2022年10月23日日曜日

恋人の忘れた上着と暮らしていた



 入れたばかりのコーヒーに忘れた夢が浮かぶ

朝陽が頬を撫でて挨拶を交わす

初めて火を使うことで友達ができた

可愛らしいお尻が森に消えていく

笑いながら大縄跳びをして抱きあげた

見上げた夜空には大宮に向かうロケットがそびえたつ

銀杏の匂いが夜の公園に漂う

私は私に出会っただろうか

歩道橋の上から記録を一枚投げ捨てて

懐かしい名前を読んだ


22・10・22



2022年10月19日水曜日

 


春嵐

 窓が曇り出したのはぼんやりとして火にかけ続けたやかんのせいかと思ったが

押し付けがましく広がる雲から降る雨が春の嵐に叩きつけられていたから

階下に降りてみると案外雨足は弱く構えて軽装で防水靴をはいている自分を笑った

数刻前までは家を出たくはなかったなぜこの嵐の中を行かねばならぬのかと思った

バイト先は自粛のために私が行かなくてもなんとでもなる本当にいかくてはならない場所では

ない。しかして私が本当に行かねばならぬ場所はどこなのだろうか

仕事の終わったあと真っ直ぐに家に帰らず電車を乗り換えて飲み屋街に出かけた

間違えて違う駅で降りた、二駅手前だった。

それから目的地までそんなにかからないだろうと歩いた。

私に必要なことはここにあるのだろうかと

私が求めるものがこの歩く先にあるのだろうかと

職場の同僚の誕生日だったことを思い出して、

このみちの先に何か文具屋のあったのを思い出した

そこへ向かおう

持ち歩いていたフィルムがないのを思い出した

電気屋がこの先にあったはずだ

買えるかもしれない

それが私に必要なものなのか

記録を残したいのか

映画を作りたいのか

未来が教えてくれる

足跡を私は辿る

目覚めると絶望する
無数の機材が並ぶ地下室の夢で
作業者たちは硬質なエネルギーを作り出している
よそ者のの私は観測していた
夜が明けるというのに
消毒された浴槽の中で
閉ざした心を探していた


頼まれて車で府中へ人を送った帰り夜空に明るい月が出ていた。
私はそのままナビの案内する自宅の方へは行かずそのまま道が続く限りまっすぐに進んだ。
道はどこまでも繋がっていて道沿いには誰かが住み、暮らしている建物がある
何かがあって何かがあるその痕跡の中を私は走り続けた
時間に追いつけないまま
それでも季節を捕まえようとした
焦げ臭い身体


美しさは関係しています


並んで歩く鳩3羽
雨上がりの道に銀杏の葉
卵とタバコを買っての帰り
遡る記憶に12月の約束
ほつれた宇宙が
今朝も開いていく

22・10・19

2022年8月12日金曜日

赤い月が水面に揺れて影が伸びる

深く沈んだ漁船がキラキラと波音を散らして戻ってくる

トビウオの整列と並行した円錐形の

灯台の灯りの中でその詩は書かれた


2022年7月11日月曜日

のみもの

 私

飲み物が

お酒がおいしいと

幸せなの

 朝 青空があった

あなたは今日も

すべてのつまった荷を背負い

地球を感じながら

歩いているのでしょう


異国の照りつける日差し

噴き出た汗

そんなあなたを青空の中に見つけ


ぐんと

力が湧いた

2022年6月17日金曜日

 やがて無に帰るために

ある物たちに

巡り合った物たちに感謝と別れ

私は始まり

記して

詩となる


To eventually return to nothingness

To some things

Thank you and farewell to all the things we have encountered

I am the beginning

to write

I become a poem


2022年3月25日金曜日

今日も誕生日の人いるね

おめでとう

今日も大切な人が離れていくね

お互いの中で死んでいくね

さようならだね

2022年1月20日木曜日

 toshigaakete sannkagetukurai tattakigasuru oshiyoseru shigototokanshimito aseritoikarito tukiwomite shibashi tabinideru

2022年1月19日水曜日

雪の日に転倒して肋骨を折った
レントゲンを撮ると
(放射能を少し浴びて)
私の骨が写った
肉に覆われている私の骨
私は人間という構造を持つ一つの個体で
白く浮き上がった
一つの構造
そう私は一つの構造に過ぎない

2022年1月18日火曜日

2022年1月15日土曜日

 毎日、日はあけていく

代り映えのしないように思える心

身体のいたみがまして

心には虚無が広がる

標をうしなった生が

一体どこへたどりつくというのか

ひとつの言葉をこうしてはきだすことで

思い出しているのだ

私の未来を



2022年1月4日火曜日

2022年1月2日日曜日

そのイメージがあなたの中に溢れる時

唇は引き締まり端々を

何度も点検する熟練の技術者のように思える

いままで明るく軽く風になびく髪が

黒艶となり全くの別人のようにすら思える

それでもあなたはやはりあなた

イメージが去れば私の知るあなたに戻る


 飾られた君の描いた絵に日々色の差す林檎

2022年1月1日土曜日

 遠い過去からの音を消して

今、私と共に流れる時間の音を聴く

乱反射する振動の果てに

また明滅が繰り返される

2021年12月9日木曜日

 周回軌道の外側に

一羽のカナリアが

色彩の川を越えていく

ゆらめきながら

離れていく命の灯を彼らは今日も見つける

優しいコルネットの音を

思い出しながら

僕は君の手に触れた


2021年9月8日水曜日

部屋の窓から

 今日も列車がいく

座るひと、立つひと、眠るひと、景色眺めるひと

ゆられて

帰るひと、行くひと、過ごすひと、どこに行くか分からないひと

どうやって動いている?

誰が作った?

どうしてあるの?

喜ぶひとはいる?

幸せになったひとはいる?

かなしみもある?

音が聞こえる

声の聞こえる

時のあること

ただあること

2021年9月1日水曜日

街の音が聞こえて目が覚める
こうして朝を迎えること
日々世界と出会っていくこと 
それは手向けであり応答 
生者の祝いの声に 
温もりを覚えた

2021年8月28日土曜日

へたくそ

 へたくそ

生きるのから

料理から

芝居から

写真から

全部へたくそ

何かの



2021年8月20日金曜日

哀しみは夏に押し寄せて
蝉はもがいて地に溶ける
思い出を手繰り寄せ
揺れるカーテンの向こうを
カラスが通り過ぎて鳴く
明るすぎる空ばかりが
ただ変わらず悲劇の終わりを見届ける

2021年8月6日金曜日

バッテリー

 満タン

切れました

充電

満タン

切れました

充電

満タン

満タン

満タン・・・

切れました

充電

充電

充電・・・あれ

2021年7月29日木曜日

 どれだけの風が吹いて許されるのか

どれだけ遠くの街で忘れることができるのか

私は私を


愛という言葉とそのあわいのこと

君は知っている?

私は君と

私は君と


あぁ、どこか永遠の光の集まるところで

触れ合えたなら

肌と

目と

存在と

2021年7月28日水曜日

差しかかった夕暮れの街に

明日の香りがふきこんでくる

壊れかけの自転車を押して坂を上がる

峠の広場から放り投げた昨日を

空が受け止めた

2020,11.15

2021年6月29日火曜日

混沌

雨が降り通り過ぎる車がしぶきを上げている

地上10階の私の部屋にその音が響く

昼間そういえば道ゆく人の笑い声が

聞こえてくる時がある

高いところの方が音がよく聞こえるという


ここよりさらに高いところでは

ささやきのひとつも聞こえてくるのだろうか


私の心の声をとても高いところで

誰かが聞いていたりするのだろうか


ああ、この混沌とした私の声を

ああ、この混沌とした私の振る舞いを



2021年5月6日木曜日

それは失われた

通り過ぎた詩は

夜の街に満ちて

ネットに掠め取られて

断片だけがまたこうして現れて

ひたすらにつづりながら

訪ねてきた詩を探すのだ

また巡ることを私は知っている

記せるときに記すのだ

36の愛しき風景の中に

君を閉じ込めて永遠にする

流れてゆく時を止めることは

許されたポエジー

2021年4月20日火曜日

白詰草

こうしてまた光の速度で

溶け出してしまった私は

あなたの暮らす街から離れていく

朝陽が訪れるたびに

夢の香りから昨日の意味を知って

美しかったあなたが明日にもいるのかもしれないと

追いかけている

白詰草に包まれながら

どこまでここで漂う


2021年4月5日月曜日

炊かれた日々のほとりから

かじかんだ麒麟の群れが水平線を目指す


​打ち付けられた十字架の残響が

緑の丘を低く飛ぶ


​組み上げられた木材が

正方形の海に沈む


​密林の岩岩に夜光虫が、蛾が

息を潜めて訪れを待つ


​パプリカ


​鳥かごの重さを抱えながら

雨粒の軌跡をたどっていく


今朝、馬車は教会へ着いた

2021年3月22日月曜日

その光は少し前のこと

住み慣れた部屋へ

新しい傘が赤い傘がきて

そして雨が降った

日々の物語が流れ出して

羽が浮かぶ

その跡をたどって僕らは森の中へ

ざわめく木々が覆い被さる

泉へ抜けることを

知ってるフクロウがなく




2021年3月12日金曜日

 光速音速を超えて離されていく

光速音速を超えて近づいていく

記憶は失われ新しい記憶が入り込んでくる

終わりは始まり始まりは終わり

それでも留めようと留まろうと作り上げていく

静かな叫びは残り続ける

静かな光は輝き続ける

朽ちていく私の肉体に反して激しく震える魂が走り出す


2021年3月6日土曜日

アイラインを引いて誰かになる

知らない服を着て誰かになる

同じ動きを繰り返して誰かになる

息を潜めて暗闇に光の差すのを待つ

見慣れたはずの場所が遠い街の蜃気楼

彼らは別の誰かとして語りくる

ほんのわずかの時間、私は嘘になる

ほんのわずかの時間、私は誰かの真実になる

 夕暮れのもたれかかる/日に数本の路線バス/地方都市の湖畔沿いをゆく/春を待つ並木の枝が空に乞う/目的の停留所より少し前で下車する/名も知らぬ人々とすれ違う/もう会うことのない人々とすれ違う/私もまた彼らの景色//

poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair