
路地の先の満ちる月
家路いそぐ君の足元にしずく注ぐ
新しい投稿
前の投稿
ホーム
登録:
投稿 (Atom)
poem on chair
僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair
(タイトルなし)
ここが永遠だとして 君は誰 ここが天国だとして 僕は誰 光が愛を導いて 地上に現れている ここへ辿り着いたことへの悦び 僕は再び君といた
谷川さんへ
あなたの魂が ちりぢりにみんなの心へ注いで輝いています 空や 人 電車や ヨハンストラウスと 結びついて輝いています それは生きているということ 紙の上に スマホの中に あなたの魂が 詩として輝いています ぼくたちはからだの 存在をたよりに わかろうとしていますが あなたの魂の注...