2009年8月14日金曜日

雨上がりの朝
高枝から雫が落ちる時
蝉の四重奏が輝く蜘蛛の巣を弾き
葉が舞上がり
虫が跳ねる
太陽は大空へとゆるやかに飛び込み
森を鮮やかな緑に立ち上げる
運ばれる純錬な香りに導かれた
私の呼吸を
木々もまた歓迎するようにざわめいた
私の頬に身をゆだねた雫は
悠久の流れの中へ還っていった
私は後を追った

2009年8月9日日曜日

Un voyage

旅に出る前の高鳴りを
君は憶えているかい
恋をする前のざわめきを
君は憶えているかい
Un voyage
旅せよ恋せよ
Un voyage
退屈な日常に別れを告げて

旅の途中の興奮を
君は知っているかい
恋に落ちた幸せを
君は知っているかい
Un voyage
行くんだどこまでも
Un voyage
目を見開いて今を生きろ

旅の終わりのさみしさを
君はいつか知るだろう
恋の終わりの悲しみを
君はいつか知るだろう

それでも

Un voyage
書留めよ変化せよ
Un voyage
新しい自分を受け入れるために

Un voyage
恐れるな感じろ
Un voyage
すべてはいつでも君のすぐそばにある

2009年8月8日土曜日

約束

夢の中であなたと出会い
新しい恋の始まりを聞いた
あなたは泣くばかりで
どうして僕から
去っていったのか言わないけれど
涙を流すたび
僕のことが
思い出になっていくのがわかる
もう会えないからと
最後に交わした約束だけは
僕と君との間で
いつまでも守られていく

2009年8月7日金曜日

100行恋詩

僕はこの街にきました
僕はだからこの街に来ました
僕はあなたに会いました
その日月がぽっかり出ていました
風が触れたので
忘れたくはなかったのです
二人歩いたその道は
いとおしい道となった
いつまでも

肌のぬくもりで目覚めた朝
ラジオから流れる南国の歌
いくあてのなかった言葉たち
始まり流れ終わり行く
やさしさだけをアスファルトに残して
張り詰めた不安を拭い去り
床に投げ出されたズボンが沈黙し
世界とは
日常とは
なんと美しいのかと打ち鳴らされる

恋を失ったわけでもありません
恋が破れたわけでもありません
恋を知ったのだと思います
滑らかな卵のような
象徴されたあなたのとのわずかな時間
ただ
永遠に近い時を待っていた
歩くあなたに
聞かせたい声と
届けたい声とがあった

新しい言葉は
心寄り添わせ
ねそべりたい
ときおり青空を眺め
行きかう人々を眺め
椅子に座り
僕らはもう少し幸せになりたい
地球上にある10のチェックポイント
すばやくまわれ
マカロニボイル

明日人を愛せるか
明日人から愛されるか
ニコチンの痺れ
定価で販売中
すり抜ける影
すり抜ける香り
すり抜けるあなた
ここに寂しさがある
春の一日
共に生きよう

今まで書いてきた恋の詩を
みな眠る
みな排泄す
この夜に
あなたに捧ぐ
不足しているのはなんだ
おまえもしてる
あのこもしてる
あれ
でも僕らはそうして生まれた

うなぎ食べた
夏の夜
幸福とはなにか
しあわせかと問う
生ぬるい友情が
夕立にあい
ずぶぬれ
いつも
笑えない時間の
バーゲンセール

吸い込んだ街の光
おはよう
大きくもなく
小さくもなく
僕らを明日へ運ぶ
ささややかな
ともし火のような
それぞれがそれぞれの
静寂より生まれる
ぬくもりの呼吸

押し寄せても平気だった
消えた言葉と
失われた言葉とを
残すことで
1999年9月4日21時48分05秒に
愛を知らぬぼくが
2009年9月4日18時15分46秒に
愛の詩を書く
やさしい稲妻が
大気を抱きしめる

地球の裏の
浜辺まで
くる必要があった
あなたを
忘れるために
あなたを
忘れてしまわないように
僕はこの街に来ました
だから僕はこの街にきました
そしてあなたに会いました

2009年8月6日木曜日

マサコ

下北へ降りることがあると
いつもマサコへ寄る
回り道して少し早く来て
ついでを装って
挨拶するみたいに

ちゃんと開いてて先客がいて
コーヒー飲んでJAZZ聴いて
スピーカーの向こうの
異国の精神(スピリット)にもみくだされて
凝り固まった心をスイングさせる

黙ってたたずむ黒髪のウエイトレスに
小銭を払って店を出る
太陽はまだてっぺんでギラギラしてて
背伸びしてそのハイハットを打ち鳴らす
I LOVE YOUなどと言いながら

2009年8月5日水曜日

2009年8月4日火曜日

黒猫

思い出がもやもやと雲のよう
どこにいったかだれとあったかなにがあったか
夢のように思いだせない
形にするにはもう少し眠りが必要で
眠りの中でもう一度会わなくては
おとといやってきた黒猫のように

2009年8月3日月曜日

くちぐせ

いっしょにいたから
くちぐせにてきた
そのうち
僕が君で
君が僕になるかもしれない

そんなとき

会いたくないときも
話したくないときもありません

あなたがいなくなるんじゃないかと
怖くなるときがあるだけで

そんなときはたぶん少し
よそよそしい

霧かかる道

霧けむる道
佇んでは濃くなるばかり
足元にわずかな地
信じることができるなら
踏み出すことで
切り拓ける視界がある

2009年7月30日木曜日

2009年7月29日水曜日

入道雲

心にもくもくと
入道雲が入り込み
風吹けば
傘を差すまもなく
夕立が降る

2009年7月27日月曜日

しあわせ

しあわせというだけでは足りなくて
君に伝えることが難しい
うれしい たのしい はずかしい
いくつ重ねても
こころの中が伝わらない
しあわせだよ
しあわせだよと
問いかけ言葉にするたびに
なぜか少しかなしくなる

すれ違い

愛してるというと
ありがとうと君は言う
私もよと言って欲しかった

思い出横丁

雨降る思い出横丁
二人の間に傘ひとつ
抱えた愛には
守られることなく
闇がしみる

2009年7月24日金曜日

ねずみ

半分とっておいた
ポテトチップを食べられた
まあるい穴が袋にあいてて
うんちがひとつしてあった

2009年7月23日木曜日

日食

日が食われ、闇
僕らは信じる事のなかで
しばし恐怖を楽しむ

2009年7月20日月曜日

天川

歴史深いとはなんと浅はか
人の尺度

大杉を蟻がよじ登り
山々へ木々がはえる
地へ山々がそびえ
地が宙へ浮かぶ

我の足へ蟻が這い
河のほとりにて天をおもう

2009年7月16日木曜日

君に触れるのは罪か
君を想うことは罪か
何も語らず君に触れたい

ブロディガン

詩がブロディガンに似てるという
ピストルで頭撃ちぬくまで
あとどれくらいだろう

2009年7月15日水曜日

2009年7月10日金曜日

今もどこかで旅する人は
好奇心と驚きをもって
世界を歩き続ける

彼らが歩くのは
生まれた土地から
遠く遠く離れたところ

彼らが眠るのは
大切な人から
遠く遠く離れたところ

日が暮れて眠りにつくとき
彼らは喜びと悲しみの混ざった
美しい涙を流す

ああ、あああ、そうか

彼らの目指したところ
それは始まりではあるけれど
終わりでもある場所

今帰り路
もうすぐ帰る

そこはどこより暖かく
どんなとこよりすばらしい

待っててくれるかい
そこにいてくれるかい

今帰り路
もうすぐ帰る
僕の愛すべき人のいる
君のいるところへ

ああ、あああ、そうか

2009年7月9日木曜日

うん
うなずいた

うしろを向いた
うつくしい

うごかないで
うつるまで

うまれてきた恋が

2009年7月5日日曜日

どうして出会ったのか?
どうして友達になったのか?
運命だとか宿命だとか
どうでもいいし、知ったとこでどうでもない
心開いて話せるあなたと
こうしていられればそれでいい
それだけで生きていることに
よろこびとしあわせがあふれる

2009年7月1日水曜日

着こなし

ごまかしや
ねたみや
嫉妬が
あふれてしまって
とても醜い自分があらわになり
かなしくなる

邪な感情や
自分かわいさの同情心や
安心したい優越感
あふれてしまって
とても醜い自分があわらになり
かなしくなる

口にのぼる嘘や虚栄
きれいごとを並べて
他人の顔色うかがって
不幸な人を見つけては
憐れみをやさしさとして
おしゃれに着こなす

とても醜い自分があわらにならないように
おどおどと鏡をさけて
おしゃれに着こなす

2009年6月28日日曜日

リング

見知らぬ町へやってきて
見知らぬルールを踏み外し
手首に銀のリングをはめられて
再び見知らぬところへ連れられてゆく
さよならもいわず
僕はただ友のことを思った

2009年6月26日金曜日

三行詩

旅路恋路
ふみ出さねば
始まらぬ



地下鉄を
素敵なお尻が
泳いで行く



欲しいものが
わかっていたら
人生はもう少し簡単

2009年6月19日金曜日

落葉

我らの吸い込む酸素を吐き出した葉っぱらは 
風が吹いて地に落ちた 
大地に落ちればひそやかな虫らの餌となり 
新たに生まれる若葉の床となる 
しかし我ら人間が地球をコンクリートで塗りつめて 
落ち葉をゴミにしてしまう 
クリーンな世界とは命育たぬ世界 
クリーンな世界とは命めぐらぬ世界 
落ち葉を大地へ戻せ 
骨を海へ返せ 
命を空へ放て 
さもなくばいつしか風が吹き 
我らは命の輪より吐き出され 
孤独の砂漠へ迷い込む

2009年6月14日日曜日

君の来る日

君の来る日を待ちながら
小さい店の看板を出す
いつか行くよと君が言ったから
眠くても雨でも店を開ける

あと
5分………10分……半日…1日、1年・10年ずっとずっと!
でもやっぱり君は来ない

いつかした約束が
いつしか果たされる
僕はそんな日を待っているけど
僕はそんな日が来なくていいと思ってる

新しい約束を交わすには
僕らは大人になりすぎて
新しい約束を守るには
僕らは離れすぎてしまったから

明日は予告なしに訪れて
昨日はさよならなしにくくられて行く

2009年6月10日水曜日

逃走

食べるのでなく
眺めるために
世界の果てまで出かけていって
ガラスの家に放り込まれた生き物たち

張本人の人類は
地球は狭いからというけれど
ほんとは生きる延びるために
宇宙へと逃げ込む

餌を与え自由を奪った
生き物たちの反乱を恐れて

自由を与えて永遠を奪った神が
本の中へ逃げ込んだように

2009年5月31日日曜日

ひんやりとした土こねて
焼き上げた器に
ほかほかのご飯よそって
昆布と梅干そえて
カチカチとお箸あてて
魚と一緒に
おなかにいれる

豆腐ののんびり浸かった味噌汁飲んで
カリカリとたくあんかんで
ごはんが終わる
流しで洗って
棚におくと

器はひんやりとして
土にかえった

2009年5月27日水曜日

刃物

僕を殺すのに刃物はいらない
あなたの冷たい態度で充分です

ドッカン日和

大雨降って雷光る日
ドッカンドッカン
空が叫ぶ日には
お酒飲んで陽気に歌おう

そんな今日は
ドッカン日和
みんな歌って
ドッカン日和

みんな飲んで
ドッカン日和
みんな笑って
ドッカン日和

2009年5月23日土曜日

道は足元より伸びてゆく
踏み出した道が正しいのか過ちなのかはわからない
ただ自分で選んだ道であればそれでいい
迷うことを恐れていたずらに踏み出すことや
戻ることを恐れて進み続けた道には何も待ってはいない
自分で決めた道ならば
その先には必ず何かが待っている
行きたいと思うなら進めばいいのだ
人に笑われることを恐れて躊躇したり
孤立することを恐れてごまかした道には何も待ってはいない
未踏であろうが険しかろうが
自分のこころに沿い進むのならば必ず何かが待っている
信じなければならないのは
自らの命が発したわずかなる声と
無限に満ちるこの世界の豊かさなのだ
過去を振り返らず
今あるこの時を感謝し踏み出すのだ
あなたの道を
君の道を
そして僕は僕の道を
どこかでその道が交わる時は
この世界に抱かれながら未来を語り道草をする
再び歩き始める時もさよならはいわない
自らの道を歩む友にさよならはない
大空を伝って
大地を伝って
あなたの道を
君の道を
そして僕は僕の道を
命で踏みしめる足音が聞こえるから
静かにこころ澄ませば

2009年5月21日木曜日

てんとうむし

てんとうむしが
てんじょうに張り付いて
おてんと様みたいに
僕らを見ていた
初夏の夜

2009年5月20日水曜日

無力

風が吹いています ここには
光が注いでいます ここには
音がします ここには

明るいところは暖かく
大きな木の下は涼しい
人のいるところは安らぎがあり
空のあるところは穏やかで

黄色い花も赤い実も
みんなそれを知っているけど
人だけがそれを忘れて
愛という名で
やさしさという名で
正しさという名で命を奪う

僕の詩にもう少し力があれば君は
死ぬことはなかったかも知れない

せめて名前をつけるよ
『風』と
この星では風が吹いていて
そのたびに君を思い出すために
風のとても強い日に死んだ君のために

風が吹いて『し』が生まれて・・・
ああ、しかし、いくら積み重ねても僕のは
レクイエムにもなりはしない

2009年5月10日日曜日

無題

世界中のすべてを敵に回してもなんて言葉を
平気で言える時は世界を敵に回すつもりなんて全然ない
今の生活の安心が少しでもぐらつくようなら
いくらでも頭を下げてうすら笑いをして黙り込む
そうやって時間の流れに押し流されてはててゆく
ああ、なんとはかなくむなしいのか
逆らうことはむずかしいけれど
せめていい流れのほうへ
清く緩やかないい流れのほうへ向かえるよう
手を強く水面へさす

2009年5月8日金曜日

愛の言葉

時にはひそやかに伝えられる
愛の言葉があってもいい

しんとした夜に
なにも考えていないとき
心にぽっかりと浮かんでくる
ひそやかな愛の言葉があってもいい

街も人も寝静まったときに
いっそう膨らんでいく
愛の言葉があってもいい

示されることさえためらわれるような
そんなひそやかな愛の言葉があってもいい

歌唄いに捧ぐ詩

歌唄いが死んで
歌唄いの曲が
その夜はラジオでたくさん流れた

楽しい陽気な曲ばかりで
よけいに悲しくなって
やたら誰かと話したくなって
電話をかける

月のうらの宇宙人だとか
地球のうらの大統領だとか

すてきな歌唄いの歌の一節を
唄いあげると
みんななぐさめを言いながら
その一節を繰り返すのだ

死んだ本人は
自転車で土星の輪を回りながら
新しい歌を唄っている

小杉湯

ゆらゆら波打つ
湯船につかって
100まで数えて
心のしんまであっためて
働いたおっちゃん達の
背中ながめて
ほーっと息をはく
壁に描かれた
山なみ見つめて
家族とハイキングに行った
子供のころを思い出す
96・・97・・98・・99・・100!
またみんなで行こうね温泉
さて、牛乳が呼んでいる

ソッポ

ソッポ向いて
あっち向いて
こっち向いて
でもそばにいて

ソッポ向いて
いちばん気にしてる

2009年5月1日金曜日

トランペット

あなたにもらったトランペット
別れてからいくら吹いても
悲しい音色にしかならなくて
一緒に暮らした街を離れるときに
手放した

「続けられるの?」と問いただしたあなたに
「もちろん」と答えて
部屋の隅で眠るトランペットに
積もりはじめたのは
僕らの心の間から生まれた寂しさ

どこかでトランペットの悲しい音色を聞くたびに
あなたを思い出し胸にしみる

あなたにしてあげたことのすべてを
あなたにしてあげられなかったこのとすべてを
今寄り添う恋人にしてあげようとおもう

「続けられるの?」
「もうすぐパパになるんだ」

poem on chair

僕たちのいくつかの言葉について 僕たちのいつかの言葉について ここへのせる たゆたう からだの ひとつのように 椅子へ腰かける穏やかな老人のように poem on chair