2015年9月11日金曜日

夏休み

日に3度はあなたを思い出していました
あなたの本
あなたの物
あなたの寝たベッド
あなたのにおい
あなたの部屋

私はあなたの気配に触れながら
私はあなたを抱いた

いつかあなたの肌に触れて
なつかしくこの夏の景色を
思い出したい

あなたの滴の流れるところへ
口づけて 生きることを
深く知りたい

どこならばどこまでも

どこまでいけるかではなく/どこまでいられるか/きみ(私)はどこならば/どこまでもいられますか

パープル

おとといの明け方
牛丼屋で笑っていた女の子
絵がほんとにうまい子だったよ
まんまるのメガネかけて
大きな口をくわっとあけて
笑うんだよ
あふれだしそなイマジンかかえて
天国いったって

遊園地行きたいって
はしゃいでた女の子
ジェットコースターみたいに
走り回ってた女の子
愛を伝えていくべきなんだって
HUGしたな



あふれだした愛をかかえて
天国いったってよ

どこへいくんだよ
この世界にはまだ
色がたりねえぞ
パープルが
パープルが足りねえぞ

2015年9月3日木曜日

ブルックリンダウンタウン

ブルックリン
ダウンタウン
生まれ故郷をあとにして
体に昨日の入れ墨いれて
店を開ける

どこの町にしようかと考えたが
どこの町でもよかった
私を誰も知らない町なら
どこの町でもよかった

服は好きだ
靴も好きだ

でもなんでもよかったんだ
やったことのないことならば
なんでもよかったんだ

それで許される町というのが
ブルックリン
ダウンタウン
どこでもよかったんだ


2015年9月2日水曜日

芝生の上で

言葉のわからない世界でも
心地よい風の吹く芝生の上で
降りそそぐ光をあびて
空をただよう雲をみつめるならば
心は穏やかになり笑顔がこぼれる

太鼓の音が響いてくれば
輪が出来て歌いだすのだ
太古からつたわる喜びの歌を
子供が立ち上がり薫りをつかんで駆け出すのだ
私らも立ち上がり踊りゆくのだ

希望と自由の旗がなびいて
鳥たちが高く舞い飛ぶ

言葉の通じない世界でも
私はここにいていいし
自分だけがわかる言葉で
同じように歌えばいいのだ

ぬくもりが私とあたりをつつんで
私が世界をみている
世界も私をみている


2015年8月29日土曜日

ブライアントパーク

無数の緑の椅子
人があふれても
絶対的
上回る緑の椅子

この椅子 誰が前に 座ったろう
この椅子 誰がこれから 座るだろう

椅子も知らない
緑も知らない
無数も知らない

無数の緑の
椅子
永遠
近くあるだけ

2015年8月24日月曜日

永遠の砂浜

カラス貝のかけらが
砂浜に散らばり
波の記憶を置いてゆく

カモメが夕暮れを待ちながら
パラソルの間をすり抜ける

ベンチの老夫婦は
犬とたわむれながら
孫のはしゃぐのをみつめている

ここは永遠のとどまる砂浜

足からこぼれる
せせらぎが
街のほうへも飛んでゆく

2015年8月22日土曜日

ポラロイド

ことばから
遠く離れて
土を拾う

砕かれた骨は
宙を舞って
春が来る

手紙が届く
知りたかったのは
愛の深さ

音楽だけが
時の過ぎるのを
教えてくれる

またあの季節に
僕らは会えるだろうか

チップス

会わなければここへ来ることはなかった
BUSの行きかう大通りと
ガソリンスタンドの交差点

西日がタバスコの瓶を通過して
影を作り
とどまるビーンズの種が
吐き出される過去を懐かしがる

夏の陽射しの中で
BEARを飲んで
とどまるのだ

ストアがありましたね
四つ角に
ここは
車通りが多いですね

追いかけているわけではないのですが
つまりは夏の陽射しがそうさせているのです

橋を渡り銀の足跡がいるわけを
すぐにはわかりはしないのです

そこに何があったかは
いるべき場所にいる

そのさきに何が
いや、もうすでにー

チップス

欲しい

夢のような日々のあとに
便りのあったのを伝えてくれた

どこにいようと
持ち続けている面影

反射する光が
太陽のあるのを教えてくれる
石畳の熱を忘れずにいる
アスファルトが白線を飛び越えてゆく

白いシーツの
あなたの香りにつつまれて
今夜も眠る

夜空にはまあるいお月様
円形劇場のハムレット
トーストに乗っけてがぶり

耳元で忘れなさいと
ささやく女優が
明日も手を差し出している

はさんだペンのように
ベルギーワッフルタワーがそびえる
ハローグッバイ

石の中にあるまぼろしを
掘り出したくて
こするのだ

椅子は5脚ある
カフェより

2015年8月19日水曜日

コニーアイランド


Heaven がどこにあるのかというと
もう佇むことのない
汐風の吹く夕暮れの中にあるのだ

家族連れが賑やかに騒ぎ
観覧車が空をかき混ぜる

何もない時間の中に
ぽっかりと僕のいた影がある

焼きあがるピザを待ちながら
景色に溶け込んでいくことで
Heavenへのカギを拾い上げるのだ

始まりの知れない信号機が
案内を開始した

黄色い風船が
どこかの街角に現れては
消えてゆく

Heaven を通り過ぎて
僕はまたピザを食べる

2015年6月30日火曜日

手のひらに円とセント

20セント
10セント
25セント
10セント
5セント
10セント
5セント
1セント
5セント
1セント
10セント
10セント
10セント
10セント
50円
10セント
10円
10セント
1セント
5円
5セント
10円
25セント
5セント
1セント
1セント
10円
10セント

ブランコ

ブランコこいでる女の子
ブランコにすわる男の子
みてる

柳がゆれて
アジサイが咲いてる

ブランコにすわる男の子
ブランコこいでとんでく女の子
みてる

2015年6月19日金曜日

Landing point


There are pictures not reflected nothing
I do not remember to be what has wanted to take

When and where did it take
Or Who took

Is only darkness question
It has been submitted

Such as the ground after thaw
Such as the pillars of the stain

Flow who can not be known

Not to prove
Just trying to exchange

Not to try to exist
Just an attempt to present

Distant town of paddy
Show window mannequins

Though I can not remember
It scatters footprints

Light of eternity
Image of the infinite

Full of landing point

2015年4月14日火曜日

鳥のように

鳥のように
空をゆけたらいいのに

君のいた場所にも
僕のゆく季節にも

はばたいて
またたいて
こまぎれのひかりをついばむ

鳥のように
自由にゆけたらいいのに

2015年3月28日土曜日

2015年3月11日23時58分


20153112358

仕事帰りの電車の中で僕はつづり始める

多くの人が死んだ日

祈りがあふれて悲しみがあふれているというのに

のんびりとお茶を飲んで電気で走る電車の中に僕はいる

僕は神でもないし万能でもないから

この悲しみをぬぐうこともできなければ

死んだ人を生き返らせることもできない

ゲームの世界ではそういう呪文を唱えればいい

人は生き返り

リセットを押せばすべてやり直すことができる

だけど現実はそうはいかない

僕はこの文字をつづりながら

そんな都合のよいことが起こりはしないかと

ばかげたことを考え始めている

そんな万能な言葉がどこかにあるかもしれないと

探し続けようとこれをつづっている

もやが僕の心を覆っている

人類というものに

これだけの争いを繰り返しながら

さらに争いを起こそうとする人類に僕は

絶望してしまうのだ

僕はまだ生きている

この絶望を乗り越える手段を探している

発言が現れるたびその無力さが示され絶望してゆく

人は別れる 人は死んでゆく 人は去ってゆく

悲しみを埋めるために無常を知るべきなのか

かかわるものに執着を持たずに生きてゆくうつつの

無常・・・忘却・・・

逆らわず天に即すこと

天が滅びを望むのなら

人はそこに従うのか・・・

このもやをどうしたらよいのだ

なにがもやをかける

よこしまな心の僕にいったい何ができるというのか

明日へ向かい

次の時へむかう未来

進んでゆく
 
手遅れな過去をひきつれて

ぼくらはわけのわからないあしたへ向かっていく

呼吸をするのもおぞましいくらいに

絶望が戯れる世界をいまぼくらは

つくろうとしている

自分と戦うことをやめた人間が

敵を作り攻撃しはじめる

BARのマスターは言った

どこかで見聞きした言葉ではなく

ぼくはぼくに問い詰めて

言葉を拾わなくてはならないのだ

僕は僕に問い詰めて

僕はなにをする

ぼくはぼくを吐き出す

僕は僕をさばく

そしてぼくはぼくを許す

ぼくは僕をいきる

 

 

2015年3月9日月曜日

羊の花

ひつじを追いかけて
青空 草原 夢の国
もくもくと立ちのぼる幻想の果てに
汚れた大地が広がり続ける

寒いなら毛をあげるから
上着をこしらえてしのぎなよ
飢えたなら上着を売って
パンをもらえばいいさ

海岸沿いの草原に潮風が吹いて
羊の毛がたんぽぽみたいに舞っていく
夢の国では
羊の毛から花が咲く

黄色い花をつんで
ひとつだけつんで
昨日と明日に
お供えするんだ

2015年2月27日金曜日

小雨が降っていたよ226

小雨が降っていたよ226
米軍基地の周りを自衛隊が哨戒していたよ
15人編成で一個小隊
何の練習かな
いつもは北高の生徒のランニングコースで
100メートルおきに何百人
何してるのかな?
ダイエットのための散歩じゃないね
野草の観察でもないね
まじまじ見てたら
隊員の数人と目があったよ
同級生のまっちゃんじゃなかった
幼馴染のともくんじゃなかった
もし
一緒に詩を書いたノモトさんとかいたら
僕は何を言っただろうな

見知らぬ隊員が小雨の中を
誰かの友人であろう
見知らぬ隊員が
小雨の中を歩ていった
命令で

僕はその目を忘れない

2015年2月26日木曜日

まだなにものでもない

まだなにものでもない
冷蔵庫の音
蛍光灯の光
台所のテーブルに投げ出された箸
夕食が行われていた
珈琲を一口
10年前に買ったパソコンの前
私は何をしてきたのか
私はこれから何をしていくのか
出会った人を愛したこともあった
誕生日を忘れたこともあった
忘れていても動いているこの体
父と母が出会ったことで私はいる
水滴があつまり
水溜りとなり
流れ出して
やがて川になり
海へと還るように
私もまたどこかへいつか還るだろう
その私がいたことを
覚えていてほしいのか
そんなことどうでもいいのか
存在が消えて残された
文字ばかりが
写真ばかりが
それらの人よりもこの世界に長くある
愛する者を詩にして
残す
それは醜いこと
終わって
過ぎ去ってしまったもの
見えない感情は
もうとうに霧散して
どこにもないのに
その器だけがあふれている
それが世界を構築して
それを足掛かりにしなければ
なにもわからない
遠い所にいる
君は誰
この器をみて
ぼくのことがわかりますか?
ぼくは君に話しかけるだけ
おなかが減ってきて
ぼくは冷蔵庫から
冷凍チャーハンをだして
電子レンジであたためて
口のなかへほおりこむ
その時歯ですりつぶした
米が
味を生んで
薫りを生んで
いる
近づけて
生む
この器を
つくりつづけて
ぼくはいったい
なにを生むのか

問いかけている
なにも
考えていない
続く言葉を
つくっているだけ
それが。。
それでいいんだ
それだけで
いいんだ
おかわりだ
つぶれて
はじめて
うめる
あるから
つぶれることが
できる
あらしめること
それだけが
あらしめられること
それが
うみつづけること

国境

僕の住む町に国境がある
2メートルほどの金網で仕切られた国境
鳥がその金網に止まって休んでは飛び立ってゆく
夕陽が金網越しに差し込んで道に影をつくる

船で旅をした時、海の上には国境はなかった
地図でみたような線は書かれていなかった
でも移動するごとに持っていたパスポートに
カラフルなスタンプがたくさん押された

言葉の通じない異国の地で
真っ黒な、白い肌の人々
カタコトでツタエアウ
ワタシハカレラニドウミエタロウ

ここでは自分と違う人を排除している
分かり合えないものは排除している
よくしった安全な幻の中に身を置いて
卵のようにつるんとする

ここは収束しようとしている
膨らみ続けた世界が
間もなく収束し出して
光の一点に戻りはじめる

閉じた光の中で
暗闇を広げて
到着を待つ
岩戸の前で裸になるのは誰か

岩畳が見える
境目から水は流れてゆける
そのたどり着いた先は海
深海に沈んだプランクトン

0と1で構成されたブランクは
トランクの中で発酵し始めて
祈りの臭気だけが
漂っている

そうしてようやく越えてゆくことが
出来るのかもしれない
存在をすてて
そうしてようやく越えてゆくことが
出来るのかもしれない




2015年2月24日火曜日

僕も混ぜてくれ
その旅路に
そうしたら
忘れられるだろう
ビロウドの
哀しみのことを

2015年2月20日金曜日

水の記憶

その日、雨が降っていました
その雨はどこからやってきたのかわかりません
僕の前で地面に落ちて混ざりました

人が通り過ぎました
その人はどこからやってきたのかわかりません
僕の前を通り過ぎて行きました

光が木々を照らしました
その光はどこからやってきたのかわかりません
僕は最近会った人々を思い出しました
その記憶がどこからやってきたのかわかりません
光と記憶はどこかへいきました

みんなどこかへいってしまいます
かなしくてシャッターを切りました

雨であった日
友人の展示を観にいきました
海みたいでした
海がみたくなって
海へいきました

地面にまざった雨は
海に
ここに
あるのかもしれません

しばらくして僕はそこを立ち去りました

願えばまたどこかで
会えることがあるのでしょうか
会えるほどに強く
願えることがありますでしょうか

たたずんでいても押し流される
いのちの環のなかで
呼吸のあったことを
愛おしく持ち続けたい

親愛なるものたちよ
さようなら
どうかお元気で

僕は元気です

2015年2月15日日曜日

別れの季節に

同じ時を過ごした人たちも
日々を越えて年を重ねて
それぞれのところへ

強く願えばまたどこかで
会えることがあるのでしょうか
会えるほどに強く誰かを
思えることがありますでしょうか

たたずんでいても押し流される
いのちの流れの中で
呼吸のあったことを
愛おしく持ち続けたい

親愛なるひとたちよ
さようなら
どうかお元気で
僕は元気です

2015年2月11日水曜日

いつかのどこかの

もう日が暮れそうだよ
もうすこし
ほら寒くなってきたし
もうすこし
なにしてるの
みとどけているの
なにを?夕陽?
終わりを
今日の?
ううん、永遠の、あるいは始まりの
ありがとうだね
そう、ありがとう
来るかな?
来るよ。
もすこし
そう、もうすこし

いいかな
いいよ
もすこし
いいよ

鐘がなるよ
うん
きっと鐘がなるよ
うん
わかるように
誰にもね
うん

もうすこし
もうすこし

もうすこし
もうすこし

ありがとう
ありがとう

ありがとう
ありがとう

2015年2月4日水曜日

昨日今日明日

昨日は昨日
今日は今日
明日は明日

昨日生きていた人は
今日死んでしまい
今日いなかった人が
明日生まれる

昨日なかったものが
今日あって
今日あったものが
明日なくなる

昨日は昨日
今日は今日
明日は明日

忘れたいこと
忘れたくないこと

大切な人たちと
ただ過ごしていたい

昨日は昨日に
今日は今日に
明日は明日に



シエスタ

春を通り過ぎる風が
昨日を遠くに運んで
明日を咲かせているね

土の匂いがして
街が見えたら
踏みしめて行くんだ

景色を抱きしめて
空を見上げている
少しの間のシエスタ

この丘の上にも
君の住む街にも
少しの間のシエスタ

2015年2月3日火曜日

マウントフィルム

過ぎ去った時間をつまんで
光にさらしてあの日の景色を眺めている
答えを知った子供のように
からだから声がして汗がにじむ

2015年2月2日月曜日

2015年1月30日金曜日

ログイン

無限の公式サイト
タグがログが
記憶を遠く離れて
沈殿してゆく

眠るわけではない
目覚め続けている
零と壱で構成された
存在が
行くでもなく
待つでもなく
あり続ける

永遠に近い時間のあとにも
そのhttpスラスラ
ハイフンが
そこへ飛ばすのだ
始まりと変わらず

終わることなく

すいたグリーン車の車窓から

すいたグリーン車の車窓から
つぶれた街が走り去ってゆく

曇り空が山を隠して海を隠して
先へ先へと逃げてゆく

目的を失ったわたしは
移動だけを望んだ

意識がもがれて
からだだけが運ばれた

レールと平行に走る電線に

鳥がたたずんで雲のはれるのを待っていた

大阪2015

白いシーツの上で泳ぐ
夕暮れの風が浜辺に風が吹く
からだについた砂をふりはらうと
キラキラと輝く

ネオンが街を眠らせない
香水の強い女が
紙袋を抱えて
点滅する信号の中に紛れた

溶け出した氷が
汗をかかせて出口をふさぐ
煙の立ち込める店内を
白黒にして水滴が映している

細やかな背中を撫でて
土地の味を憶えようとする
目を閉じながら私は
ひたすらに泳いでいる

夜があたりをつつんで
時間ばかりが唸っている

2015年1月17日土曜日

血が鉄の味がする
鉄の甲羅を持つ貝がいる
深海に

血の中にある鉄が
騒いで吸い寄せられてゆく
磁場に

血の詩や絵が
からだの鉄をざわめかせる
私は震える

血の中にある鉄が
固まりだし、吐き出さずには
いられ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぐぅ、


2014年10月31日金曜日

つかれた女

交差点で見かけた女は
会釈だけして足早に
横断歩道を渡っていった

自分の鞄の他に
靴やら服やらが入っているであろう
紙袋を抱えていた

スカートをはいていた
濃い口紅をしていた
時刻は午前零時

一度酒の席で会ったことのある女だ

誰かと関わることに
つかれた女が
会釈だけして足早に
横断歩道を渡っていった

その後ろ姿が
話しかけている気がしたのは
私もまた
つかれていた

2014年9月29日月曜日

ブラックホールが
宇宙を飲み込んでいるそうです

光があって世界を知れるのは
闇があるからです

悪意があるわけではなく
そういう性質なのです

深い闇があるからこそ
輝かしいのです

激しい喜びは
世界に穴を開けるのです

2014年9月12日金曜日

駅前広場


強い日差し
に照らされて倒れて動かない男
その横に喫煙所
男の存在がないように
喫煙所に出入りする人々

一人の青年が男を見る
しばらく立ち止まる
男を見る

そして喫煙所にいく
青年は煙草を吸う
吸い終わる
男の横を通って
男を見ることなく
立ち去る

青年は交番に立ち寄り
「広場に男の人が倒れています」
「ああ、ああしていつも休んでいるんだよ」
と警官は言った

青年は改札を抜けてどこかへ向かった
車窓から風船が飛んでゆくのが見えた
喫煙所からは煙が絶えることなく昇っている







2014年9月7日日曜日

駅前広場・道・家

*駅前広場

強い日差し
に照らされて倒れて動かない男
その横に喫煙所

男の存在がないように
喫煙所に出入りする人々

一人の青年が男を見る
しばらく立ち止まる
男を見る

そして喫煙所にいく
青年は煙草を吸う
吸い終わる


男の横を通って
男を見ることなく
立ち去る


*道

青年がゴルフ場練習場の
裏手を歩いている

一人の女が腰かけて携帯をいじっている
青年が近づく
女は顔を上げる
女は立ち上がり

青年と並んで歩いてゆく


*家

昼間居間に、一匹のゴキブリが歩いている
ゆっくりと歩いている
とても大きいゴキブリ

女が殺虫スプレーをかける
泡がとても大きいゴキブリを包む
泡がはじける

とても大きいゴキブリは動かない


女「こんな昼間に出来てたら、殺されるに決まってるのに」
男「俺、昨日もみたよ」



2014年9月1日月曜日

夏の終わり

50センチくらいだったか
触れられる距離で君が何か話している
見つめるだけで言葉や時間が通り過ぎてゆくね
君が思いを馳せるところがどんなところなのか
先回りをしてつかまえたいよ
セミとコオロギが鳴きはじめる夏の終わりに
消えてゆく君のかけら言葉抱きしめた


2014年8月27日水曜日

あなたの声を思い返すだけで
どれほど歩けたかわからない

なんてことはないのです
暗闇の道でも雨の道でも

私はあなたの声を確かに聞いた
どれほど歩いて行けるかわからない

私が絶えてしまっても
歩みが止まることはないでしょう



2014年8月22日金曜日

貨物列車

僕はどこに行きたいんだろうな
僕はどこに行くんだろうな
心をかくして行きつくところは
息も出来ない心ないとこ
大人になって嘘ばかりうまくなって
素直でいられるのはひとりでいるとき
長く生きていたけれど
悲しみが荷物になって歩いてゆくのもおっくうだ
そもそもどこに行くかもわからない
貨物列車が深夜の空を走ってゆく
その貨物列車に乗せてください
僕をその貨物列車に乗せてください


2014年8月16日土曜日

今、夏、夜
道端の木々から
街灯の中から
とどく鳴き声は
どれもいつかきいた
それとは違う

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

力尽きた蝉は
羽をばたつかせ
地を這いながらも鳴く
足を折り曲げて
そして
空を抱いていく

季節をこえては
鳴けぬ
飛べぬ

2014年8月14日木曜日

足元が揺れている
存在を揺るがすように揺れている
鳴きつづける蝉のいる夏は
無限の生殖活動への渇望
ひげを生やした権力者たちが
地球儀の上でマージャンをしている
キャンパスに描かれた風景を探して
どくろの生い茂る森をゆく
自発的に動き出した機械に動かされて
すべてが潰されて消えてゆく
砂漠のど真ん中で店を広げて
七色の宝石を売る
月の光がひしめき合うように
それらを照らしている

寝苦しい夜が続いて
夜明けの来るのを見届けて眠りにつく
明日が来ることを
うまく信じられないくらいに
世界は急激に変化して
ひとつの部屋の中に
情報が溢れすぎて息ができない

たどり着きたかった場所が
ほんとうに望んでいる場所でないことに気が付いて
子供のころ欲しかった玩具を手にした時に
欲しかったという形容詞が抜けて
どうでもいいように思え
うまく大切にできなかった

目に触れる世界が
おおよそ自分とはかけ離れたところで成り立って行き
そのメビウスの輪のから
放り出された小惑星が
輝きもせず漂っては砕けてゆく

向日葵はいつだって
太陽を向いている
近すぎてはみていることができない
遠すぎてはわかることができない
永遠はすでに抱えている

みつけようとするな!
打ち抜け!
打ち抜いた
「零」

酔え


poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair